事業所名

財団法人盛岡身体障害者自立更生会

所在地

岩手県盛岡市

事業内容

プラスチック部品製造、ゴム靴底製造、農林業機械部品組立、ガス機器部品組立、靴組付け、時計部品検査、プラスチック食品容器製造

従業員数

88名

うち障害者数

50名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	1	生産管理
聴覚障害	7	プラスチック部品・ゴム靴底の製造、農林業機械部品の組立
肢体不自由	17	プラスチック部品・ゴム靴底の製造、農林業機械部品・ガス機器部品の組立、時計部品の検査
内部障害	2	ガス機器部品の組立、プラスチック部品の品質管理
知的障害	23	プラスチック部品・ゴム靴底の製造、農林業機械部品、ガス機器部品の組立、靴の組付け
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 障害者雇用にあたっての取り組み
4. 取り組みの効果
5. 今後の課題・展望

1. 事業所の概要

第1製造部門：時計部品検査、靴部品組立、農林業機械部品組立、アルミ部品バリ取り

第2製造部門：靴底成形、バフかけ、ガス器具部品組立

第3製造部門：プラスチック成形・検査

（現在は、主に8社の企業と取り引きしている。）

靴は月産平均4万2000足 を生産

靴底を製造するゴム成型機 （1機設置）

プラスチック成形機 （8機設置）

（2）経営方針（企業理念）

・障害者に職能を与え、仕事を通じて社会に貢献する人的資質の養成および生産性の調査研究と
　開発指導。

・品質・納期を「良心」とした従業員教育。

・先端技術修得への勇気と社会のニーズに即応する実行力。

・営利を追求せず労務経費の維持改善。

・すべての従業員は経営者である。

・障害者の雇用促進を図り、地域福祉の増進に寄与する。

（3）障害者雇用の理念

　障害があっても、残存機能と自立意欲を有する者は、就労を通じて社会参加および生きがいを創造し、社会に貢献することを理念とする。

　ここに人間の自立があることを確信し、障害者の就労が困難な現状を座して傍観せず、その時代に生きる者の知恵として、法人を設立したものである。（「設立の動機」より）

後藤勝義理事長

（4）その他

　新卒者を採用することによる生活指導や作業指導等の諸問題の是正と、障害者本人への、自立に向けた訓練指導が必要なことを痛感したことによるものであった。

　また、盛岡以外に、北上、花巻、宮古の各地域の障害者の自立支援にも取り組んでいる。

　現在は、自立更生会グループとして、法人ごとの活動を行っているが、施設での訓練後は、更生工場や一般企業へ就職をしている。

2. 障害者雇用の経緯

（1）経緯

　昭和50年、盛岡市から旧兵舎を借用改築し、更生作業所を開設。4人の重度障害者を雇用したことに始まる。昭和52年に「岩手県身体障害者更生工場」と名称変更する。

　昭和56年には（財）盛岡身体障害者自立更生会として法人化し、昭和57年に新工場で操業を開始する。昭和61年には更生工場の10周年記念事業として社会福祉法人自立更生会を設立し、障害者通所授産施設事業を開始するとともに工場を増築。平成17年にプラスチック成形部門を新工場に移転した。

（2）背景

　昭和48年に（社）盛岡身体障害者協議会事務局長の赤坂三郎が、障害者のための「職場開拓運動」を実施。しかし翌年、第1次石油ショックが発生し、経済不況になったことから運動を断念。作業所の開設へと方向を転換した。

（3）その他

　昭和53年　岩手県知事表彰を受賞。

　昭和56年　労働大臣表彰を受賞。

3. 障害者雇用にあたっての取り組み

①農林業機械の部品組立で、シュウドウシウケ（パッキン貼り）作業用に、パッキンを揃える工具を作ったところ、生産性が上がり、不良が減少した。

農林業機械部品の組立作業

パッキンを揃える工具 によって生産性が向上

②ガス器具の部品組立における「キャップ入れ」の工程で、作業を繰り返し根気強く指導。また、束ねた本数（20本）の確認を徹底した。

ガス機器部品の組立作業

③雇用の際は、3ヶ月のトライアル雇用期間を設け、適性を見ると同時に仕事の内容を理解してもらう。不採用の例としては、応募者から「自信がない」と言って辞退するケースのほうが多い。
 

④平成17年度から、研修を積んだ職業生活指導員の中から「職業コンサルタント」を設置した。これまでは部門ごとのリーダーが声がけなどをし、総務が人事を担当していたが、職業コンサルタントが第三者的立場で従業員と話し合うことで、職場環境や職能についてきめ細かくフォローできる体制をつくっている。
 

⑤「昨今は仕事が難度化してきている」と後藤理事長は述べる。従業員の平均年齢は43.1歳（平成17年12月現在）。熟練者は高齢者に多く、60歳の定年後も契約社員として継続雇用しているケースもある。
 

⑥工場建設および増設にあたり、重度身体障害者多数雇用事業所施設設置助成金を活用した。

4. 取り組みの効果

　従業員の56％が障害のある従業員であるが、作業面においては、良品・不良品の判断ができるようになり、確実性が向上された。彼らはそれぞれの持ち場で、熟練した手つきで黙々と仕事をしている。

　社会貢献度については、地域では名の知られた企業との長年の取引を通じて信頼関係を築いてきた業績があり、障害者を雇用している発注先の企業イメージも高く評価されるものであろう。
 

時計部品は厳密な検査を行う

プラスチックと金属の加工なども得意な作業

5. 今後の課題・展望

　目指すべき将来像として掲げているのは、「社会の変化に即応し、そのニーズに応えるための情報収集と技術の修得」である。「長年取り引きのある企業からの仕事を大切に維持しながら、設備の整っているプラスチック成形部門をもっと売り込んでいきたい。」さらに、「今の業務はすべて企業からの請け負いであるが、これからは当社独自の事業（製造販売）もやっていく必要がある」と後藤理事長は述べた。