特例子会社における既存事業の取り組みと新規職域の開発
- 事業所名
- 株式会社マルイキットセンター(株式会社丸井の特例子会社)
- 所在地
- 埼玉県戸田市
- 事業内容
- 用度品のピックアップ業務および管理業務、宝飾・時計商品の検品業務
- 従業員数
- 46名
- うち障害者数
- 31名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 9 宝飾・時計商品の検品業務 肢体不自由 2 用度品のピックアップ業務 内部障害 0 知的障害 20 用度品のピックアップ業務 精神障害 0 - 目次
1. 事業所概要・取り組みの経緯
当社は、株式会社丸井の総合物流拠点である戸田商品センター施設内に、平成4年7月、前身である「戸田キットデリバリーセンター」として開設した。
障害者雇用の推進と丸井の店舗で使用する用度品管理の合理化を課題として、人事部・総務部の共同プロジェクトで、知的障害者を主体とした職域開発に着手し、継続的な取り組みを展開、現在に至る。

平成15年10月、丸井グループの経営改革の推進を機に、グループ各社の障害者雇用の推進と法定雇用率遵守を目的として、特例子会社を設立、併せてグループ適用の認定を受ける。(親会社の丸井を含め、グループ関連会社が出資)
丸井グループは、“小売業に精通した”企業グループとして、現在29店舗で営業。今後は首都圏を中心の店舗展開から、関西圏を始め全国への出店を図る中期経営計画を持ち、常用労働者数が更に増えることが見込まれる。中期経営計画に伴う事業拡大と併せて戸田商品センター施設内の業務受託を検討する中で、既存の用度品業務に加えて、新たに聴覚障害者を主体とした宝飾・時計商品の検品業務の職域開発を行った。
2. 既存事業における取り組み内容
(1)用度品のピックアップ業務および管理業務
1)業務作業内容------丸井の店舗で使用する包装紙・伝票・事務用品等の検品・出荷


<業務項目>
①ピックアップ-------- | リストに基づき台車を用いて、商品群毎に区分されたストック棚からリスト指定の用度品を収集 |

②検品------------ | ピックアップした用度品が正しいかどうかを二人のペア(読上係と引合係)で復唱しながらチェック |

③積み込み--------- | 三人のチームで梱包をし、カゴ車の中に整理しながら、収納・積載し、用度品シールの内容をチェックし出荷 |

④小分け---------- | 翌日の作業がしやすいように、用度品の整理や補充と合わせて、小分け用の箱づくり、ストック棚の清掃等を実施 |
⑤納品検品・補充---- | 納品されたカゴ車の商品を検品場所まで運び、発注どおり納品されているかを二人のペアで数量確認を行って、指定された棚に補充 |
⑥棚卸------------ | 帳簿在庫(リスト)と実在庫を二人のペア(読上係と引合係)で在庫数量を検査棚卸 |
2)一日の流れ
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(2)運営上の取り組みと工夫
1)運営方針
「仕事・ルールは厳しく、職場は楽しく」
・マルイキットセンターは、丸井グループの販売業務を側面からサポートする仕事
・明るく楽しく活気ある職場づくりを実践
2)運営上の取り組み
①目標管理と評価
・月例表彰、ノーミス運動、業務実績の職務成果給への反映とフィードバックの実施

②育成と定着促進
・職場実習受入れ時、パーソナルコーチの役割をメンバーに任命、育成の一環として実施
・親睦行事の継続的な実施(バス旅行・茶話会・ボウリング大会等)
③健康管理と生活指導
・家庭・寮・行政等の支援組織、パート社員との連携を強化
・スタッフは全員が「障害者職業生活相談員」の資格を所持
3)工夫
①作業行動面
・動作分析を考慮し、通路の幅員確保・荷姿の小分け軽量化を実施

②運営システム
・見やすく、分かりやすく、ミスが起きにくい仕組みに改善(番地表示・分散配置他)



③職場環境整備
・明るく広く安全な作業スペースの配慮や、ミーティングルームを設置し、コミュニケーションの場として活用

3. 聴覚障害者の新規職域開発について
(1)新規事業の業務内容(宝飾・時計商品の検品業務)
業務作業内容……丸井の店舗で販売する商品の数量・金額等の内容検品

![]() 仕入伝票データ入力
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![]() 商品の内容検品作業
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<業務項目>
①ダンボール箱・封筒等の開梱処理
②商品の点数検品
③仕入伝票データ入力
④商品の内容検品
⑤検品済シールの発行と
納品伝票番号印字
⑥仕入伝票の営業店控処理
⑦ダンボール箱・封筒等の梱包処理
⑧検品済シールの貼付処理
(2)取り組みと工夫
1)採用の経緯
①埼玉県内のろう学校の協力によるテスト実習で、職域開発の可能性を検証
②ハローワーク川口を窓口として近隣のハローワーク(埼玉県・東京都)の協力で採用を実施
③本人には、埼玉障害者職業センターの職業評価を受けてもらう
④採用後はトライアル雇用制度とジョブコーチ制度を利用
*トライアル雇用は本人の適性と業務遂行能力を見極めたうえで、1ヶ月で本雇用へ移行
*ジョブコーチ制度は、埼玉障害者職業センターからの派遣支援で実施
・当業務は、平成17年4月から開始、段階的な採用で順次拡大、12月現在9名の障害者と2名のスタッフで運営
2)能力開発
①毎週土曜日にミーティングおよび研修を実施し、業務知識・技術の習得と生産性向上に向けた改善を実施
②メンバー全員で業務マニュアルを作成し、ノウハウを共有化
*業務マニュアルは業務手順を写真入りで、メンバーにとって分かりやすい表現(漢字はルビ付)で作成

③ミスの防止策としてイエローカード・グッドカード(写真付)を活用。ミスの内容、改善の内容を具体的にスタッフと相互確認、掲示して全員に告知し、徹底・改善を推進
④平成17年10月より目標管理および評価制度を開始、職務成果給に反映
⑤月例で表彰を実施
3)安全管理
①フラッシュライトと電光文字表示機およびパトライトを設置(助成金を活用)
*フラッシュライトの点滅により注意を喚起し、電光文字表示機で火災・地震等の発生時の安全管理面の伝達および任意に伝達したい事項や作業の開始・終了等を告知
*パトライトは「赤」を火災、「黄」を地震発生の連絡に、「緑」を作業開始・終了の知らせとして、それぞれの色を区分けして活用



②安全管理マニュアルの作成と消防・震災等の定期的訓練を実施
③携帯用の「災害時の行動基準」カードを親会社とは別に知的障害者用・聴覚障害者用として作成


④ユニフォームを統一
*戸田商品センターでは健常者の社員と同じ職場で仕事を行うこともあり、聴覚障害者であることを周囲に認識してもらうために、オレンジ色の制服と黒のエプロン着用により誰からも分かりやすいように工夫
4)コミュニケーション
①毎月1回、手話通訳士を手配し、個別面談を実施(助成金を活用)
②マルイグループ福祉会(グループ社員の能力開発と総合福祉の向上を図るために昭和54年に設立)と連携した手話講座を開催、従業員への啓蒙を推進
③懇親会や小旅行等を計画・実施し、メンバーの親睦とチームワークづくりを推進
4. 取り組みの効果
・新規職域開発として取り組んだ聴覚障害者の職場は、丸井の店舗を支援する宝飾・時計商品の検品業務としてスタートしたが、正確性・生産性ともに、健常者と比較しても遜色のないレベルまで向上してきている。
・納品の繁閑があるため、ピーク日は受託先のメンバーとジョイントで業務を行っているが、今後は一括処理が出来るよう、人員体制の整備を進めていく予定。
・聴覚障害者とのコミュニケーションや安全管理面の配慮の視点から、“障害者と健常者とが共に働く”職場づくりが進展してきている。
5. 今後の課題・展望など
・聴覚障害者の新規職域開発については、平成17年4月から開始したばかりであり、メンバー一人一人の業務知識・技術のレベルアップを図っていくとともに、目標管理および評価制度の運用等、基盤固めを着実に行っていく。
・マルイキットセンターとしては、現在、用度品担当と検品担当の2チームからなる職務編成であるが、今後、知的障害者の加齢対応等が課題として考えられ、更なる新規職域開発に取り組んでいく。
取締役 小野 博也
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