自然体で知的障害者雇用に臨む
- 事業所名
- 株式会社栃木デイリーイート
- 所在地
- 栃木県下都賀郡壬生町
- 事業内容
- 飲食業(産業給食等)
- 従業員数
- 65名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 2 調理補助、盛り付け補助、食器・用具洗浄、清掃、雑務 精神障害 0 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 経営方針、障害者雇用の理念
(1)経営方針
当社は、「美味しくて安く」をモットーに、全社一体、一貫して真心のこもった製品を届けることを合言葉に、常に創意と工夫を重ねている。美味しくて廉価な弁当を供給していくため、組織としては工場、配送で従業員数65名と決して多くはないが、設備の近代化を推進し、保健衛生には充分な管理を徹底した上で、「美味しい弁当」を通じて社会福祉の増進に寄与していくことに、積極的に取り組んでいる。
(2)障害者雇用の理念
当社には現在2名の知的障害者が働いているが、「障害者を雇用する」ことに対して特別な考えや理念などを持っているわけではない。ただ、ハンディキャップがある本人たちに対して、周囲の人達がそれをハンディキャップだと思うことが障害者を作り出している環境である。分け隔てなく、従業員として「できる仕事」に全力を注げる環境であれば、誰が文句を言うわけでもなく、自然と一人一人が向き合い理解し合える本来の「仕事ができる環境」になると社長は語る。
2. 障害者雇用取り組みの経緯、背景
現在当社は産業給食を中心とした業務を担っているが、障害者雇用は社名が現在の社名になる以前から取り組んでいる。先代の社長が知的障害者更生施設「社会福祉法人せせらぎ会」の現理事長と懇意にしており、障害者雇用の話を持ちかけられたのがきっかけである。それから現在まで何人もの障害者を雇用や実習で受け入れてきたが、自己都合により退職や実習が打ち切りになった例はある。理由としては、精神的な弱さや、金銭管理ができないため生活が崩れてしまい出社できなくなった人、異性とのトラブルなど、事業所としてはあまり介入することのできない部分での問題が生じたことが理由で、職務遂行上問題があって退職した人はいない。 しかし、事業所として障害者の雇用や実習受け入れの間口を狭めることはしていない。当社の取り組みというよりは考え方の問題だが、働いて生計を立てるいわゆる社会人であれば、障害者も健常者も関係なくトラブルもあればミスもあり、また職を転々とすることもある。世の中には色々な癖のある人もいるのに「障害者だから」という理由でできる事をさせない方がナンセンスだと考えている。「できないから」「分からないから」を理由に経験すべきことを経験せずに育ってきた人たちに対して、当社での雇用は現在は難しいとしても、実習を通じて就労経験の一助となってくれれば良いと当社は考えている。
3. 取り組みの具体的内容
当社が特別な取り組みをしているわけではない。ただ、障害がなくとも年をとれば、できる事できない事がはっきりとしてくるだろうし、様々な都合から労働時間の調整をすることもある。事業所又は社会のルールや規制はあるが、可能な範囲での融通をきかせることによって雇用者側と労働者側の関係は成り立っている。当社はできる仕事を可能な限り無理なくできる環境を事業所として示しているだけで、それは障害者健常者共に当然のことと社長は語る。
現在働いている2名の知的障害のある従業員に対する取り組みをあえて挙げるとすれば、一人は20代の女性で精神的に弱い部分があるほか、人間関係づくりも苦手であり、少しでも嫌なことがあったり気になることがあると、動作が止まる、他社との関わりが困難となる、自分の物を壊すといった場面が見られたが、短時間であれば問題なく仕事に集中することができ不安定になることもないので、当時利用していた知的障害者通勤寮「かえで寮」とも相談調整した上で、4時間労働の条件で雇用した。雇用にあたっては、実習段階からジョブコーチによる雇用前・雇用後の支援を利用など、本人が働く環境を整えるための制度や支援は利用した。仕事は、比較的忙しい時間帯に、洗い場を中心とした作業のほか、片付け等の雑用もこなしてもらっている。
彼女を雇用する際の取り組みについては、本人が長く就労していけるよう試行錯誤を繰り返した。助成金等の援護制度や職務に対する人的支援についてはハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターと、生活面については通勤寮と当社が共にメンタル面を含め細かなサポートに取り組んだ結果、今では当社でなくてはならない存在になっている。
![]() 洗い場
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もう一人の男性は、かれこれ28年間雇用しており気心も知れているため、特別に取り組んでいることもない。ただ、彼を配送助手として配送車に同乗させた際、ブレーキを踏んだ運転手に対し、居眠りしていたためダッシュボードに顔をぶつけた本人から「安全運転で・・・」と言われ、適切な対応が思い浮かばなかったことや、また、気持ちがイライラしコンテナに八つ当たりをしたり、反抗的な言動や態度が多くなり対応に窮した時期があったが、彼が利用しているグループホームを運営する通勤寮(「かえで寮」)に対応してもらうことで、本人も勤務を継続することができている。
このように、雇用に際して現在のように支援策が豊富ではない、専門的な知識があったわけでもない状況のなかで、様々なできごとがあった時代であったからこそ、1対1の関係づくりを職場全体で取り組むことができたと考えている。
![]() 配送
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![]() 食器乾燥殺菌室のコンテナ
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また、二人に共通して言えることは、雇用する時は通勤寮や更生施設という障害者施設を利用していたが、雇用し収入を得ることでグループホームでの自立生活を送ることができ、社会人として成長しているということである。すなわち彼らが地域の中で生活しながら仕事をすることにより当社が感じる効果は、責任感が備わり人間的にたくましくなったことという精神的な成長である。それは職務に対する態度からもうかがうことができ、彼らの仕事と生活を両立するうえでのバランスの大切さを痛感している。
繰り返しになるが、彼らの雇用について特別な取り組みや工夫を意識している訳ではなく、同じ事業所で働く従業員として、同じ職務に対して多少ムラはあるにしても他の従業員と同じ作業量を任せている。人間関係にしても、「障害者だから」と考えることが障害になっていると認識しているので、職場全体が自然体で彼らと隔てなく付き合えることさえできれば良いのではと当社は考えている。
4. 障害者雇用に向けた当社の考え方
今後、当社における障害者雇用の可能性はかなり厳しいと感じざるを得ないが、現在雇用している障害のある従業員や実習生に対しては、自然に接する受け入れ姿勢や対応、職場全体の理解は整っている。社長の「みな同じ」と考えて向き合っていく姿勢が職場全体に浸透している様子がうかがえる。「障害者」ということに構えてしまい、過剰に対応することなく、ごく自然に人間関係作りを行うことが最大の取り組みなのである。障害者雇用にあたっては、様々な専門知識が、更には専門性を持った人的支援が必要とされる場合もあるが、事業所の受け入れ姿勢や意識の持ち方一つで専門性が専門性ではなくなることもある。当社はそれを無意識に実践している。
「世間で凶悪な犯罪を犯し、会社で重大なミスを犯すのは殆どが健常者。反面、生活にしても仕事にしても細かなミスやトラブルはあっても、障害者からは努力しようとするひたむきさを感じる。」社長は語る。必ずしも全ての障害者がそうとは言えないが、どのような障害があろうと、その人の本質の部分には必ず「ひたむきさ」があることを経験から社長は信じているからこそ、障害者雇用や実習の受け入れに対して「特別」と考えることなく取り組んでいる。
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