2005年度作成

事業所名

JFEアップル西日本株式会社　倉敷事業所
（JFEスチール株式会社の特例子会社）

所在地

岡山県倉敷市

事業内容

パソコンによる仕様書・図面等の電子化加工サービス

従業員数

14名

うち障害者数

12名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	11	パソコンオペレーター
内部障害	1	パソコンオペレーター
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 特例子会社倉敷事業所の設立
2. 「アップル」の由来と仕事
3. 在宅雇用にも挑戦
4. アップルが実る時

1. 特例子会社倉敷事業所の設立

　JFEスチール株式会社の特例子会社として、平成4年、福山市で誕生した「JFEアップル西日本株式会社」。平成16年8月には、倉敷市の西日本製鉄所内にも新しいアップルの「倉敷事業所」が設立された。
障害者6名を採用して、パソコンによる電子化を中心とした業務で、岡山県での、アップルの障害者雇用のスタートだ。
開設準備にあたった原田精一倉敷事業所課長は、当時、JFEスチールの現場事務所で働いていた。平成16年6月、上司から、障害者雇用の担当を突然命じられた。今まで障害者との交流もなく、37年間「鉄」しか相手にしたことがなく「なんで、私が・・・？」と思い悩んだが、平成16年8月1日設立予定で時間もなく、「やるしかない」と決断して、無我夢中で設立準備に奔走した。
「とにかく、開設までやることが多く、時間がなく大変でした。障害者雇用の経験がありませんでしたので、さまざまな人に相談し、応援と協力を得ました。障害者が働きやすいよう、事業所の改善改造工事、働く障害者の募集と採用、倉敷地区では、初めての事業でしたので親会社の関係部署を走り回っての説明と営業活動と・・・、とにかく忙しかったです。今から思うと、よく間に合ったなぁーと、今でも冷汗がでます。親会社や福山の本社の理解と協力はもちろんのこと、障害者雇用にあたっての岡山県障害者雇用促進協会の指導、国立吉備高原職業リハビリテーションセンター、ハローワークの協力により、優秀な人材の紹介があって、スタートできました。今ではお客さんに必要とされ、かつ喜ばれる業務を提供できるまでになったと、感謝してます」と話す。
1年を過ぎた現在、働く障害者も12名と倍増している。

2. 「アップル」の由来と仕事

（1）「アップル」の由来

　アップルの倉敷事業所は、大工業地帯の倉敷市の水島地区にある。広大な敷地面積を誇るJFEスチール（株）西日本製鉄所の正門を入ると、左手に平屋建の事務所棟が並んでいる。この一角に、車いす用スロープのついた入口があり、スロープ前には、開所式に記念に植樹した6本のりんごの木が植えられている。「アップル」と命名された会社名に因んだものだ。
「アップル」という命名の由来を原田課長から伺った。
「設立前後、営業等で走り回っていたころ、訪問先で“お宅の会社、りんご作ってるの？りんご売る会社？あぁ、コンピューター会社だ・・・”とよく聞かれましたよ。その都度アップルの由来を説明しました」。
ジョナサン・チャップマンというアメリカの開拓者が、水のかわりに荒野の道端に、りんごの種を蒔いた。りんごの種が成長して実ったりんごで、喉を潤しながら開拓していった。“友を思いやる心・社会に奉仕する心”を大切にしようという物語「ジョニー・アップル・シード」からアップルと命名されたものだ。

（2）事業内容

　朝、事務所に隣接した専用駐車場から車いすに乗りかえたアップルの社員たちが、植樹された6本のりんごの木に迎えられて出勤、9時から仕事が始まった。
仕事の多くは、JFE関連のものだ。仕様書、図面等の電子化を依頼されたものを、お客の要請に応じて、サーバー、フロッピー、CD等に入れて納品するのが主な仕事だ。
しかし、開業当初から、スムーズに仕事が進んだわけではなかった。その頃、入社したてでパソコンレベルも低く、お客からのクレームも多かった。その都度、勉強会をして、その要請に応えられるよう研修する毎日だった。こうした日々の努力が実って、現在では、お客の信頼も深まり、配管、設備レイアウト、設備呼称履歴入力、安全シート、センサー及び操業マニュアル作り、様々な情報入力と新しい仕事の依頼も増えて、忙しい毎日だ。

3. 在宅雇用にも挑戦

　「驚いたでしょう。こんな山奥まで、よう来て下さいました」と、出迎えてくれたのは、山本大助さん（39歳）のお父さんだ。
　山本大助さんの仕事場へ案内してもらった。山本さんは、パソコンに向かい、図面の入力作業に取り組んでいた。彼は、自宅で仕事をする「在宅勤務」のJFEアップル西日本倉敷事業所の社員だ。月一度、報告と打合せ、パソコンのスキルアップのために出社する以外、自宅で仕事をしている。
　山本さんは、平成14年、働いていた土木会社で転落事故にあい、介助の必要な重度の障害者となり、車いすでの生活をしている。国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでコンピューターを学んだ後、平成16年11月、アップルに入社した。
　当初、会社近くに家を借りて通勤する予定だったが、対応できる家もみつからず会社も本人も苦慮していた。こうした中で、在宅雇用のことを知り、山本さんの在宅勤務にむけての準備が進んだ。山本さんの家の改造、会社との専用電話、パソコン等が設置され、鳥取県八頭郡若桜町の自宅での「在宅勤務」が始まったのである。
　在宅勤務の感想を山本さんに聞いてみた。「自分のペースで仕事ができるのはいいが、反面、このペースでいいのか不安になることもある。電話ではわかりにくいこともあるし、顔が見えた方がいいです。テレビ電話があれば・・・言い出したらきりがないから、将来は車いす対応の住居に入れたら一人暮らしに挑戦して、同僚と一緒に仕事をしたい」と語っている。

4. アップルが実る時

　倉敷事業所では、現在パソコン業務が主流で、身体障害者を中心に雇用している。
平成18年度までに、当面4名程度の新規採用を考えているようだ。
「これからは、保護具類の検査、デザインと印刷物の作成、郵便物の配達等、新しい業務への拡大を図り、知的障害者等、他の障害者でもできるよう施策を展開していきたい。開所式で植樹したりんごの木が、大きく成長して実る時、同じように我々アップルも成長し、立派な実がなるよう頑張って行きます」との原田課長の話を聞いて、取材を終えた。

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