障害者雇用を始めて15年
- 事業所名
- 株式会社オートヨ 土佐山田工場
- 所在地
- 高知県香美郡土佐山田町
- 事業内容
- スポーツウェアの縫製
- 従業員数
- 48名
- うち障害者数
- 6名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 1 縫製 肢体不自由 1 縫製 内部障害 0 知的障害 4 プレス、たたみ付け 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の認識
(1)沿革と事業内容

(株)オートヨが現在の事業を始めたきっかけは、昭和40年頃までさかのぼる。その当時、現在本社がある大豊町には、「仕事がなかった」という。その頃の農家の収入というと、養蚕、こんにゃく芋の出荷、こうぞみつまたの生産等によるものが主で、「現金収入を得るのが難しかった」とのことである。
そうした地域の現状を見続ける中で、「地域産業の確立に貢献していきたい」と思ったのだという。ちょうどその頃、国道32号の改良工事によって、交通の便が良くなった。これをきっかけに、昭和30年、京染め物等の仕入れ・販売を行う「小笠原京呉服店」を創業した。
そして、生産技術に磨きをかけるため、古くから足袋製造中心の繊維、縫製産業で有名な岡山県児島市(現岡山県倉敷市児島地区)に社員を3名派遣し、研修を行った後、岡山県のメーカーの下請けをしていた。
その頃、世界でも屈指の総合スポーツ品メーカーである「美津濃スポーツ」(現ミズノ)との取引が始まり、昭和43年に、「有限会社大豊縫製」を設立。ミズノの指定工場として、スポーツ服装の生産加工を行うことになった。
その後、昭和61年に株式会社大豊縫製に組織変更し、昭和63年には現在の「株式会社オートヨ」に社名を変更し、現在に至っている。現在の代表取締役は小笠原 俊一氏、資本金は3,000万円。関連事業所は以下のとおり。
・大豊工場 | :大豊町東土居 | |
・流通センター | :大豊町東土居 | |
・越知工場 | :越知町越知女川 | |
・大栃工場 | :物部村山崎 | |
・高須工場 | :大豊町高須 | |
・久寿軒工場 | :大豊町久寿軒 | |
・カッチングセンター | :土佐山田町楠目 |
事業内容は、プロ・アマ用など野球のユニフォームを中心に、アスレ(ジャージの上下)等を生産加工している。その作業には多くの人手が必要とされる。こうした事業の特色が、地域の雇用確保や地域産業の活性化につながっている。
現在、土佐山田工場の社員は48名、そのうち身体障害者2名(聴覚・言語障害者、肢体不自由者各1名ずつ)が縫製作業、知的障害者4名がプレス、たたみ付けといった作業を行っている。また、近くにあるカッチングセンター(社員22名)では、知的障害者1名が製品のカッチング作業を行っている。
(2)企業理念
会社を創業したきっかけが、「地域に雇用の場をつくること」、そして「社会貢献」「社員の生活を守る」ということもあり、「より良い製品づくりに全力投球し、和と信頼をモットーにより良い職場づくりを心がけて、地域産業の確立に貢献していく」を理念として、地域社会から必要とされる会社を目指している。
(3)障害者雇用の契機と認識
障害者雇用のきっかけは、平成元年に土佐山田工場を設立した時に、町内の養護学校の校長先生が訪ねて来て、相談を受けたことだった。
障害者の雇用については、「どんな障害を持っていても、条件さえ整えば働くことができる」という認識のもと、「健常者・障害者に関わらず、雇用条件が合えば一緒に働いてもらう」という。
企業としては、「健常者・障害者に関わらず、雇用する場合は、本人の適性を見極めた上で、仕事を行う上で何が必要なのかを考えることが重要」という。実際に、「たとえ障害を持っていても、作業を自動化すれば、健常者と変わらない仕事ができる」とのこと。
2. 施設・設備などハード面の工夫
これまで、コンピューターによる生産管理、給与、財務、また、最新鋭のコンピューターミシンや自動プレス機の導入により、「作業がやりやすいやり方で、なおかつ、いい仕事が出来るように自動化を進めてきた」という。
これにより、障害者ができない部分を技術で埋めることができ、生産性や安全性の向上にもつながっている。
また、作業の安全には細心の注意が払われており、創業以来事故らしい事故はでていない。






3. ソフト面の工夫
(1)募集・採用
現在は欠員がでたときに、大豊町の本社に申請し、募集・採用を行うという方法を取っている。採用ルートは、町内の福祉施設や養護学校からの紹介、または公共職業安定所ルートの2つである。
採用する時には、福祉施設や養護学校、または公共職業安定所と打合せを行った上で、本人と面接を行い、その後3か月間の研修期間を経て、正式採用となる。
(2)賃金
賃金は、個人の能力により、最低賃金から、かなり高い賃金まで幅広い。
(3)労働時間
勤務時間は、8:00~16:30で休憩は1時間である。夏場など、忙しい時間には、17:00ぐらいまでの残業もあり、その場合は30分の残業手当が支給される。
(4)職場配置・定着
これまで、会社の都合で1名辞めたことがあるが、それ以外の人で辞めた人はいない。
現在、定年は60歳で、65歳までの再雇用延長があるが、会社としては「全員に定年まで働いてもらいたいと思っている」という。
また、社員の配置にあたっては、面接の際に本人の適性を見極め仕事を選定して、適切な仕事を与えることが重要だという。
(5)教育・訓練
社員の指導・教育方針として、「<1>説明する、<2>やってみせる、<3>やらせてみせる、<4>結果を検査する、<5>やらせてみせる・定期的にみてみる」という5つを掲げている。
新規に社員を採用した場合は、このような方針に従って、幹部社員が慣れるまで指導・教育を行っている。
(6)福利厚生・健康管理
健康診断は、巡回車にて年1回実施している。また、昔は産業医がいたが現在はいないので、体調管理は基本的に個人に任せ、何かあればその都度本人と話し合いをしている。
福利厚生については、毎年、花見・忘年会・慰安旅行などを実施している。社員全体の参加率は80%であるが、そのうち障害者の参加率は100%で非常に高い。
(7)養護学校との連携
障害者雇用を始めたばかりの頃は、2日に1度の割合で、養護学校の先生が様子を見に来ていたが、今は本人がすっかり仕事に定着したこともあって、以前ほどは来なくなった。
しかし、これまでの行き来を通じて、学校や施設側も工場での作業内容をよく知っており、卒業生を採用する場合、学校から適切な情報が事業所へ提供されている。また、学校や施設にいる間に、プレスなどの必要な教育・訓練を受けているため、実際の仕事に慣れるのも早いという。
(8)助成金や各種支援制度の活用
「報奨金」や「重度障害者職場適応助成金」を活用している。
4. 障害者雇用の効果
平成元年に障害者雇用を始めて15年余り経った。「障害者雇用に取り組んで、結果的に良かった。今後も、従業員の1人として職業を全うしてもらいたい」という。
その理由として、障害者の人は、「意欲的に仕事に取り組んでおり、努力をするし、がんばる」からだという。また、就業態度にしても素直で、要求通りに仕事を行ってくれるそうだ。
また、職場の雰囲気としては、周囲の社員も協力的で、人間関係の問題などもまったくないという。会社としても、必要な配慮は行うが、「それは健常者や障害者の区別なく、全社員に対して行っていることだ。」という。
こうした、年齢や障害の有無で区別しない会社側の姿勢が、障害者のやる気づくりと働きやすい職場環境づくりにつながっていると思われる。
5. 今後の課題と展望
縫製業界は、発展途上国との厳しい価格競争にさらされ、加工費が年々切り下げられる厳しい状況にある。人・物・金が世界的レベルで低価格・高品質の場所へ移動しており、縫製業においても、大手メーカーはその下請を海外へ大幅にシフトしている。今後は、会社としても競争に打ち勝つための体力が必要な時期と考えられる。
また、縫製業界では、従業員の高齢化、人手不足も問題とされているが、(株)オートヨでは、熱心でやる気がある社員が企業の活性化に大きく貢献している。社員には、自分たちの作っている製品を有名なスポーツ選手が着るという「誇り」があり、これが「やる気」づくりにつながっている。会社としては、今後もこうした社員のやる気につながる職場づくりに尽力していきたいとのこと。
障害者雇用については、現在も会社の社員の1人として働いており、会社にとっても、絶対に必要な人間となっているという。今後も仕事があれば、雇用を増やしていくつもりだとのこと。
(株)オートヨの事例をみると、障害者雇用を進めるためには施設・設備など環境面での配慮ももちろん必要だが、障害者に関する知識や雇用経験がないことから、障害者雇用をためらっている事業所に障害者を試行雇用(トライアル雇用)の形で受け入れてもらうなど、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりが大切ではないかと思った。
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