2005年度作成

事業所名

株式会社アイワード

所在地

北海道札幌市

事業内容

情報サービス及び印刷業（企画メディア事業、情報処理・システム開発事業、印刷事業）

従業員数

330名（契約社員・嘱託社員・長期アルバイト含む）

うち障害者数

25名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	22	製版、事務
肢体不自由	3
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
2. 障害者雇用の取り組み
3. 取り組みの効果
4. 今後の展望

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

　株式会社アイワードは、昭和40年に「北海道共同軽印刷」として創業、第一次オイルショックによる経営悪化を機に経営の立て直しを図り、昭和49年に「株式会社北海道共同印刷所」、昭和57年に「株式会社共同印刷」と社名変更し、平成5年に現在の社名として発足する。

　民主的な運営（開かれた経営＝情報の共有化や、性や障害による差別の禁止）、自立的・自覚的な行動を大事にし、目標と計画を大切にすることが経営方針で謳われている。

（2）障害者雇用の経緯

　昭和48年に聴覚障害者1名を雇用、その後事業拡大とともに障害者雇用も拡がる。昭和62年に「北海道社会貢献賞」として北海道知事表彰、昭和63年には「札幌市優良工場」として札幌市長表彰を受ける。平成2年に障害者雇用モデル製本工場を増築、平成3年に障害者雇用優良企業として「労働大臣賞」を受賞する。平成12年の国際障害者技能競技大会（プラハ）では、社員が銀メダルを獲得する。

　現在、25名の障害者を雇用。うち、22名が重度の聴覚障害者である。

2. 障害者雇用の取り組み

（1）障害者も健常者も共に学び共に育つ職場環境を整備

　本社の玄関を入るとすぐに、応対する方が笑顔で出迎え、心配りをいただく。この度、総務・共育部の吉田取締役部長様に長時間にわたりお話を伺った。開口一番「あたりまえのことをあたりまえにやっているだけです」との言葉。

　「障害があるからといって甘えることなく、できることはやる。」

　「『5Sとマナー』は全社員が対象。朝の清掃も役職や障害は関係なく、条件と能力がある人は誰でも行う。リスクは全社員が意識してカバーする。」

　部長さんは笑顔でやさしく話されたが、全社員が共通の認識をもつことは簡単なことではない。

　経営理念・経営方針を柱とし、「あたりまえ」という言葉が自然にでる職場環境を作り上げ、維持するため日々の取り組みを紹介したい。

 

（2）取り組みの内容

障害のある方が従事している部門

・製本部：印刷物の最終工程

・DTP部門：パソコンで印刷データを作成する

・広報宣伝部：社外報「マンスリーアイワード」の編集制作
 

1）職場のノーマライゼーションをめざした社員教育

　「社員全員が共に学び合い育ち合って社会が必要なものをみんなで力を合わせて作り出す」という社員共育（教育）理念に基づいて、障害者と健常者の区別をせず、職場レベル、全社レベルの教育研修の場を設けている。

①教養講座

　全社員対象に、自分達が直接関係する技術的なこと、専門的なこととは別に、経済、芸術、文化、政治など一般的なことについて講師を招き、時流に乗った話を聞く機会を設けている。

②部門毎の勉強会

　ミスを少なくするための技術向上をめざし、週2時間程度の勉強会を各部門で行う。

③手話サークル

　形にこだわらずコミュニケーションをとろうという気持ちがなにより大切であるが、より円滑なコミュニケーションを図るために手話サークルを発足。
 

2）情報の共有化

①全社員が日報提出

　毎日、全社員（正社員からアルバイトまで）が日報を書き提出する。

　社長がすべて目を通し、その中から社内にフィードバックしたほうがよいと思われる意見・感想を週2回から3回発行している社内報にまとめられ、全社員に配布される。

　各現場、担当者の率直な意見を載せることで、社員一人一人の意識を高め、情報の共有化に役立てている。

②手話通訳者の配置

　本社と石狩工場にそれぞれ1名手話通訳者が勤務し、朝礼や職場会議の手話通訳のほか、聴力障害者が病気や怪我をしたときに病院へ付き添うなど広く活躍している。

③サイン（ボディランゲージ）やノートテイク（筆談）の活用

　日常業務で必要な動作や作業を聴覚障害者、健聴者で共通のサイン化し、業務の円滑化を図る。サインで不十分な場合は、ノートテイクで誤解の生じないような配慮をしている。
 

3）作業環境の整備

　石狩工場の現場で指揮をとる鈴木部長さんは「特にコミュニケーションが間違いなく伝わるように配慮している。」とお話をいただく。

 

①製本無線綴機の聴覚障害者用警報器の設置。

　ブザーや機械音ではなく、赤（停止）、黄（調整中）、　青（始動）の3色の点滅で機械の状態を知らせる。

 

②2003年に導入されたコロナ無線綴機は、今まで以上に聴覚障害者が使いやすいように改良されている。

・警報器以外にパトライトを設置。何か知らせたいことや異常があった際はこのライトを点灯させる。

 

・コンピュータ制御によるパネル操作とパネル表（目視判断ができる）及び不良本の自動排出システムの搭載。
 

 

③前工程からの受け渡し時の半製品の表示の工夫。

・刷了後の半製品に、次工程の製本加工を要するものか、外注加工が必要なものか等、目視で判断できるよう、札に加工内容を表示する。

　目視で確認できるということは、健聴者にとっても間違いなく作業をすることができ、仕事の効率化にもつながる。

 

3. 取り組みの効果

（1）聴覚障害者の職域拡大

①従来の製本部門の採用に加え、職域拡大の第一歩として、1994年にDTP部門に聴力障害者を1名採用。

②DTP部門の羽田さんが全国障害者技能競技大会で金賞、国際アビリンピックで銀賞受賞。

羽田さんのインタビュー（手話通訳：長江さん）

　国際アビリンピックで銀メダルを受賞した羽田さんにお話を聞くことができた。

　羽田さんが所属するプリプレス部門は、羽田さんを含めて4人でスタートし、現在は約40名の方が働いている。マッキントッシュ導入と同時の入社で、聞こえないことを意識する暇もないくらい無我夢中で仕事をしていたと当時を振り返り、それがかえって自然に周りの人の理解を得られたのではないかと語る。

　機械を使いこなす力、感性、センスが求められる部門で、自分のもっている能力を十分発揮し、他の障害者の大きな励ましと勇気を与える存在となっている。

　一方で、情報が他の人より少ないことや電話を自分でかけることができないことが困るが、周りの理解と協力により、仕事に支障をきたすことはないようである。

　これからは、お客様から指名してもらえるような仕事をしたいと抱負を語っていただいた。

 

③若い人たちの中から職場のリーダー的役割を発揮する人が出てきた。

 

（2）職場定着率の向上

　職場での定着率が安定し、聴覚障害者の社員で10年以上勤務されている方が半数を超えた。中には一度退職して他の職場を経験したうえで、アイワードが健常者と対等に働くことができる事業所であることを実感し再雇用を熱望し職場復帰した方もいる。

勤続30年を超えるベテランさん

一人ひとりが仕事に責任を持つ

4. 今後の展望

　最後に吉田部長さんに今後の展望について伺った。

　印刷業界の急激な高度化、経済状況の厳しい時代をむかえ、今年は「第三創業期」のスタートと定め、創業期の初心に戻り、あらためて経営理念・経営方針を土台に、共に学び、共に育つ、活力ある企業づくりをめざして、全社員一丸となって邁進したいと力強い言葉を聞くことができた。

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