企業としての社会的責任を果たそう~障害者施設への作業提供と障害者雇用のための業務改善~
- 事業所名
- ブリヂストン化成品製造株式会社
- 所在地
- 三重県名張市
- 事業内容
- ポリウレタン・フォーム製造及び販売
- 従業員数
- 469名(平成17年8月1日現在)
- うち障害者数
- 13名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 2 加工長尺/側突 内部障害 0 知的障害 11 プレセット工程 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
ブリヂストン化成品製造(株)(以下、BSKM)が名張市で操業を始めたのは1971年のことである。(株)ブリヂストンが100%出資して設立しており、ソファーやベッド、車のシート材として利用されるポリウレタン・フォームの製造を中心に事業展開をしている。現在の従業員は約470名、年商330億円の規模となっている。
(2)障害者雇用の経緯
ア 知的障害者のための工程設置
BSKMが障害者雇用に取り組むようになったのは1990年に遡る。最初は他のパート従業員と同じく自動車用シートの仕上げ加工作業のため、障害者を3名採用したのだが、作業能率が上がらなかった等の理由で上手くいかなかった、とのことであった。
その経験をベースにBSKM内での作業を再度検討した結果、障害者だけで業務を組み立てる事の出来るプレセット工程を設置することとなった。
この業務に従事している障害者は全員が知的障害を有し、適職を検討する際にも知的障害の特性を踏まえ、彼らが出来るということを前提として業務が組み立てられている。特に冶具がホッチキスであり容易に扱えること、失敗をした時に手直しがきくこと、仕事の種類が豊富であること、生産ラインの助けとなること等がその要因として挙げられていた。
イ 障害者授産施設への作業委託と作業工夫
1993年ごろから、知的障害者や精神障害者の授産施設等に資材プレセット(自動車用シート資材の事前組み立て)などの作業を委託するようになった。また、それらの障害者施設から障害者を採用し、あわせて障害者雇用の現場担当者となる障害者指導員(以下、指導員)を採用した。
指導員の話では、「この時期はほぼ毎日残業し、障害従業員の作業した製品を全て一人で検品していました」とのことであった。しかし、それでは指導員の業務が増えるばかりでなく、いつまでたっても自立した従業員に成長しないので、誰がしても同じ物づくりができる作業手順書の作成や、冶具の開発に踏み切ることとなった、とのことである。
ウ 作業内容の拡大
この取り組みが知的障害者のための職場作りとして一定の成果を挙げることになり、次のステップとして、製造ラインへの資材投入準備作業を試験的に取り込むこととなった。ここでも一定の成果を挙げることが出来たため、プレセット工程だけではなく、一般従業員がしている他の作業を障害従業員の作業に取り込み、障害従業員の職域がさらに拡がることとなった。
エ 障害者の増加
1994年以降には、授産施設等から実習生の受け入れやアルバイト雇用等で障害者を多く受け入れるようになり、BSKMと福祉施設とのつながりも少しずつ強くなってきている。
現在では障害従業員だけの作業環境で作業するのではなく、一般従業員と一緒にライン作業に従事する人もおり、障害従業員の職域は受け入れ当初から見るとかなり広範囲に拡大してきたということが出来る。
2. 障害者雇用の条件と定着
(1)採用の条件
BSKMで知的障害者を雇用する条件としては、次の5つが挙げられている。 療育手帳を有しており、一人で通勤することが出来て、なおかつ身辺自立が出来ていること。加えて、BSKMで働きたいという意志があり、他の障害従業員と仲良くしていくことが出来る、ということである。これに合致する障害者と面接をして職場適応訓練やトライアル雇用等の2週間の実習をし、最終決定をしているとのことであった。
このプロセスを経て入社してくる障害従業員の定着率は非常に高く、これまでに退職をしたのは病気療養のため等限られたものとなっている。
(2)職場定着と指導
定着のために、毎朝の朝礼で指導員らと障害従業員がコミュニケーションを図り、その日の顔色や口調、昼食時の食事量を観察している。問題を抱えているようであればBSKM・家庭・公共職業安定所・地域障害者職業センターとでケース会議を開き、事前に対処をするようにしてきている。
過去には車で迎えに行ったり、毎朝電話をして起こしたりと、苦労が無かった訳ではないが、子ども扱いすることをやめ、一人の社会人として接することで障害従業員に自覚が芽生えてきたことが考えられる。
また作業での安全を確保するために、指導に従わない等の問題が発生したときは帰宅させ、問題が改善されるまで作業に従事させない等の指導を徹底し、何のためになぜそのようにしなければならないのかなどの説明を障害従業員と家族に十分に行って問題の再発防止に取り組んでいる。
3. 作業は少しの工夫で全体の作業改善に
(1)作業指示票

BSKMにおける障害者雇用を進める上での作業改善としては、明確な指示票の作成が挙げられる(資料1参照)。知的障害の特性にも配慮し、写真を多く使い注目するべき箇所を○で明示するなどの工夫がされている。
(2)数量管理
数量をカウントすることが苦手な障害従業員のために、簡単に規定数をクリアすることが出来るように、単位を10までに収めていることも知的障害の特性に配慮したものと言える。この数量管理については、非常に多くの製品を扱うこともあり、それぞれの製品ごとの数量管理方法も徹底されている(資料2、3参照)。


実際に工場内を見学させていただいたが、数量管理については、決まった数を手に持ち、それを箱に入れる都度にカウンターを押し、規定回数までそれを続けるということが徹底されていた。加えて、マジックテープを貼る作業では、規定数を箱に詰めたときに必ず2つのテープが残るように計算されており、箱でのカウントと、テープを規定枚数貼り付けたかどうかのチェックを同時に出来るように工夫されている(資料4、5参照)。

KTE457であれば6つの側突パットを入れるたびに、
カウンターを一回押し、それを27回繰り返す。

(3)作業日報
BSKMの障害従業員はある程度グループ分けがなされており、そのグループごとに一日にしなければならない作業が事前に周知されている。

また一日の作業が終わった時点で個人ごとに作業日報の提出をするように徹底されている。障害従業員が自身の作業量をチェックできるとともに、指導員らはその日報(資料6参照)と実際の数量とを確認することで全体の進捗状況を把握することが出来るようになっている。
これにより、指導員らの負担を軽減するだけでなく、障害従業員に責任を持って作業に従事させることが出来ると言うメリットがある。
(4)社員の意識
一人ひとりの障害従業員が責任とプライドをもって作業に取り組んでいるためか、作業中は非常に真剣に取り組んでいた。
休憩時間には所長以下、プレセット工程を含むE/M製造第2課に関わる部長や課長、指導者等が、時間の許す限り障害従業員とともに時間を過ごし、とても和やかな雰囲気となっていた。現場責任者と障害従業員の垣根がなく、障害従業員が思ったことをそのまま伝えることが出来ているように感じることが出来た。
一般従業員との関係においても、障害従業員一人ひとりの能力が高まるにつれ、同じ職場の従業員であるという認識が持てるようになり、何か特別なことをしなくても、普段どおりに接すればよいのだと言うことを理解してもらうことが出来ている、とのことであった。それを社長はじめ、管理職などが率先して行っていることが、他の従業員の模範となっていることは想像に難くない。
(5)波及効果
このBSKMでの取り組みが波及し、ブリヂストン本社においても特例子会社を2004年に設立し、法定雇用率を上回る取り組みがなされるようになった。加えて、BSKMにおいては確実に作業手順を守ることで不良品やクレームが大幅に減少するというコストダウンにも効果が上がったことが挙げられる。
4. 地域とのつながりも大切に
BSKMでは、会社の使命として「最高の品質で社会に貢献」という「商品」「サービス」「技術」にとどまらない、あらゆる企業活動において最高の品質を追求するブリヂストン信条を掲げている。これらを追求するために企業価値を向上させ、企業としてのブランド力を向上させ、その結果(地域)社会に貢献する企業活動を掲げているのである。
このような企業の使命もあり、1993年頃から地域の障害者施設に作業を提供するようになっている。
提供先は現在4施設あり、BSKMでも行われている資材のプレセットやテープ貼り等の作業を発注することで地域で生活を営む障害者のためにも、工賃の確保や一定した作業量という面で大きく地域に貢献しているということが言える。
その他として、地域の企業間連絡会に参画し、障害者雇用に関わる企業間での情報の共有を図ることにより、障害者の雇用拡大を模索しているとのことであった。同地域では障害者雇用に積極的な事業所の数が限られており、その中で、就職に失敗する障害者も少なからずいるのが現状である。そういった障害者が少しでも安定した職業生活を営むための一つの解決策として、この企業間連絡会が福祉施設や養護学校等と有機的に連携を図ることで、今後も順次、障害者雇用の枠を拡大していくことが期待される。
福 祉 施 設 |
名張市心身障害者小規模授産施設 もみじの家 |
---|---|
社会福祉法人名張育成会 名張育成園 | |
社会福祉法人維稚幸育成会 上野ひまわり作業所 | |
社会福祉法人名張育成会 精神障害者小規模作業所レインボークラブ |
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。