2005年度作成

事業所名

社会福祉法人聖隷福祉事業団
和合せいれいの里（和合愛光園）

所在地

静岡県浜松市

事業内容

特別養護老人ホーム、高齢者・身体障害者デイサービス、身体障害者療護施設、障害者生活支援センター

従業員数

171名

うち障害者数

8名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	6	送迎管理業務、介護保険請求業務、相談業務等
内部障害	0
知的障害	2	施設内の清掃、洗濯業務
精神障害	0

目次

1. はじめに
2. 事業所の概要
3. 障害者の配置と職務
4. 新たな職域拡大・雇用継続等の取り組み
5. まとめ

「和合せいれいの里」施設建物群

1. はじめに

　「きょう一日を、自分らしく過ごしたい－そのためにできることを、私たちは問い続け、行動したいと考えています」、これが和合せいれいの里の合言葉である。

　就職—それは単に賃金を得て生活を支える手段のみならず、人の生き方を左右する一生の「よりどころ」を得ることである、と言われてきた。しかし、最近の効率優先の職場で、それぞれの人の持つ力が納得いくまで発揮でき、その仕事が正当に評価されるということはなかなか得難い時代になってきたようにも思える。

　和合せいれいの里では、障害者も健常者も何の区別もなく、普通に、むしろ活き活きと働き、その力が互いに頼りにされている様子が全く自然である環境づくりを実践している。

2.事業所の概要

（1）聖隷福祉事業団

　平成12年に創立70周年を迎えた歴史と伝統のある組織である。キリスト教精神に基づく結核患者へ奉仕活動などから始まった事業は、現在、医療、保健、福祉、介護サービスを柱とした総合的なヒューマンサービスを提供する「複合体」として、日本でトップクラスの社会福祉法人となっている。

　職員数7,000人余り、静岡県浜松市を中心に関東、関西、四国、沖縄までその施設は拡がり、多様な福祉、医療、教育などの活動が行われている。
 

（2）和合せいれいの里（和合愛光園）

　聖隷福祉事業団の一機関として、「施設機能の複合化と地域開放」を目指して浜松中心市街地からやや北西の地に建てられた。

　特別養護老人ホーム「和合愛光園」ほか各種施設のある3、4階建の建物群を中心にした広大な区域が和合せいれいの里である。在宅介護支援センターと障害者支援センター、特別養護老人ホームと身体障害者療護施設、高齢者デイサービスと障害者デイサービスなどの組合せで、青年から高齢者までの地域の福祉ニーズに対応できるよう多様な福祉サービスを提供するための施設がある。

　職員数は171人。多様なニーズに効率的に対応できる福祉サービス拠点として整備されているとともに、恵まれた環境を活用して四季折々のイベントや各種の講座なども催されて、利用者と地域住民との新たな出会いの場ともなっている。
 

 

3.障害者の配置と職務

（1）障害者生活支援センター「くすのき」

　在宅の障害者の相談にあたるピアカウンセラーとして重度の下肢障害者を配置している。障害のある人がどういうところで大変か、健常者ではわからないことも多いことから大変大事な仕事を任せている。学生時代に受障したが、同じ障害者として障害に対する深い理解をもつとともに、豊富な経験と専門性を活かした適切な相談で利用者の信頼を得ている。その人柄も気さくで、和気藹々とした雰囲気を漂わせた中にも頼りにされている様子がうかがえる。
 

 

（2）身体障害者療護施設「みるとす」

　相談員として重度の下肢障害者を1人配置している。もと学校の先生で、社会人になってから受障した中途障害者である。身体障害者を対象とした当施設において、自身の経験をふまえて利用者に深い理解を持ち、幅広い分野で適切にアドバイスできる相談員として得難い役割を担っている。
 

 

（3）移送サービス室

　現在、準備中であるが、配車・事務を担当する2人の障害者を配置し、一部無線業務が実際に稼動を始めている。また、この2人により送迎ソフトにデータを入力する組み立て業務が現在続けられている。
 

 

（4）衛生室

　高齢者と2人の知的障害者がチームを組んで、介護施設入居者の衣類洗濯や施設内の清掃業務に従事している。

　知的障害者の雇用については、最初は就労支援制度の理解も十分でなく試行錯誤で取り組んできたが、問題があったからこそ改善のきっかけが生まれ、試行錯誤の経験が元になって、施設の拡充—担当エリアの拡大などで彼らがうまく適応できない時に、就業援助者やジョブコーチのフォローで効果を上げてきた。公的な支援制度の利用、活用が効果的であることも学んだ。

　平成17年4月採用の女性の障害者は、最初は清掃部門だけを担当していたが、本人の希望もあり、デイサービスのおしぼり配りなどもやっている。

　互いに言葉を交わしたり高齢者との交流もあることから、本人からも好評でやりがいを感じて一生懸命働いている。
 

 

4.新たな職域拡大・雇用継続等の取り組み

（1）移送サービス室

　当施設には、デイサービス、ショートステイ、入所者の病院受診など日々送迎のためにおよそ16、7台の送迎車があり、市内をくまなく回っている。

　車により多様な特性（積載可能リフトの種類など）があり、カバーエリアが広いので効率的に車を配置しているが、日々変化するニーズに対応するため、障害者雇用助成金制度を活用して「送迎ソフト」を導入し、現在基礎データを組み立て中である。

　送迎車の管理は、従来は各部署で対応していたが、今後は当部署で一括管理運用する。毎日変わる多様な需要に対応するため、各車と結ぶ無線電話も導入したが、当部署に障害者を配置し、既に稼働中である。
 

（2）障害者就労会議

　和合せいれいの里では「障害者の職場をつくろう」ということで、施設長、各施設の相談員、採用担当者などをメンバーとして独自に職場開発のための「障害者就労会議」を毎月開いている。移送サービス、介護保険請求などの業務はこの会議で企画して実現した。

　また、頚椎損傷などの車いす使用者の駐車場について、場所の確保を送迎車の出入りなどを考慮に入れ検討している。

　なにより長く働いてもらうことが大事である、と「継続雇用」という言葉は使っていないが、障害者の職域拡大や就労についての配慮のもと、組織として常に適切な検討ができる場を確立している。

　また、聖隷福祉事業団の人事課に対しても「障害者雇用の検討会をここでやろう」とはたらきかけている。

 

5. まとめ

　施設で働く障害者を見ていると、職場、そして仕事に自然に融けこんでいる。それぞれの人の持つ能力が十分に発揮され、それが施設の中で重要な役割を担い、彼らの働く喜びが溢れ、周りの人々も励まされるような雰囲気が感じられる。

　働く人に優しい職場は、働く人を通じて、利用者にも優しく心配りの行き届いた仕事が提供される原点である。

　和合せいれいの里では、開設以来「障害者雇用」はごく当たり前に進めている。社会福祉法人が運営する福祉施設であるが、企業の障害者雇用についての理念が確立され、全ての職員に浸透しており、確実に実践している。

前ページへ