Natural Styleの支援で働く意欲の湧く職場
- 事業所名
- 財団法人休暇村協会 休暇村指宿
- 所在地
- 鹿児島県指宿市
- 事業内容
- ホテル業(客室65室、砂むし温泉)
- 従業員数
- 61名(パート含む)
- うち障害者数
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 お客様予約受付事務、砂むし温泉補助作業、トイレ清掃作業 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次


1. 事業所の概要
(1) 事業所の概要

休暇村指宿は、経営母体である(財)休暇村協会東京本部を中心に、全国ネットワークで経営を展開している30事業所の一つである。(財)休暇村協会では、ホテル事業を中心に、人材派遣事業、環境省管轄施設の管理委託業務等の公的な要素の強い事業を行っている。
休暇村指宿は、霧島屋久国立公園内の風光明媚な素晴らしい環境の中に位置している。特に看板である「砂むし温泉」の補助業務とフロントでの予約係の仕事を障害者が担当し、直接お客様とのふれあいの中で活躍していることに特色を感じる。
更に、協会本部の「人に対する優しさを基本とした積極的な経営理念」があり、その主旨を従業員全員が十分に理解し、障害者や高齢者に対して常に「自然な対応」がなされている事業所である。
また、障害者を雇用する以前から、国のバリアフリー化推進に伴って(財)休暇村協会本部の指示のもと、障害者・高齢者に対してハード面の工夫・改善の取り組みがなされている。


(2)障害者雇用の経緯
障害者雇用対策基本方針の策定に伴って、休暇村協会本部でも障害者雇用について検討が進められ、新しい雇用率制度となったことを機に、障害者雇用の機運が高まった。
当事業所では、平成11年3月に地域のハローワークを通じて障害者雇用の依頼があり、はじめて、片下肢障害のAさんを事務担当として雇用するに至る。
Aさんは、前職で事務の経験もあり、ハローワークとの連携も十分であったので、雇用について何ら支障はなかった。
これをステップとして、平成14年度に車いすを使用するBさん、軽度下肢障害者のCさんの2名を雇用し、現在3名の障害者が意欲を持って懸命に頑張っている。
この背景には、雇用支援機関と企業間の密な連携と協力があったのは言うまでもなく、休暇村協会本部の「人に対する優しさを基本とした経営のあり方」により、当事業所が障害者を受け入れるベースができたのだと痛感させられた。
2. 障害者の職務内容と仕事ぶり
(1)予約係
Aさん、Bさんは、共に就職経験があり、当初から予約係としての採用であった為に、職場内での受け入れ体制には何ら支障なかった。
勤務時間は10:00~19:00である。
ハード面に関しては、すでに改善されていたのでほとんど支障がなかった。但し、Bさんに関しては車いすでの通勤のため、玄関前のスロープがやや無理があり、傾斜を緩やかにすることで解決することができた。
Bさんは、採用した最初の頃は性格的に良くない面が出たりしてお客様に注意を受けたこともあったが、その後は会社の雰囲気や従業員のナチュラルな対応があり、徐々に仕事に対する意欲や予約での対応も良くなり、現在ではお客様よりお礼の手紙が届くようになった。


(2)温泉での補助作業と清掃

Cさんは、砂むし温泉の補助作業とトイレの清掃が主な仕事である。
内容としては、入浴者の案内、温泉・浴室の清掃、洗濯(浴衣・タオル等)及び障害者や高齢者の介助を行っている。現在では入浴のお客様より指名がかかる程になった。
また、園地内の公衆トイレ(3ヶ所)の清掃では、とにかくきれい好きで、仕事が丁寧であるため、一般のお客様からも大変喜ばれている。
勤務時間は15:00~21:00である。
(3)職務の拡大

就労している3名の障害者は大変意欲的であるので、この点を考慮して現在の仕事以外にハード面の創意工夫があれば、どんな仕事でも意欲的に挑戦したい気持ちを持っている。
倉庫の扉の開閉を工夫したことで、車いすでも内部に入ることが可能になり業務の幅が広がった。
3. 障害者雇用にあたっての配慮
(1)障害の理解
障害者雇用促進協会主催の研修会に参加することで、障害者雇用への動機付けや障害者に対する理解を深める機会となった。
(2)ハード面の改善

障害者に合ったハード面での改善について、障害者雇用促進協会から指導助言を受けて、助成金を有効活用して実施した。
(3)職場定着
職場定着するまでの間、本人の意向や生活支援の面で十分に配慮した。本人への励ましは勿論のこと、相談やアフターケアにも尽力した。
職務遂行援助者や担当者を配置することはせず、従業員が自然体(Natural Style)で接することができた。その結果、事業所全体が障害者自身に障害を意識させない雰囲気があり、このことが離職することなく、長続きしている要因だと思われる。
4. 障害者雇用の効果
(1)真のお客様サービス
各雇用支援機関の方々から採用に当たって連携・協力が得られスムーズに雇用できたことで、事業所全体が障害者に対してナチュラルな対応で働きやすくなり、結果としてお客様にたいして真の心遣いができるようになった。
障害者担当の部署において、お客様への温かな対応がホテル全体のイメージアップに繋がり、利用者の増加に一役買っている。
(2)高齢者・障害者のお客様に使いやすく
ハード面での改善(正面玄関・二階へのスロープ、食堂への電動イス・車いす用トイレ等)によって他の高齢者や障害者のお客様が利用しやすくなり事業所にとってはメリットが多くなった。
(3)他の従業員への刺激

全従業員が、普通に接しているので違和感も全くなく、一生懸命頑張っている姿を見て逆に刺激を受けている。(担当課長の言葉)
5. 就職を希望している障害者へのアドバイス
働いている障害者の方々から、就職を希望している障害者へのアドバイスをいただいた。
特にBさんは、前職に在職中に中途障害者となったが、ハローワークから早い時点での心のケアやリハビリ訓練施設への紹介など、積極的な支援がなされた。そして、就労後の励ましやアフターケアまで、行き届いた配慮を得られたそうである。
・自分のことは自分でする。他の従業員に決して迷惑を掛けないという信念で働くこと。「入社当初は性格的に良くない面が出てしまい、お客様に注意を受けることもあったが、いつもナチュラルな状況で仕事ができるので、現在は本来の自分を取り戻すことができた。(Bさん)」。
・社会人として給料を貰う以上、常に甘えず与えられた仕事がきちんと出来ることが大切。「仕事が十分こなせなくなったら退職する気持ちはあるが、人間関係のまずさでは 絶対に退職しない覚悟で頑張ること。どこの職場も同じ条件であり、自分自身の努力が必要だと思うから・・・」。
6. まとめ~職場でのナチュラルな支援
(1)障害者雇用のポイント
今回の事業所の障害者雇用状況を確認する中で感じたのは、なんといっても障害者雇用のポイントは、障害者と事業所、双方の姿勢により人的課題を解決することが大切だということである。
初めての障害者雇用で「何か心配なことがあったのでは」と担当課長に問うと、「問題は何もないですよ」「障害者であることを従業員は誰も意識していないし、何の迷惑もかけていないですよ」との返事。さらに、障害者担当の職員は誰も配置しておらず、「何かあったら課長へ伝えてください」と言ってある程度とのことである。
一方、AさんとBさんからは「従業員が障害について意識しているか否かは、我々障害者が一番感じるものです・・・それを全く感じさせない雰囲気があります」との返事。
もちろん障害種別によって様々な課題が残ると思われるが、このような「Natural Style」な職場環境が働きやすい原点であり、ナチュラルな体制がベースであることが絶対条件であることを痛感させられた。
ハード面については、雇用支援機関の相互の連携と協力で可能な限り解決されると思われる。また障害者雇用のための心強いサポートシステムが各県にあり、これを十分活用することがキーポイントだと思う。
(2)今後の展望
現在、身体障害者3名(うち1名は車いすを使用)を雇用していて、法定雇用率は十分に満たされている。身体障害以外の障害者の雇用については、(財)休暇村協会本部の意向により職員が採用されるため今のところ困難とのことである。しかし、業務内容を見直すことにより、就労が可能な部署もあると思われるので、今後是非検討していただきたい。
身体障害以外の障害者を雇用することになった場合は、現在の支援体制がナチュラルなだけに、支援体制のあり方等に課題が残るのではないかと懸念される。
(3)支援機関の活用
障害者を雇用するにあたり、雇用支援機関(ハローワーク・障害者雇用促進協会・障害者職業センター等)の活用はもちろんのことであるが、その他に各県に設置されている「障害者就業・生活支援センター」の存在がある。鹿児島県では平成16年4月開設のため今回の事例には関わっていないが、現在、県に設置されている「障害者生活支援センター」とのネットワークが構築されていて、就労後のサポートが十分になされ離職が減少の傾向にある。
特別な配慮がなくても事業所での課題はある程度解決できるが、特に生活面の支援についてはかなり負担となり、雇用の継続が懸念されるケースが多いと思われる。このような観点から、各雇用支援機関の存在を知り十分に活用することにより、事業所側の雇用に関する不安が少しでもなくなり、雇用率達成の糸口になると考えられる。
(4)終わりに
取材を通じて、当社の障害者雇用への「Natural Style」な雇用姿勢への努力が強く感じられ、こうした企業経営者が数多く出ることが、これからの障害者雇用を進める上で大変重要であると強い思いを持った。今後、ハード・ソフト両面での環境が整えば、他の障害種の就労希望者が活躍できる場があるのではないかとの思いを強くした。
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