事業所名

宮崎アスモ株式会社

所在地

宮崎県東諸県郡国富町

事業内容

自動車用小型モーター製造業（パワーウインドモーター、パワーシートモーター）

従業員数

210名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	3	小型モーター組み付け作業
肢体不自由	2	小型モーター組み付け作業、生産管理事務
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の状況
2. 職場配置と社内体制
3. 採用と労働条件
4. 企業イベント・福利厚生
5. まとめ～地域との共生

全景

1. 事業所の概要と障害者雇用の状況

（1）事業所の概要

　宮崎アスモは、明治から大正時代に自動織機を発明したことで有名な豊田佐吉翁の出身地、静岡県湖西市に本社を有し、自動車用小型モーターの世界的シェアを持つアスモ株式会社の九州地区の生産拠点として設立された会社である。アスモ株式会社は、国内に豊橋・広島・宮崎、国外ではアメリカ・インドネシア・中国・韓国・チェコに生産拠点を有している。
　宮崎アスモは、国富町の企業誘致事業の要請を受け1991年（平成3年）に設立、1992年（平成4年）に操業を開始しており、宮崎に根ざした物づくりと、自主自立の企業風土づくりを目指している。また“緑と太陽の国”宮崎の美しい自然を守り、豊かな郷土を子孫に引き継げるよう環境保全に積極的に取り組んでいる企業である。資本金は1億5千万円である。
　現在の敷地面積は270,000m²（約81,000坪）、建屋面積8,300m² （約2,500坪）であるが、平成17年度には同敷地内に7,600m²（2,300坪）を増築し、従業員90名程度を雇用することにしている。

（2）障害者雇用の状況と経緯

　障害者雇用については、創立時から地域に密着した企業として、雇用面でも地元を優先し地域社会に貢献する理念から採用しており、平成5年12月に地元の要請を受け1名採用したのが始まりである。その後、障害者雇用率向上を目指して順次雇用を伸ばし、現在5名、雇用率も3．61％である。
　障害の種別では、聴覚障害者が3名で一番多く、あと両下肢機能障害、脊柱側変症による体幹障害となっている。
　今回の増築に伴い、障害者の雇用を考慮していくとのことであった。障害者の能力発揮を図るためには、適性配置、教育訓練と並んで施設・設備等の改善を含む作業環境の整備も重要な要件であるが、今回の増築で作業環境が従来にまして向上することが期待される。

代表取締役　堀之内　洋　氏

2. 職場配置と社内体制

（1）職場配置

　製造部門には、生産管理課・品質保証課・製造技術課・生産課がある。
　生産管理課には肢体不自由者1名が配置され、コンピューターを駆使して本社からの製品受注、工場の生産調整を担当する重要ポストで作業している。健常者と変わらない動作で作業しており、障害者を意識しない職場環境となっている。
　生産課では、障害者4名が小型モーター組付作業に従事している。4名のうち3名は聴覚障害者で、手話指導員が1名配置されている。
　聴覚障害者を雇用した当初は、紙に書いたりしながら作業工程を指導していたが、現在は聴覚障害者が口話を習得し、毎朝行われる朝礼会などはほぼ解読しているとのことであった。ただ、口話で解りにくいときは、手話指導員が問題解決を図っている。この職場でも健常者と変わらない作業をしているので、障害者は障害を意識することなく作業効率を上げている。

（2）社内体制

　平成13年に、障害者が5名となったのをきっかけとして、障害者職業生活相談員を選任した。3人の聴覚障害者は、難聴や先天性聾唖等それぞれ障害の状態が異なるため、コミュニケーションを密にしており、また手話指導員のリードにより健聴者との間の壁はない。加えて、聴覚障害者の性格が明るいということもあり、モーター組付作業員として能力を発揮している。他の障害者についても、きめ細かな指導を行っている。
　また、管理者及び健常者は、障害者に対して細心の配慮をもって接しているので、トラブル等はなく、また、労働組合からも取り上げられたこともなく順調に作業が進められている。
　したがって、障害者を雇用して以来、現在まで離職者を出したことはない。職場の雰囲気及び職場環境が良好のためだと考えられる。

小型モーター組付作業

流れ作業の工程のため緊張の連続である

3. 採用と労働条件

（1）採用

　基本的には、公共職業安定所を経由して募集・採用を行っており、9月の障害者雇用促進月間中の「ふれあい合同選考会」と新規学校卒業者（県立工業系高校、県立養護学校及び専門学校卒業）から公共職業安定所を通じて雇用している。障害者、健常者の差別はなく通常的なペースで行われている。
　採用の条件としては、自動車用のあらゆるモーターを生産している関係上、全員運転免許取得者としており、安全運転は当然のことであるが、事故者に対する措置は厳しくしているとのことであった。
　障害者5名についても、全員普通免許取得者で自宅から通勤している。このような環境下にあるため事故防止を厳粛に受け止め安全に対する意識付けを徹底しており、そのため一般の労災事故については過去発生していないとのことである。

（2）勤務時間・賃金

　勤務時間は8:40～17:20、19:05～4:05と2交替制勤務を実施している（途中休憩あり）。
　当然のことながら労働条件・社会保険も同様に適用されている。
　採用後の賃金については、人事考課により適性評価がなされ、適材適所主義が採られている。

食堂
食事後は休憩室として活用されている

4. 企業イベント・福利厚生

　福利厚生の一環として、スポーツ大会・レクリエーション・定期健診・特殊健診などを実施している。
　この他の行事として、地域に密着し貢献する企業イメージを形にしたイベントとして「アスモフェスタ」を毎年開催しており、平成17年で11回を数える。社内イベント広場で約2,000人の参加で盛大に行われており、その中のコーナーとして、国富町内の障害者福祉施設向陽の里から花の苗、野菜、置物等が出品されたり、障害者とのふれあいの場がある。障害者と健常者が一体となり共に地域社会活動に参加し、働く喜びや生きがいを見出していくというノーマライゼーションの理念を実現しており、このように障害者をこのイベントに共同参画させる主催者側の姿勢はすばらしいものがある。

5. まとめ～地域との共生

　地域社会と共生していくことを念頭に恵まれた自然環境で宮崎アスモ株式会社は、業界日本一というプライドを有しながら躍進し続ける企業である。
　障害者の雇用については、当初は当然のことながら雇用率を確保するための雇用であったが、職場で従事する障害者自身の意欲と、健常者と変わらない作業環境にとけ込んでいる姿勢に、会社幹部の認識が変化していき雇用率の向上に繋がっていったものと理解した。
　物事を見る場合、マイナス面から捉えるのと、プラス面から捉えるのとでは、評価が異なる訳であるが、障害者を雇用する場合、ハンディを抱えているのでプラス思考で捉えていかなければ雇用に繋がらないわけである。宮崎アスモはグローバル精神を発揮されて今後も障害者雇用に貢献されていく企業であることを確信した。