2005年度作成

事業所名

ヒロパックス株式会社

所在地

群馬県高崎市

事業内容

段ボール容器・紙・紙加工品製造

従業員数

52名

うち障害者数

4名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	4	段ボール製造工、プラスチック成形工
精神障害	0

目次

1. 事業所概要と障害者雇用のきっかけ
2. 取り組みの具体的内容
3. 障害者雇用を通じて得たもの

事業所外観

1. 事業所概要と障害者雇用のきっかけ

（1）事業所概要

　ヒロパックス株式会社（広瀬彪夫社長）は、段ボールケース、プラスチック容器、各種ラベル・シールなどの生産を事業としている。工場は、当社の敷地に設置した段ボール加工用の設備と市内にプラスチック成形工場を別に設置している。
 

（2）障害者雇用のきっかけと経緯

①社長の幼少期の体験が障害者雇用のきっかけに

　当社は、昭和46年から知的障害者の雇用を続けている。広瀬社長の「障害者の生活を少しでも向上させたい」という信念が生き続けている。社長は、足が不自由で戦時中軍事訓練に参加できなかった父のことで、小学校に入ると友達からいじめを受け、幼心に障害者への偏見や差別のつらさを思い知らされたという。
 

②障害者雇用の経緯

　昭和37年に段ボール加工業として当社を創業した社長は、昭和42年に友人の子供が入所する障害者施設「はるな郷」の行事に誘われた。人里離れた施設で生活する利用者の服装や生活状況を見て胸につまり、「何とか、私が役に立てないものか」と強く思った。

　昭和43年に社長は「はるな郷」の敷地内に100坪の作業訓練所を寄贈し、利用者に働く場を提供した。その時「将来は私の会社で受け入れたい」と考え、訓練所での作業状況を見ながら、当社の職務に対応できる人材を見極めてきた。

　昭和46年に知的障害者6人（18～20歳）を当社で雇用した。当社の敷地に彼らのための社員寮（30坪、3部屋）を新築。夫人が三食とも用意し、社長の家族を含めて総勢14人の大家族の生活を、知的障害者通勤寮「しろやま寮」ができるまで6年間続けた。

　同社は、障害者雇用を始めてからの約35年間に知的障害者40人を雇用し、定年まで勤め上げた人もいる。ピークは昭和50年代初めに12人を雇用した。

　当社が現在雇用している知的障害のある男性4人のうちAさんともう1人は当初から勤務しており年齢も50歳を越え、現在はグループホームを利用している。20代の2人は在籍する養護学校からの要請を受け雇用した。1人はバス通勤、もう一人は親の送迎により通勤している。

　平成13年には障害者雇用優良事業所として協会長表彰、平成14年には県知事表彰を受けた。

　なお、雇用した知的障害のある社員の退職理由は、ほとんどが定年となっている。

2. 取り組みの具体的内容

（1）作業

　作業は、段ボール工場に勤務するAさんは、機械に原紙を乗せる作業に従事している。瞬間的に機敏に動作することと30年以上の経験が生きるベテランならではの技が必要とされ、健常者でも非常に難しい内容であるが、当社としても、もともと能力的にしっかりしているAさんの作業遂行力を見極めたうえで配置したほか、上司によるきめ細かな説明を行ったため、十分に業務遂行できている。

　プラスチック成形工場に勤務する3人は、みなプラスチック真空成形作業（成形物の型抜き）に従事している。

 

段ボール工場

ベテラン社員のAさん

 

（2）障害者との接し方

　障害者と向かい合うには素直な気持ちと寛容な態度で接することが大切で、垣根のないつきあいをすれば必ず心の底で分かり合えると社長は言う。社員旅行では、温泉で背中を流し合い、まさに裸のつきあいをした。

　障害者も高齢になれば、将来の生活設計などさまざまな問題を抱えながら生きていくことになる。社長は「社会全体が、障害者のことを本当に理解していかなくてはならない時代になった。一番大事なことは『心』。障害者のことを理解しよう、そう思った時の気持ちを決して忘れてはならない。一人一人の純粋な『心』が一番大切だ」と話す。

 

（3）社員への啓発

　障害のない新入社員に対して、事業所の方針として障害者雇用を実践していることを丁寧に説明、理解してもらい一緒に仕事をする中での融和を図っている。

3. 障害者雇用を通じて得たもの

社長は「障害者雇用の長い年月の間には、社員や近所の方々とのトラブルもあったが、誠心誠意を尽くして乗り切ってきた。私は『会社の方針として受け入れる』との大前提を決して忘れず、そのためには個々の問題をどう解決するかに腐心してきた」と振り返る。そして「苦労もあったが、それ以上に私自身が障害のある人たちに教えてもらったことの方が大きい」と話す。

　社員寮時代に大家族の一人として過ごした障害者の中には、亡き社長の両親の墓参りを欠かさない人もいる。「うちの会社をとっくにやめた人だが、お線香をあげに来てくれる。そんなときは本当にうれしい」と話す。　

　昭和42年に「はるな郷」を訪れてからほぼ40年になる。公私共に障害者と深くかかわった日々を振り返り「もし、あのとき「はるな郷」に行っていなかったら、私の人生は大きく変わっていたでしょうね」とほほえむ。障害者と一緒に笑い苦しんだ経験は、まさに社長の人生において大切な部分となっている。「やってきてよかった。彼らに教えられたことが本当に多かった」。社長は、障害のある人たちと接することができたことに感謝するとともに、今後も障害者雇用を続けていく強い決意を示した。

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