障害とはひとつの個性と私たちは考えます
~その個性を受け入れる場として誕生したビジネスサポートセンター~
- 事業所名
- イオンクレジットサービス株式会社
- 所在地
- 千葉県千葉市
- 事業内容
- クレジットカード業務サポート、金融サービス業
- 従業員数
- 863名
- うち障害者数
- 14名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 カード変更業務 聴覚障害 5 各種データ入力 肢体不自由 8 各種データ入力 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次
![]() 当社が入居するビル全景 |
1. 事業所概要
(1)事業所の沿革
イオンクレジットサービス株式会社は、現在、年間一千万人が訪れる国際業務都市において、昭和56年6月に当時のジャスコ株式会社のクレジット部門が独立して設立された。
「お客さまの未来と信用を活かす生活応援企業」を経営理念に掲げ、国内で約1,400万人のクレジットカード会員に対し、クレジットカード事業を核とした様々な金融サービスを提供、成長を継続している。また、昭和62年より海外に進出、現在では香港・タイ・マレーシア・台湾・中国にて地域生活に密着した事業を展開、今後はインドネシア、ベトナムでの事業展開も予定している。
個人情報の問題が叫ばれている昨今、いち早く最優先課題として取り組み、「個人情報の保護」と「営業活動」の両立に腐心しながらセキュリティ対策を施した。
(2)事業所の理念と実践
地域に根ざしながら、「お客様を原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という不変の理念に基づいて全従業員が日常業務を遂行するために「行動規範」なるものを作成している。
この理念に基づきクレジットカードの特色を活かし、カード会員参加型の社会貢献活動、環境保全活動に力をいれている。当社はカード会員が利用ごとに貯まるポイントを、現金や商品券、商品との交換の他に社会福祉法人日本点字図書館または社団法人国土緑化推進機構への寄付を選べる制度を設けており、これによって寄付されたお金は「日本点字図書館カード」「緑の基金イオンカード」等を通じて、平成8年から平成16年までに累計約4,000万円を寄付している。
更に、平成7年より毎年、障害者の社会参加の促進、福祉の増進に寄与することを目的として、従業員の募金と事業所からの拠出金を全国の社会福祉施設へ寄付している。
また、平成13年7月に環境ISOのマネジメントシステムを運用した環境保全活動に取り組み、継続して、省資源・省エネルギーを推進している。事業所と従業員全体が環境保全活動に対して積極的に取り組んでいる。
他には、毎月1回「イオンデー」を設け、従業員による事業所周辺の清掃活動を行っている。これは、イオングループ全体で取り組んでいる。
2.障害者雇用の背景と経緯
(1)ビジネスサポートセンターの設立
障害者雇用の取り組みのきっかけは、障害者雇用納付金制度であった。企業には障害者を雇用する義務があることを知り、対応へのノウハウがなかったことから当時のジャスコ株式会社の人事担当者に教えを請いながら障害者の採用を開始した。
当初、障害者を健常者の中に配置していたが、定着率が思わしくなかったことから、彼らを1つの部署に集中して配置することによって定着率が良くなるのではないかと考え、平成10年にビジネスサポートセンターという部署を設立した。
ビジネスサポートセンターでは、机は社内の業務用より大きくし、作業スペースも車いすがゆったりと通れるよう広く取るなど受け入れ態勢を固めた。当初4人でスタートした当センターも、業務内容を増やしながら現在12人が勤務しており、また設立当初から携わっていたセンター長が転勤した後は、当センターで勤務する障害者の中からセンター長代理を専任した。また業務内容については、当初は従業員の名刺作成、請求書の発送等であったが、職域拡大を図り広範囲に渡っている。
(2)ビジネスサポートセンターの理念
当センターの企業案内に掲げている表題には「誰もが、人生の主役を生きている」に始まり、「誰もが、人生の可能性を活かすために」と記載している。会社の理念は、「障害とはひとつの個性だと、私たちは考えます」「その個性を受け入れる場として、1999年春、誕生したのがビジネスサポートセンター」「持てる才能を存分に生かし活躍する、そんなあなたの参加を待っています」更に、「仕事をする→人生を楽しむ」「その前向きなエネルギーを支援するのがビジネスサポートセンター」「環境を整えて、個性を受け入れる」「その個性を生かすかは自分次第」「ビジネスサポートセンターのドアーは、あなたの可能性に向かって開かれています」と掲げている。
![]() ビジネスサポートセンター事務所
入口 |
ビジネスサポートセンターの会社案内に掲載している障害者の声を次に紹介する。
●今の自分に求められることを大事にしたいから、いつも私は現在形。(健常者と同じルール・同じ評価のアーチェリーを9年間続けている)
●車いすに配慮した快適オフィスで、効率よく仕事が進められる。(十分な広さを確保されているデスク周り)
●仕事の知識をもっと深めて、自身のスキルアップをめざしたい。(聴覚障害者。講座を受講し、来年の試験に挑戦する。センターには手話のできる人がいるので、不都合は無い)
●バスケチームの選手として、仕事とスポーツの両立を、これからも。(障害者バスケットを10年続けている。かの有名な「千葉ホークス」。会社の理解があるからこそ練習ができる。自分の趣味をエンジョイできる環境なので恵まれている)
●休職中に取得した資格を生かし、自分の資質を肥やしたい。(以前勤務していた会社とは比較にならないほど、障害者に配慮した職場である。職場の周りは障害を持った人たちなので何ら、気遣いが無い)
●大切なのは、チームワーク。効率よく仕事をこなすために。(千葉ホークスの代表選手。スポーツも仕事もチームワークが大切と力説)
3.取り組みの内容
(1)ビジネスサポートセンターの業務内容
①各種データ入力
②各種資料の封入・封緘
③名刺作成等
業務内容の詳細
①カード会員の周辺業務(東京コールセンターが扱っている全業務の1/3を占める)
②カードの再発行業務
③会員の住所変更・カード支払い方法の変更(属性変更)(月間1万件)
④社内の名刺作成(外注は行っていない)
⑤全国のETCカードの登録業務(月間1万件)これは、コールセンターを通さない業務
⑥イオンカードをゴールドカードに切り替えるときの業務
視覚障害者 → カード変更業務
聴覚障害者 → カード変更業務
下肢障害者 → すべての業務可能(バリアフリーが施されている部門)
![]() ビジネスサポートセンター内
|
(2)募集・採用
社内規定では通年採用としている。
新規学校卒業生は4月から勤務。一般公募により障害者・健常者と分けて募集せず、面接後に採用を決める。
中途採用に際しては、ハローワークからの紹介、千葉の合同面接会や、株式会社イフの面接会等に参加している。
(3)雇用形態・労働条件(賃金・労働時間等)
社員は全て正社員であるが、契約社員は有期雇用で入社の際に決定する。障害者雇用の場合は、障害の程度を考慮し状況を確認のうえ決定する。
進行性の障害のある人に対しては、継続性を加味しながら契約社員から正社員に移行することもある。
在宅勤務はない。
労働時間は、全社員同じで、障害者・健常者の区別はない。
通常の勤務時間は、9:30~18:00または12:00~21:00であるが、顧客のニーズに合わせ、9:30~21:00になるときもある。
(4)職場配置・作業工程
当センターの他に、コールセンターに1人派遣している。また、レベルアップに応じて両センター以外の部署に配置転換することもある。
(5)職場環境
障害者の定着率を高めるべく設置した当センターは、車いすでスムーズに通れる等のバリアフリーに関する配慮がなされている。障害者の中には、健常者と一緒に仕事をすることを希望する社員もいる一方、一緒に仕事をするのは合わないと言う社員もいるが、体調を崩し辞めた人以外は定着して勤務している。
また、聴覚障害者が勤務することによって、他の社員とお互いにコミュニケーションを取ることに努力した結果、他の社員が簡単な手話や指文字など自然とできるようになった。カード事務が職務の聴覚障害者は、パソコンの画面を見て仕事を進め、メールを利用して数値報告を行う。彼らは電話応対が困難であるため他の障害者が対応するなど、それぞれのハンディキャップをカバーし合っている。また、聴覚障害者が災害時にはスムーズに避難できるよう、非常口に一番近いところで作業をする等配慮している。
また、助成金を活用し、下肢障害者等の通勤の為に、駐車場や職場近くの住宅を借りるなど通勤の環境も整えている。
![]() ビジネスサポートセンターの
職場風景 |
(6)能力評価・教育訓練
全社員に対し半年ごとに実施している。評価は8段階に分けられていて、新規学校卒業者は2段階目からスタートする。昇格は年1回である。
(7)人的支援体制・従業員教育
社内教育として、昇格の際に受け入れ研修のほか、中途入社向けセミナーを設けている。また通信教育によって資格を取るように促している。
(8)福利厚生・健康管理
産業医は月に1回来社する。社内には常備薬を備えているほかは特別な事はしていない。また健康管理は自分でするよう指導するとともに、長期休養等がないよう配意している。
(9)家族・関係機関との連携
社内全体で連絡網を設けているので、家族との連絡は容易に取れる。障害者が配属されている部署はお互いが管理することになっているため非常にアットホームな雰囲気である。
また朝礼では手話を取り入れている。事業所全体が社会貢献活動・環境保全活動等に取り組んでいるため、今後も「障害のある人」の雇用に深く関与していくとのこと。
当社が入居しているビルについても、バリアフリー対策としては障害者用駐車場(屋内駐車場)・障害者用トイレ等のインフラが整備されていることも長期雇用に繋がっている。
所長(1級建築士、障害者雇用推進技術顧問) 宮崎 輝紘
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