障害者特性に応じた物理的・人的環境の改善に取り組む
1. 事業所概要
（1）組織図
（2）障害者雇用状況
第一事業部 1人（上・下肢障害） うち重度1人
第三事業部 2人（聴覚障害、内部障害）うち重度2人
ネオカット事業部 1人（肢体不自由）
2. 障害者雇用の経緯
（1）雇用のきっかけ
従前、一般採用で採用した人が障害者であったことがある。職務が遂行できれば障害の有無は問わず2人を採用した。
障害者を積極的に採用したのは、毎年卒業生を採用していた地元のT大学の先生から、車いすを使用している学生の採用について要請を受けたことがきっかけである。当初は社屋の設備等環境が整っていないため、受入れに悩み即答できず、ハローワークの集団選考会にも出席したが、職場環境に適した障害者を採用できない状況のなか、県雇用開発協会主催のセミナーやフォーラム等のイベントに参加するなかで、障害者雇用の機運が社内にも高まり、再度T大学の車いすを使用している学生を採用の方向で検討、環境を整備し受け入れた。
現在、聴覚障害の求職者に対しトライアル雇用を実施している。
3. 具体的な取り組み
（1）車いす使用者に対する取り組み
1）物理的環境の改善
車いすを使用する障害者の受入れにあたっては、まず事務所に自由に出入りできる環境づくりに取り組む必要があるため、次のような動線と設備のハード面の改善を行った。
なお、施設設置整備については、障害者作業施設設置等助成金を活用した。
①上下式電動リフト
職場の床はトラックの搬出に合わせて高床になっているため、車いすで入退社が自力でできるよう、物流倉庫プラットホームを入退社口とし、上下式電動リフトを設置した。リフト乗り場は、雨天や冬期間の降雪等の天候を考慮し、屋根及び側壁を雪国仕様で設置している。
本人は車で通勤するので、駐車場を玄関先の近いところに設定し、駐車スペースを確保した。なお、雪が降る冬期間は家族が送迎している。
②引き戸
事務所出入り口の片引きドアを廃し、自動開閉式引き戸を設置した。
引き戸のノブも握りやすいよう大きくした。
③通路幅の確保
事務室内を車いすの往来に支障ないよう通路を一定幅以上確保した。
事務室全体に改良
④トイレ
トイレを改造した。またトイレ出入り口のドアを廃し自動開閉式引き戸を設置した。
⑤休憩室の追加
2階の社員食堂に加え、1階にもフロアの一角を仕切って新たに休憩室を設置した。
2）人的環境の改善
障害者の受入れは決定したものの、当社としても初めての取り組みであり、社員もどのように対応したらいいのか困惑していたため、手探りの状況であったが総務課長を中心に検討を重ね、まず本人とじっくり話し合うことから取り組んだ。
事業所（総務課長）は「あなたを社員として採用するが、特別なことはしない。あなたが困ったときに声を出さないと周りは助けられない。援助を必要とするときははっきり言ってください」と伝えた。
本人は「特別視して欲しくない。困ったときは声と態度で伝えます。」と約束をした。
社員には、「気に留めることはあっても気を使いすぎることのないように。できないときは本人が手を上げたり、声をかけるのでそのときは援助してほしい」と周知徹底した。
このことによって、本人も周囲の社員も安心感が見られた。
障害者を受け入れる社内の機運は良好である。職場定着推進チームを設置し問題が生じた際の解決にあたっている。
3）職域開発
従来、電話オペレーターを置いていなかったため得意先から電話の出方が遅いと苦情が度々あったことから、本人に第一義に「電話応対」の業務を与えた。
本人が電話応対に従事することにより、得意先からの電話をスムースに社内へ取り次ぐことができるようになったため、苦情が途絶え職場内外から高評価を得られた。
さらに、本人の能力を考慮して、「電算機オペレーター」として配置した。
4）作業遂行状況
握力や手指機能に支障があるが、残存機能をうまく活用して仕事をしている。
座位の高さが調節できるオフィス三次元電動車いすを使用していないため、コピー機の操作など着座位置に比べ若干高い位置での作業に苦労はしているものの対応はできている。
新設した1階の休憩室の使用について、最初1人で寂しくないか心配したが、設置とともに本人と一緒に昼食や休憩をとる小集団ができた。
入力データの取り揃えや格納、業務開始時や終了時のコンピュータの準備において自力で整理することが困難であること、また、飲食時の食器等の準備や飲食後の食器等片付けが自力で困難であることから、重度障害者介助等助成金を活用し職場介助者を配置した。
（2）聴覚障害者に対する取り組み
現在品質管理部に配置し、トライアル雇用実施中である聴覚障害者に対しては、以下のような取り組みを行った。
1）物理的環境の改善
商品検査において、モーターの回転音を聞いて品質を確認する作業を本人に用意した。
聞こえないのではなく聞き分けることが困難な状況に対し、品質管理業務に十分対応できるよう、職場内で生じる音を抑えるため職場内放送の音量を下げるなど配慮した
ちょっとした配慮を行うことにより本人が作業に十分対応できるようになったことで、周りの社員も彼らとともに働くことに自信が持てるようになった。
2）人的環境の改善
補聴器を使い、かつ口話でコミュニケーションをとる本人は、手話を知らずに過ごしてきたが、現在は他の聴覚障害者や職場の仲間との意思疎通に生かすため、職場内に自発的に手話の勉強会ができ、手話の勉強に取り組んでいる。
（3）職場の障害者雇用に対する意識
職場においては、障害者の受入れに戸惑いがあっても消極的な反応はなかった。以前に一般採用した中の障害者が管理職になっていることも、彼らに対して自然な気持ちを持っている背景としてある。今回紹介した2事例とも、1ヶ月以内に対応し改善がなされている。
（4）福利厚生・健康管理
①社員旅行は2年に1回海外旅行を行っている（水害や震災で行けない年もあったが、6年ぶりに全員で海外旅行に行ってきた）。
②定期的な通院については上司へ申し出てもらい、快く通院できるようシフト変更の措置を行うなどの、時間的な配慮をしている。
4. 今後の課題
身体障害者の雇用への取り組みが社員全般のモラールの向上に繋がっていることに、満足感を覚えている。今後、知的障害者の雇用については、製造部門が小規模で単純作業が少ないため、職務の選定について検討中である。金子 芳三郎
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。
