障害の特性を超え、一人ひとりの特技や知識等個人の適性を尊重した事業所づくり
- 事業所名
- 株式会社キユーピーあい(キユーピー株式会社の特例子会社)
- 所在地
- 東京都町田市
- 事業内容
- 伝票照合、経理業務、ホームページ作成、名刺印刷業務、ヘルスキーパー、メール便仕分け、食堂・売店の運営・管理、発送業務
- 従業員数
- 30名
- うち障害者数
- 18名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 ヘルスキーパー 聴覚障害 4 ホームページ作成、メール便仕分け、名刺・印刷物作成 肢体不自由 8 伝票照合、経理事務、名刺・印刷物作成、食堂・売店運営・管理 内部障害 0 知的障害 5 伝票照合、メール便仕分け、発送業務 精神障害 0 - 目次
1. 事業所の概要
(1)事業内容
1)コンピューターによる各種入力及び計算処理業務
2)経理及び労務に係る各種届出書類作成業務
3)伝票及び帳簿などに関する各種照合業務
4)各種印刷業務
5)ホームページ、広告、プレゼンテーション資料の作成の受託業務
6)障害者雇用コンサルタント業務
7)ヘルスキーパーなどリラクゼーション業務
8)ユニフォームレンタル業務
9)切手、印紙販売、チケット販売、各種管理業務
10)総務・庶務業務の受託業務
(2)経営方針
先ず、障害者に優しい事業所であること。
当社は、キユーピー株式会社の特例子会社として設立され、グループ関連企業からの主に事務系の業務を受託している。企業として収益の確保も必要であるが、特に心がけていることは、社員同士が相携えて一つひとつの仕事を正確に仕上げていくことである。
一方、養護学校、職業訓練校、就労支援センター、作業所、授産施設など福祉関連の施設とも連携しながら職場実習の創出と受入れ、実習制度の確立、作業所、授産施設等に外注できる仕事の創出と人材の育成にも注力していく方針である。
(3)組織構成
1)本社
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平成18年2月現在
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2)渋谷事務所
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3)八王子事務所
※カッコ内の数字は所属が兼務の人の数 |
(4)障害者雇用の理念
1)障害の特性を超えた事業所づくり
肢体、聴覚、視覚、知的等障害の特性によって区別することなく、担当業務の決定も障害ではなく一人ひとりの技能・知識等の適性を考慮し、個性を尊重する。
2)社員全員にとってのバリアフリー
社員全員が同じ条件で仕事に取り組めるよう、設備面のバリアフリーに限らず、例えば聴覚障害者のための手話通訳者を常勤職員として配置するなど、個人のハンディが業務上のハンディとならないよう、全ての人にとってのバリアフリーとなるよう心がけている。
2. 取り組みの経緯、背景
キユーピーグループ全体の法定雇用率(1.8%)を達成するという方針に基づき、親会社(キユーピー株式会社)と一心同体の事業所として当社を設立することとなった。
特例子会社として、自ら障害者雇用を推進するとともに、グループ内における障害者雇用に関するコンサルティング業務を充実させていくことにより、キユーピーグループのCSR(企業の社会的責任)の一翼を担う役割を果たしていくことを目的としている。
3. 取り組みの内容及び効果
(1)障害の特性によって人を区別しない担当業務の決定
当社は、身体障害(肢体、聴覚、視覚)を中心に、知的障害に関する知識を持つほか、手話通訳、生活指導員等の認定を受けたスタッフで構成され、担当業務の決定にあたっては、一人ひとりの技能・知識など個人の適性を尊重して行うこととしているため、それぞれのチームに様々な人が集まっている。
<コメント>
当社では、殆どの場合、入社前に実習期間(2週間ほど)を設け、チームリーダーや先輩の指導の下で実際の業務に従事してもらう方法を採っている。
事業所にとってはその人の能力・適性・体調管理などを把握することにより、その後の配置の判断に役立ち、本人にとっては職場をより深く知ることにより就職判断に役立つこととなる「お見合い期間」と位置づけている。
また、それぞれのチームに様々な障害のある社員を配置していることが、社員同士の相互の協力につながり、正確に仕事を仕上げていく結果につながっている。
(2)業務内容
■総務グループ
【総務チーム】
社員食堂の運営管理業務を中心に社内メール便、外部郵便物の受付と配達・労務関連などの業務を行う。

【物品・売店チーム】
主に売店の運営、管理業務を行う。
■業務グループ
【印刷チーム】
主にグループ企業の名刺作成や、パンフレット等の印刷物作成を担っている。名刺は受注から作成、配送まで一連の業務を行う

【発送業務代行チーム】
グループ内の情報誌、キャンペーン商品類の封入や発送、POP類の作成業務を行う。

【照合チーム】
グループ内の精算伝票、支払伝票などの確認業務、ファイリング作業を行う。

【経理チーム】
社内経理を中心に、グループ各社の推奨販売員の経理処理などを行う。

【契約書管理チーム】
契約書の管理業務を行う。
■営業グループ
【グループ営業チーム】
グループ各社の窓口として、障害のある人の個性に合わせた業務を開拓し、受託に結びつける業務を行う。

【ホームページチーム】
自社ホームページの作成、更新、管理に加えて、グループ営業と連動しながらグループ内や外部企業に対して新規受託・運営管理の業務を行う。

■業務推進グループ
【業務推進チーム】
内勤総括部署として、助成金等の申請・新規採用・実習・マニュアルの作成など、各グループ間の課題調整等の業務を行う。

【企画チーム】
事業所の中長期における経営計画の立案、推進を担当する。
■渋谷事務所
工場等で使用するユニフォームのレンタル業務、切手・印紙の販売、ならびにグループ各社の職員が出張する際の切符の手配業務などを行う。
また、親会社や関連会社の福利厚生の一環として、リラクゼーションルーム(三療師の資格を持った職員がマッサージ等で心身の疲れを癒す)の運営管理を行う。
これに加えて、平成17年10月からは、キユーピー本社のメール室にて、社内便や郵便物の仕分け等の業務を受託している。


■八王子事務所
キユーピーグループの社員が利用できるテニスコート・野球場の利用案内および予約管理を行う。


<コメント>
職域の開発・導入については、社内の「グループ営業チーム」と「業務推進チーム」の話し合いにより決定し、新たな職域の開発にあたっては社員の能力・適性に合わせた配置転換及び新規採用によって弾力的に対応している。
(3)設備面の職場環境づくり
社員が自分の障害に関係なく能力を充分発揮できるよう、安心して働ける職場環境を実現している。
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①オフィス床のバリアフリー オフィスの床は5cm高くなっており、LANなどの配線は床下に収納されている。 これにより床がフラットとなり、車椅子利用の社員の通行の妨げや、転倒の防止などにもつながる |
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②操作パネル 電灯や空調等の操作パネルは通常より低い位置に設置されており、障害者、健常者両方が使いやすい高さに設置されている |
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③コピー&FAX機 当社で使用しているコピー&FAX機は、上下で分離できるものを使用しており、それを横に並べて配置し、車椅子利用の社員でも無理なく使用できるようにしている。 |
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④パテライト 非常事態の場合は、音だけではなく聴覚障害者の社員にも伝わるようにこのパテライトが光って知らせる。 受付とトイレに設置している。 |
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⑤お知らせランプ FAXが届くと、こちらのライトが光って受信を知らせる。聴覚障害の社員もFAXが受信されたことがわかる。 |
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⑥段差解消 当初はビル入り口に1cmほどの段差があったが、これを舗装して、誰もが無理なく出入りができるようにした。 こまめな対応をひとつひとつ行うことが働きやすい職場環境を作っていく。 |
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⑦休息 オフィスの一角に、膝丈ほどの高さの畳スペースがある。 お昼休みなどには社員の休憩の場所となっている。 |
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⑧スロープ 坂道になっている当社のビル入り口にはスロープを設置している。 |
(4)運営面の職場環境づくり
設備面の職場環境づくりにとどまらず、日常の業務運営においては様々な工夫がなされており、「障害者に優しく」「仕事はきちんと正確に」という当社の経営方針を日々実践している。
①言いたいことが言える環境
・社員自身がリーダー(責任者)として会議に出席し、意見を述べる。
聴覚障害の会議出席者には必ず手話通訳者が付く。
・社員全員に年2回個人面談を実施する。
・ 本人の技能や適性により担当業務を決め、その業務内容や目標の達成具合により給与金額が決定する【職能給】を導入した。自分が言ったことに責任を持つことによって、自分の言いたいことが言える職場環境につながる。
<コメント>
キユーピーグループ各社では役付きで名前を呼ばず、当社においても全て「さん」と呼んでいる(「〇〇社長」ではなく「〇〇さん」)。
上司に対しても会議においてもきちんと自分の考えを言える下地となっている。
②活発なコミュニケーション
・聴覚障害者との対話のため、ミニホワイトボードによる筆談・口話・手話通訳等を併用し、社員全員に周知している。
・チームごとに朝礼と終礼を行い、情報の共有・確認・連絡を図っている。
・知的障害者の社員には年2回程上司が家庭訪問、職場と家庭との連携に努めている。
③各分野との交流と情報収集
社内・グループ会社各社(会議・イベント)・家庭との交流(家庭訪問)・養護学校及び訓練校(実習)・ハローワーク(採用相談)との積極的な交流により広く情報収集に努め、事業所の運営と環境づくりに役立てている。
4. 今後の課題
特例子会社にとかく見られるように、親会社における関係者の人事異動などにより、親会社の特例子会社に対する意識が薄れ、支援が得られにくくなるという問題があるため、特例子会社の存在意義をアピールしていくためには、障害者の雇用の確保だけではなく、業務を通じてグループにとって無くてはならない存在になる必要がある。 そのためには、親会社・グループ各社だけではなく、外部からの仕事の受託にも努力し、スキルアップと品質の向上に常に心がけていかなければならない。
障害者雇用相談室 障害者雇用アドバイザー 畠山 千蔭
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