障害者に活躍の場を持ってもらうことで、企業の社会的責任を果たす
 事業所外観 |
1. 事業所の概要
当社は、東京都に本社を置くトステム株式会社を母体とし、住宅用サッシや住宅用構造体パネルを製造する工場として昭和54年に創業した。平成17年3月現在の従業員528人のうち正社員が430人となっている。
当社は健康で快適な住空間の創造を目指し、本社の社是である『品質至上』、綱領としての『良い家に住むことは万人の願い、この願いを実現するために私たちは働く』、経営理念の『品質主義』『顧客主義』『人間主義』『公正主義』を掲げ、事業を展開している。
当社における雇用に対する考えとして、人権尊重に基づく採用と雇用の機会均等を掲げている。本社のホームページにも掲げられているが、採用において個人の学歴、性別、年齢、国籍、宗教、身体的障害などは一切関係ないとしている。また、採用基準として、即戦力となる技術や社風への順応性、明るさ、プラス志向などを挙げている。
2. 障害者雇用の経緯
本社の雇用に対する考えに加え、当社では、障害者雇用の理念として、『活躍の場を多く持ってもらい、企業としての社会的な責任を果たす』ことを挙げている。これは従業員として障害のある人達が成長していけば、企業としての本事業所の成長につながるということでもある。
当社において最初に障害者を雇用したのは、昭和55年まで遡る。当初は聴覚障害のある人を採用したことに始まり、1990年代に入ってから本格的な採用を開始した。当初は聴覚障害の人が採用の中心であったが、次第に上肢・下肢障害や知的障害のある人などを採用し、障害の範囲を拡大している。
障害者雇用のきっかけとしては、法定雇用率を達成しなければならないという社会的責任の遂行にあったが、その後は、その人の能力が活用できる職務があれば採用し、雇用を拡大している。
採用に至る経緯としては、障害者福祉施設（授産所）や三重障害者職業センターの利用者が多く、ハローワークの紹介を受け採用している。また実習については、養護学校からの受け入れは現在のところ行っていないが、福祉施設から受け入れ採用した人がいる。また、福祉施設からは実習の受け入れや採用だけでなく、施設へ部品に関する作業を発注するなど、地域に貢献するように心掛けている。
3. 具体的な取り組み
（1）採用・配置
当社の障害者雇用は、まず1ヶ月間アルバイトとして契約をし、その間の勤務態度や能力を判断し採用を決定する。この1ヶ月間で商品知識・製品や部品の素材に関する知識等を習得してもらい、実際の製造ラインに配属する。トレーニングをOFF-JTで行うのはこの期間が中心であり、配属後はOJTで適宜行う。
製造部門では、トヨタが採用していることで有名な看板方式、つまり「多品種少量生産方式」を採用し、非常に多くの商品を取り扱っているため、製造加工については十分な知識が必要とされる。また、製造に関してはISO9001の認証を受けていることもあり、品質管理に関しては十分に配慮している。
当社で採用された障害のある従業員のうち、聴力障害のある従業員の多くは製造加工部門に配属している。業務遂行に関しては、作業中に必要最低限の事項以外でのコミュニケーションは必要ではないため、現在特に大きな課題はない。しかしながら、過去に人的要因で不良品が発生し、その原因を追究していく過程において、彼らとのコミュニケーションをうまく図ることができず、真因を掴むことが難しかったことがあり、以来、各従業員が手話をマスターすることが課題になっている。
知的障害のある従業員に関しては、資材の段取りをするための補充や伝票整理などが担当であり、決められた場所に常に規定数補充することや清掃、空き時間での伝票整理などが主な業務である。
現在、製造加工及び資材準備等に関しては、ラインの責任者が監督をしており、対応が必要な事柄が生じた場合には、ライン責任者が対応、判断が困難な場合は製造過程の責任者、次いで工場長という段階を踏んだ対応を行っている。
（2）職場環境
特に工場の作業環境は、健常者と区別なく、誰でも安全で快適に業務が遂行できるように整備されている。作業スペースについても、可能な限り少ない歩数で移動できるように機材を配置している。歩数を減らすことで、労働者の肉体的な負担を減らし、作業能率を高め、不良品を極力抑えることに効果を挙げている。床面は基本的にフラットであり、下肢障害があっても移動については問題がない。また通路は作業用車両が通ることもあり、広く取られている。
コミュニケーションについては、休憩時間においては他の従業員とともに過ごしている。勤務時間外については特に関与はしておらず、個人の責任において行動することが原則となっているが、社員の中には近所のプールでトレーニングしていることは認識している。
その他、障害のない従業員との関わりについて、社内レクリエーションには積極的に参加するよう促しており、ボーリング大会や慰安旅行等には障害のある従業員も参加している。
4. 障害者雇用の効果
当社が障害者雇用に取り組んだ結果得られた効果としては、各従業員が決められたルールを確実に遵守するようになったことが挙げられる。知的障害のある従業員と協同で作業する場合は、特に決められた手順を遵守しなければ不良品の発生に繋がるため、マニュアル化などにより対応した結果である。
また障害のある従業員にとって、製品の加工や資材段取りといった現業は、体力面が少しずつ向上していることが勤務状況からうかがわれる。その他、彼ら自身から見れば、当社において積極的に取り組んでいる定型作業は、そこに従事する役割や職場での位置付けにより彼らが存在意義を感じることができることから、生き生きと働くことに繋がっている。
当社における障害者雇用継続の背景には、一つには確立された企業理念に基づき、採用前から人材を登用していることがあげられる。製造業の特性に適応できる能力・個性を見極めた上で採用することが職場定着の大きな要因となっている。併せて、採用後の待遇面において彼らが他の従業員と同様、準社員又は正社員の扱いがなされていることも挙げられる。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。
