事業所名

山口園芸株式会社

所在地

愛媛県宇和島市

事業内容

果菜類（キュウリ・トマト・ナス等）を中心とした断根接木苗の生産・販売

従業員数

199名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	製品保管容器の洗浄、タオル等の洗浄
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	3	培土製造補助（ポット製造）、栽培管理補助（播種・備品整理整頓・苗移動）
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の状況
2. 職場配置とコミュニケーションの工夫
3. まとめ～コミュニケーションの大切さ

事業所外観

接木作業風景

1. 事業所の概要と障害者雇用の状況

（1）事業所の概要

　平成8年に農業生産法人「有限会社山口園芸」として設立。果菜類（キュウリ・トマト・ナスなど）を中心とした断根接木苗の生産を行っている。
平成16年に株式会社化。年間1,800万本と業界No1の生産量を誇り、山口園芸グループの核、苗生産のリーディングカンパニーとして日本全国へ苗を届けている。
会社は愛媛県の南西に位置し、温暖な気候など絶好の風土に恵まれ、第一農場から第三農場まで110棟以上のハウスで苗の育成に取り組んでいる。
従業員数は99名。うち障害者は4名で、聴覚障害者1名（うち重度1名）、知的障害者3名である。加えてパートタイムで身体障害者が1名働いている。

（2）障害者雇用の経緯

　養護学校から現場実習の要請があり、生徒が実習に年に何回か来ていた。
実習を受けた生徒から就職の希望があり、会社側も雇用するにあたって問題が無いと判断し、知的障害者を雇用したのが最初である。
今でも、実習の要請があればいつでも養護学校の生徒を受け入れられる体制を整えている。

（3）障害者の配置と業務内容

（聴覚障害者）洗濯済みタオルの整理作業

（知的障害者）栽培管理補助作業のプラグ（種を播く台）運搬

（知的障害者）ハウス内での培土製造補助作業

（知的障害者）プラグ（種を播く台）の整理整頓作業

2. 職場配置とコミュニケーションの工夫

（1）職場配置と賃金

　障害者に対しては、危険性の無い、反復して覚えられる仕事を任せている。また本人の判断、指導者とコミュニケーションがとれ、指導できるかなどを考慮して決めている。今後は、少しずつ難しい内容、他の部署を任せていきたいと考えている。

（2）賃金

　賃金については、入社時は同一賃金でその後は個人の能力に応じて昇給する。

（3）聴覚障害者への支援

　近距離で話すときは補聴器を付けているので十分声が聞こえる。しかし、少し離れた距離の声は聞こえないため、離れた場所で誰かが話していると、「自分のことではないか？」と悩んでしまうこともあるという。
　そのような時は誤解やすれ違いが生じないように、上司が間に立って両者の話を良く聞き、理解しあうようにしている。

（4）知的障害者への支援

　仕事がとても忙しい季節に、体調を崩してしまいなかなか治らずに休みが長くなってしまう人がいた。本人は長く休んでしまうことを気にしてしまい、退職の申し出をしたが、上司は「辞めてしまったら次の就職が難しい」と思い自宅訪問をしたり、養護学校に連絡をして先生から家に連絡してもらったりした。その結果、その人は思いとどまることができ、今ではほとんど休まずに出勤している。
　また、中には運転免許を持っており、会社まで20km程の距離を自分で車を運転して通勤している人もいる。その人には、万が一事故に遭ったときにどうすればよいか書かれているマニュアルをわたし、慌てずに対処できるようにしている。そのマニュアルは地域の相談員が作ってくれたものだ。
　障害者への支援は会社だけでは無理であるという。地域の相談員、ハローワーク、学校は、会社が協力してほしい時は「いつでもいいですので・・・」と言ってくれており、とても親身にしてくれる。特に、学校の先生は何年経っても卒業生のことを気にかけてくれている。

地域の相談員が作成したマニュアル（万が一事故に遭っても慌てないため）

（5）身体障害者への支援

　食堂、施設内の掃除と動きの多い仕事であるが、本人のペースに任せているので問題は無い。施設を作るときに最初から身障者用のトイレも作っていたので、特に配慮して行っている支援は無い。

3. まとめ～コミュニケーションの大切さ

（1）共に働く

　仲間とのコミュニケーションはうまくできている。
　「障害者という意識は無い。共に働いていく上で大切にしていることはコミュニケーション、マナー、挨拶であり、それは健常者も同じである。また、働いている本人が『見てもらっている』という意識をもてるようにしている。
　気はつかっていない。過度な気のつかい方はお互いしんどい。注意すべきことはあるが、お互いに大切にしようという気持ちがあれば・・・」と当社の担当者は言う。

（2）展望と課題

　「障害者の現場での能力は健常者と同じ、またはそれ以上であり、いつも前向きで笑顔がある。」と現場での障害者の評価は高い。現在の障害者雇用率は2.62％で法定雇用率である1.8％は達成できており、できるだけ雇用していきたいという姿勢である。しかし、経営のこともあるので、会社として障害者雇用に協力できる余力ができたらもっとパーセンテージを高めていきたいと考えている。
　課題は、障害者、特に知的障害者や精神障害者への精神的なフォローである。障害者はとても真面目である。それゆえ軽く受け流せることを重く受け止めてしまう傾向がある。健常者にとっても精神的なことは苦しく、大変であるのだから障害者にとってはなおさらである。プロのカウンセラーが近くにいるわけではないのですぐに対処できない。したがって会社、保護者、地域、学校が連携して障害者が生き生きと活躍できるように支援していきたいと考えている。

（3）事業所を見て

　現場では、笑顔で仲間たちと会話をし、働いている障害者の姿が印象的だった。また、山口園芸では仕事が忙しい時期はいつも地域の多くの人（約160名）にパートで来てもらっているそうであるが、その人たちが来た時も、驚いたり困惑したりすることなく自然にうまくコミュニケーションをとり、一緒に働いているという。
　そのように働く人たちが生き生きと働く環境ができている背景には、会社、保護者、地域、学校の協力と連携があるのだと強く感じた。そして、会社内で個人に応じた支援を行い、いつでもコミュニケーションを大切にし、お互いの思いや感じ方を大切にしていることが、障害者にとって働きやすい環境を作っているのだと思った。