1. 事業所の概要

　テレビCM「君の元気は、僕の元気さ～♪♪」でおなじみの当社は、昭和29年に日本電気硝子株式会社の西日本総代理店として、アンプル用硝子管や錠剤瓶用硝子管を販売することからスタートした。その後独自の開発により、医療・医薬・器材の各分野において数多くの特許技術や自社開発の製造設備など、その高い技術力と品質は国内外の医療現場で高い評価を受けている。
　本社は大阪市にあり、製造工場は当工場と大津工場と2か所に設置している。営業拠点は全国にネットワークを網羅しており、海外においてもヨーロッパ、アジア、南北アメリカの各地33Rの現地法人・支店を展開しネットワークを構築している。
　国内のトップシェアを誇る人工腎臓透析器は、当工場で生産されており、海外においても、NIPRO製品は人工腎臓25T％と高いシェアを占める。
　創業以来「技術」をコンセプトとし、より良いものをより安くつくることをモットーにしており、特に医療機器・医薬品分野における新製品の開発に注力し、事業活動を通して社会に貢献することを経営理念としている。

2. 障害者雇用の取り組みの経緯、背景

　当工場は、昭和56年に設立し操業を開始した。工場設立当初に聴覚障害者を1名雇用したが、障害者を意識して雇用したわけではなく職務に見合う能力を持った人の雇用を進めるなかで、社員の中に障害者が採用されていたというのが最初に雇用した経緯である。
　最初に雇用した従業員は聴覚障害者であったが、当初は意思の疎通や伝達がスムーズにいかず、ハローワークに相談し手話通訳者に業務内容や連絡事項等を伝達してもらった。短期間で仕事に慣れるに従って、筆記や口話によって何ら支障なく作業が出来るようになり、操業当初から24年になる現在では重要な部署に就いている。
　このように、最初に雇用した障害者の作業能力や勤務態度に対する当社の評価が、以後の障害者雇用へのきっかけとなった。
　また、当社の組織構成として、製品別に分かれた第一製造部から第四製造部までの4つの製造部門と、それら4部門を繋ぐ品質保証部・生産管理部・総務部の3部門がある。高度な能力や技術を要する部門から、部品選別等の軽易な作業の部門があり、幅広く障害者の能力に応じた作業環境が備わっていることも、雇用をスムーズに進めていくことができた要因の一つと考えられる。
　当工場の従業員は1,000人を越えているが、事業所全体に占める雇用障害者数においても増加を見せており、「障害者雇用」と「医療機器の開発」という両面において、社会に貢献するという経営理念のもと、着実な取り組みを見せている。

3. 取り組みの内容

　基本的な考え方として、障害者を雇用する場合は、健常者と区別する考えはなく、与えられた業務・作業ができるかどうかによって判断していることから、製品の組立・検査・梱包・選別、プラスチックの分別といった職務は、障害特性に応じたものではなく個々人の能力・適性に応じ設定することを基本としている。当初配置された業務を継続していく場合もあるが、一定期間個人の勤務状況を確認したうえで、配置の再検討を行いつつ雇用の継続を図っている。

（1）聴覚障害

　聴覚に障害のある7名の従業員については、なかには採用時に手話通訳者を同席する場合もあったが、採用後は、業務における意志疎通に関して全員問題はなく、必要に応じて筆記より十分対応できている。ただし、工場内は広く自動搬送機が往来する廊下など聴覚障害者にとっては危険な場合があるため、信号機を設置し安全面への配慮を行っている。
　また、聴覚障害者が職場定着している背景には、仕事が終わってから仲間同士でサークル活動等の余暇活動を積極的に行っていることや、当社においては、総務部長を中心とした職場定着推進チームが効果的に機能していること、さらに障害者職業生活相談員を選任し、個々人の意見や要望を聞きながら体調や問題点の把握を行い、適切に解決していることで安心して働ける環境となっていることがあげられる。

（2）肢体不自由

　肢体不自由のある7名の従業員については、上肢や下肢、体幹機能など個々に障害の種類が異なるため、その障害部位や個人の作業遂行能力に応じ、マシンオペレーター、製品の梱包・組立・選別・検査及び検査補助など複数の職種から適切に配置することにより、業務上特に問題は生じていない。
　作業環境については、当初より作業場のフラットスペース化等により対応しているため、安全面や健康面についても問題は見られない。

（3）内部障害

　腎臓機能に障害のある従業員については、定期的に透析を行う必要があるため、通常交代勤務となっているところを、通院に支障がない時間帯で勤務している。

（4）知的障害

　知的障害のある3名の従業員については、彼らを含め障害のある人の採用はすべてハローワークからの紹介を経ているが、特に彼らの場合は、毎年近くにある養護学校から受け入れている職場実習の状況を把握しているため、スムーズな受け入れができている。問題が生じた場合は、養護学校や保護者の家が近いため、迅速に連絡や相談といった対応がとれる体制となっていることが雇用継続へ繋がっている。
　なお、知的障害のある従業員が従事するプラスチック分別とは、注射器のプラスチック部分を再利用するにあたっての作業であるが、危険防止のため注射針を取り外したものを扱うよう配慮している。

注射筒の梱包作業

バッグの組立

再資源化作業

4. 今後の課題、展望等

障害のある従業員は、みな真面目であり、一生懸命仕事に取り組み、笑顔で応対する。そうした雰囲気が作り出されている背景には、総務部長はじめ彼らの生活相談を担当している総務係長や直属の上司が、日々温かい声かけや相談をきめ細かに行ってきた積み重ねによるものである。
　医療機器は、品質はもちろんのこと衛生面が非常に重視される。そのため製造や検査等の部門を行き来する場合は、常にクリーンルームを通過しなければならず、その際は着替えし洗浄消毒する工程を踏まなくてはならない。今後は、車いす利用者について、洗浄消毒行程の配慮をふまえ、従事作業の拡大を視野に入れ雇用に取り組んでいきたいとのことである。
　当工場の障害者雇用は、この地域、この社会で、共に生きるという共生（ノーマライゼーション）、誰をも排除しないという社会的包摂（ソーシャルインクルージョン）を、雇用・教育・福祉・行政・地域住民等その関係者の連携によってかたちづくられる道のように感じた次第である。

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