障害者も健常者も共に働く~障害者雇用での苦労はない~
- 事業所名
- シンセイフードサービス株式会社
- 所在地
- 愛媛県松山市
- 事業内容
- 病院給食の受託事業、チルド・レトルト・フローズンの食材販売、病院・ホテル・コンビニに対する食品販売
- 従業員数
- 423名
- うち障害者数
- 6名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 食器洗浄、真空パック袋詰め 肢体不自由 1 真空パック袋詰め 内部障害 1 食器洗浄、施設内の清掃 知的障害 2 食器洗浄、施設内の清掃 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の状況
(1)事業所の概要
平成12年設立。病院給食の受託事業、材料販売をメインに行っている。設立当初は病院給食を主体に行っていたが、現在はそれに加え、在宅介護食・治療食の宅配業務、弁当惣菜の製造販売 、チルド・レトルト・フローズンの食材販売(病院・施設・ホテル・外食産業・コンビニ)など幅広く事業をしている。今では、病院、ホテルやコンビニに対する食品販売のメーカーとして高い信頼を得ており、21世紀を担う企業として、業界をリードするまでとなった。
高齢化社会が進行する今、ニーズに応えるため老人用、障害者用の食事として新しくソフト食(舌でつぶせる、飲み込みやすい食事)の開発に力を入れており、より多くの人に利用されるように努めている。
従業員数は423名。うち障害者は6名で、聴覚障害者2名(うち重度1名)、肢体不自由者1名、内部障害者1名(うち重度1名)、知的障害者2名である。
(2)障害者雇用の経緯
障害者雇用の最初のきっかけは、知人の紹介であった。
最初は「仕事が遅れるのでは・・・」と不安もあったが、仕事内容を見直していくうち「この仕事ならできるだろう」、「この仕事なら大丈夫であろう」ということになり、知的障害者を何人か採用するに至った。養護学校生の職場実習を受け入れて、実習終了後「ここで働きたい」という生徒もいた。結果、特に問題も無くうまくいき、経験を重ねていくうち自信を得るようになった。
その後、障害者雇用に際して抵抗はあまり無くなり、「障害者も健常者も一緒に共存していく」という考えのもとに、現在も障害者雇用を積極的に行っている。病院給食のお客さまのなかにも障害を持った方がおり、その紹介で働いている人もいる。
(3)障害者の仕事内容
障害の種類 | 仕事内容 | |
---|---|---|
Aさん | 身体障害 | 真空パックの袋詰め作業 |
Bさん | 内部障害(重度) | 食器洗浄、施設内の清掃 |
Cさん | 聴覚障害 | 病院で食器洗浄 |
Dさん | 聴覚障害(重度) | 真空パックの袋詰め作業 |
Eさん | 知的障害 | 食器洗浄、施設内の清掃 |
Fさん | 知的障害 | 食器洗浄、施設内の清掃 |


2. 雇用管理と配慮
(1) 職場配置
職場配置に関しては、仕事内容の「向き、不向き」もあるが、単純な作業を繰り返すところ、支援の必要が少ない部署に配置するようにしている。仕事を覚え、慣れれば障害者も健常者もない。業務の性格上、衛生管理基準については特に厳しく教育しているが、仕事内容の説明を丁寧に繰り返し行うことで、障害者という意識は全く無く、特別に待遇することはない。問題もほとんど無い。
(2)作業指導
作業現場には、弁当・惣菜を容器に詰める為のベルトコンベアや、おむすびを作る機械、一気にマイナス38度まで冷やせる大きいトンネル状の機械など様々な機械が並んでいる。機械の扱い方は誰でもわかるように、それぞれの機械の近くに使い方のマニュアルが丁寧かつシンプルに書かれている。このマニュアルさえ理解できれば、誰でも完璧に機械を扱えるようになっている。ベルトコンベアについても速度は緩やかであるので、現場では衛生面さえきっちり気をつけていれば何も問題ないという。
仕事内容に慣れるまでの指導としては、最初は仕事内容を一つにし、慣れれば二つ、三つと増やす。そして、間違えたことがあれば懇切・丁寧に指導すれば、しっかりと仕事ができるようになる。

コンビニなどで見るおにぎりは、このような機械で作られる。

一気に-38度まで冷やせる。長さは約10mある。

機械の操作がわかるようにしてある。
(3)賃金
賃金についても他の社員と同じであり、特別な差は無い。ただ、知的障害者の方については能力を見るために最初は試用期間を設けている。
(4)健康管理・安全管理
唯一気をつけている点は健康状態の把握である。障害を持つ人のなかには体調管理が難しい人もいる。そのため、福祉施設や学校、障害者職業センターなどと密に連絡をとるようにしている。具体的には、福祉施設から通勤している人に関しては3日に1回施設の方に連絡し、自宅から通勤している人に関しては障害者職業センターのジョブコーチにメンタル面での支援、ケアをしてもらっている。
作業中などは、怪我がないように目を届かせている。仕事内容が食品加工であるだけに、健康管理・維持には細心の注意をはらっている。
(5)社内行事
仲間とのコミュニケーションもスムーズにとれている。行事として年に数回親睦会やお花見、忘年会、泊り込みの研修などがあるが、皆参加して楽しんでいる。「仲間同士の不和が生じることもあるが、それはどの職場でも一緒のこと、全く問題は無い。本当に障害者であるという意識は全く無い。健常者、障害者ではなく人と人という意識である。」と工場長はいう。
3. まとめ~障害者も健常者もない~
(1)障害者の活躍
現場での障害者の働きに対する評価はとても高い。「非常に真面目で仕事もきっちり行う。」と皆が声をそろえて言う。健常者以上の働きをするとの声もあった。「清掃を行っている人は階段などをとても丁寧に掃除し、『すごく綺麗になっているね』などと声かけすると、さらに頑張ってくれるのですよ。」と総務課長は笑顔で言う。
勤続年数の長い人などは、とても人をまとめるのが上手く、職場のリーダー的存在であるという。
また、空き缶のプルトップで車いすを作ることができるということで、休憩室の自動販売機からプルトップを回収し障害者福祉団体に寄付をする活動を積極的に行っている人もいる。
腎臓に障害を持つ人は、会社が腎臓疾患の方のための食事をつくるにあたって、どういう味付けをしたら良いかなど具体的なアドバイスや消費者としての意見を出すことで、会社にとても役立っているという。
(2)今後の展望
障害をもった人が職場で生き生きと活躍できるように、これからの展望として、「現在は単純な繰り返しの作業に配置しているが、スキルアップのために少し難しい仕事内容も任せたいと思っている。」と工場長は語る。
最近、偶然人が足りなくなって急遽、別の仕事場所へお手伝いに行ってもらったことがあった。そしてその人が元の部署に戻ってきたときに、スキルアップしていたということがあったという。他にもこのようなことがよく見られてきたので、少し難しい仕事内容もこれからは任せていこうと考えている。
また、今後においても障害者の法定雇用率の1.8%以上を常に維持し、一人でも多くの障害者が当社において職業的自立ができるように更に努力したいと考えている。
(3)現場を見て
「障害者雇用はとても難しい」という印象が今まであったので、今回、現場や事業所の方々の「苦労は無い、問題も無い」というお話を聞いてとても驚いた。また、「障害者という意識は全く無い」ということを事業所の方は繰り返し言っていた。
実際、現場を見学してみてそれがよくわかった。現場では、障害を持っている、持っていないに関わらず全員が仕事の内容を理解しやすいように工夫がされており、社員全員が生き生きと活躍できる環境づくりがされていたからだ。また、このように障害者雇用がとてもスムーズに行われているのは、親会社から受け継いだ「障害者も健常者も一緒に共存していく」という考えがしっかりと根付いており、トップの「障害者も健常者もない」という意識が社員に浸透しているからだと強く思った。
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