2005年度作成

事業所名

シナノケンシ株式会社

所在地

長野県上田市

事業内容

システム機器・PC周辺機器・福祉機器・精密モータ・カーボン・シルク素材などの開発・製造・販売

従業員数

1,293名

うち障害者数

15名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	2	組立
肢体不自由	5	事務、組立、出荷等
内部障害	3	事務(2)、切削加工(1)
知的障害	5	組立、加工、整備
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 当社の考える「企業の社会的責任」と社会への貢献
3. 能力開発と職場定着のための社内体制
4. 今後の課題・展望等

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）沿革

　シナノケンシ株式会社は、大正7年、日本第二の「生糸の町」として当時海外にまで名の知られた丸子町に、絹糸紡績業として操業を開始して以来、長年にわたり繊維関連の事業所として発展を続けてきた。

　しかし、第2次大戦以降のわが国全体の産業構造の急速な変化の中で、いち早く近代産業への進出をはかり、精密電機事業、電子機器事業と相次いで参入して業容を拡大、米国・中国・タイ・ベルギーにも現地法人を設立するなど、国内の3事業所、3営業所と合わせて地域最大規模の企業となっている。
 

 

（2）経営理念と障害者雇用

　創立以来90年弱が経過。地域にしっかり根をはり、地域社会を重んじながら発展してきた伝統と、一方ではハイテク事業をグローバルに展開する急進性とを併せ持つ企業風土を培ってきた当社は、次のような経営理念のもとに一貫した企業体質づくりを今なお強力に進められている様子が社内の随所にある掲示物や雰囲気の中から感じとれる。

 

 

　さらに、障害者の雇用についても早くから取り組んできており、現在でも15人の障害者を雇用しているが、それは次の考え方が基本となった雇用管理が実践されているからである。
 

 

（3）当社の障害者雇用における特徴

　当社における障害者雇用の特徴は、定着率の高さに示されているように障害者にとって“働きやすい職場環境”がつくられている点であるといえよう。

　勤続年数は最長で36年、平均でも15年にも及ぶことをみても、働く環境がいかに良いかいうことを物語っている。

　これは、障害者のための特別な施策や改善、設備や装置が設けられているということではなく、例えば次の点についてあげることができる。

①製造現場では、老若男女問わず基本的に立作業であるが、下肢障害のある社員や妊婦の社員に対しては、椅子に掛けて作業をしてもらっている。

②工場内での作業においては、知的障害のある社員であっても特別な装置や作業方法を採っていることもなく、障害のない社員とほとんど同じ条件で仕事に取り組んでいる。

　このように、障害の有無を問わず誰にでも働きやすく、仕事がやりやすい職場を創ることや生み出された成果に対する公正で公平な評価が実施されている。

　もちろん、安全や品質・生産性の確保のための環境整備やしくみができているからこそ、次のような基本方針のもとにより高いレベルの目標に挑戦できる社員を育てていける。
 

 

2. 当社の考える「企業の社会的責任」と社会への貢献

 

（1）「企業の社会的責任」

　長野県の東部（東信という）で、90年近くも前から事業展開している当社は、「地域への貢献」「地域の発展とともに」という側面を常に諸活動の原点において進めていることが伝統の一つにもなっていることが随所からうかがえる。

　それは、上図に表されているように、障害者に対しては就労の場を提供することにより所定の雇用責任を果たすことはもちろん、その後の“高定着率”化を社会的責任の一つとしてとらえている点からもうかがうことができる。
 

（2）視覚障害者向けCD録音図書読書機「Plextalk」の開発

　1990年代に入り、世はまさに情報革新が急速に進み「IT革命」の波が大きくうねり始めていたが、視覚障害者向けの録音図書はテープによる方法がまだ主流であった。

　そのような状況のなか、1枚のCDに長時間のデータを圧縮して録音・再生する技術である「CD・BGM技術」を確立し、大手メーカーにもOEM供給していた当社に対して、当時の厚生省から視覚障害者向け機器として開発・商品化について打診があった。

　当社のトップを中心に検討をした結果、技術的には可能であろうが、事業化のためには、世界標準化までを目指し、世界中の視覚障害のある人たちに共通に使ってもらえる商品ができるのか？という課題があがった。

　そこで、開発のコンセプトを次のように定め、開発メンバーをあげての調査や研究を経て平成8年には商品化でき、その翌年には国際図書館連盟で、国際標準に基づく録音図書と認定されたことで、世界共通に流通・使用されるシステムとしての評価を得、海外にも多くの製品を輸出、アメリカでは今や視覚障害児だけでなく学習障害児向けの教材として広く導入されている。

　この出来事は、障害者向けの新規商品の製造・販売への取り組みに対し、当社の技術力だけではなく、障害者雇用に関する日ごろの取り組みや考え方が評価されたことを意味しているのであろうと、あらためて気を引き締められた、と当社は考えている。
 

 

3. 能力開発と職場定着のための社内体制

（1）障害者の採用～教育訓練・処遇について

 

（2）職場定着支援の体制

 

 

　社内ではこのような支援体制が機能しており、ジョブコーチの活用をはじめ外部機関とも密に連携しながら、何例かの問題解決をはかり定着に貢献しているとのことで、前述で紹介したように、ハード面での改善や配慮よりも、むしろソフト面からの定着支援が適切に実施しているのが特徴的である。

 

4. 今後の課題・展望等

（1）更なる職種や雇用の拡大をめざす

　当社としては、障害のある社員に対しては、障害により不足している能力の部分を支援するのみで、一人の社員として持てる能力を発揮し、当社の業績に貢献してもらう風土が今までの雇用管理の中で定着しているので、機会があればさらに障害者雇用を拡大していく意向である。
 

（2）職場定着推進への一層の取り組み

　社内に定着してきている支援体制を継続・強化しつつ、さらに定着率を高めていけるよう、全社員対象の「社員相談室」や「出張相談室」、「健康相談窓口」の制度を活かしてのメンタルヘルスや職場環境の改善・維持向上を目指し、地域社会への貢献度を高めていく意向である。

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