事業所名

株式会社米子シンコー

所在地

鳥取県米子市

事業内容

小型モーターの製造
　隅取コイル型モーター、DCブラシレスモーター、軸流ファン、送風機、ポンプ

従業員数

85名

うち障害者数

8名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	3	ローター旋盤切削加工、生産・資材・品質管理、ローターアルミダイカスト加工
肢体不自由	3	3DCAD、組立部品揃え、ダンボール整理、ローター旋盤切削加工
内部障害	1	モーターコイル受入検査
知的障害	0
精神障害	1	部品検査

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
2. 障害者の配置と能力開発
3. 障害者の受け入れ体制と福祉作業所の開設
4. 障害者雇用の効果と今後の展望

会社

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

　鳥取県米子市の誘致企業として、昭和43年11月神光紡績株式会社米子電機工場を設立し、昭和49年1月株式会社米子シンコーとして独立。
　商品開発のベストパートナーとしてお客様の「真のご要望」を理解し、具体化できる設計能力と、多機種・中小量生産の条件下で品質と納期を保証する生産技術・生産管理能力を常に向上させるよう努力することを企業方針としている。
　この企業方針に向かって一人一人の障害者に何ができ、何ができないかを見極め、残存能力開発に焦点をあて、人材育成を行っている。

（2）障害者雇用の経緯

　職業訓練校卒業の下肢機能障害者、ハローワークから紹介の聴覚障害者などにより、昭和50年から障害者の雇用が始まった。
　採用での重視する点は「こんな仕事ができる」という障害者本人の意欲と仕事に対する適性である。

職場

職場

2. 障害者の配置と能力開発

（1）障害者の勤続年数と職場配置

（2）2級の聴覚障害者

　得意な機械のメンテナンス（修理やトラブル直し）や生産管理・資材管理・品質管理の業務で、中国（青海）の工場に1ヶ月交代で出張している。
　機械の故障防止のため、実際に機械を操作しながら教えるにあたり、中国語に翻訳した作業指示書等とジェスチャーを交えながら行うことにより、聴覚障害を克服して中国人との連携は充分に取れている。本社とはFAXや電子メールで連絡をとり会社の期待に応える意欲をもち、水を得た魚のように働いている。

（3）1級の体幹機能障害者

　この社員は、交通事故による中途障害で1級の体幹機能障害者になり、車いすを使用することとなった。
　そのため、吉備高原職業リハビリテーションセンターで機能回復訓練にはげみながら図面作成の研修を受け、職場復帰を果たした。さらに3年後、高度な3DCAD（立体図面CAD）の技術の必要にせまられ、再研修を受けた。今では高等専門学校の学生が3DCADを教わりに来るほどの実践的技術者となった。
　職場復帰の要因は、本人のポジティブな性格と、担当部署の上司・同僚の理解によるものである。
　当社としても、車いすで行動できる仕事場のスペースを広げ、段差をなくし安全面に配慮した。また、実力を発揮できる設備品を購入し、仕事場を改装した。

職場

（4）2級の聴覚・言語機能障害者

　本人の特性を見極め、入社してすぐプレス課にてダイカスト作業を担当させた。危険を伴う作業なので、基礎知識、安全知識の習得と実践を担当課長がマンツーマンで指導。また全般的に幅広い技能習得のため、担当作業以外の作業も体験させながらダイカスト作業の能力開発訓練を行った。
　今は、ローターアルミダイカスト加工13年の熟練工となった。

3. 障害者の受け入れ体制と福祉作業所の開設

（1）社内体制

　平成5年4月26日、障害者職場定着推進チームを設置。社長自ら率先して生活相談や指導を行い、協会等の事業にも積極的に参加し職場定着への努力をしている。
　また、聴覚障害者の方との関わりのなかで、手話サークルが自主的にでき、仕事が終わってから毎週1時間聴覚障害者と一緒になって手話の勉強をし、今では手話によるコミュニケーションがとれる従業員が増えた。

（2）精神障害者小規模作業所の開設

　近所の小規模作業所に、製品に付着しているゴミ掃除、研磨の軽作業等を外注していたが、車の手配や製品の運搬に手間がかかるので、事業所内に障害者が通所できる小規模作業所を新たに開設した。
　作業所の開設は、作業手順の徹底、納期の短縮、製品運搬に関わるロスの解消等のメリットがあり、障害者も従業員とのコミュニケーションが取れることによろこびを見いだしている。

精神障害者小規模作業所

4. 障害者雇用の効果と今後の展望

（1）取り組みの効果

　平成2年雇用優良事業所労働大臣表彰を受賞。
　障害に合わせた職種を準備するのではなく、少々無理ではないかと思われる職種でも障害者は努力により任された仕事を黙々とこなしている。その姿勢を見るにつけ他の従業員に刺激をあたえ、技術向上を目指し日々研鑽している。
　障害者と一緒に仕事することで、人に対する「やさしさ」について自然に学ぶことができた。例えば駅で知らない障害者が何か困ったことに遭遇している場合、今、何を支援したらよいかということが理解でき、素直に障害者の手助けができるようになっている。

（2）今後の展望

　今日、日本の景気は「踊り場」状態から抜け出し上向いてきているといわれているが、地方においてはまだまだ厳しい環境の中にある。
　今後の障害者雇用については「会社的な財源」「規模」「職場の労働者数」「費用の影響」「労働力の要素」等いろいろ勘案しながら取り組まなければならないと思料し、また事業所内の精神障害者作業所との連携もはかりながら障害者の人達と自然なかたちでの企業経営を目指している。