事業所名

マックスバリュ中部株式会社

所在地

三重県松阪市

事業内容

スーパーマーケットチェーン経営

従業員数

1,138名

うち障害者数

23名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	2	商品出し・加工・パック詰め
肢体不自由	7	事務・商品出し・加工・パック詰め
内部障害	3	商品出し・加工・パック詰め
知的障害	11	商品出し・加工・パック詰め
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 具体的な取り組み
4. 取り組みの効果と今後の展望

本社外観

1. 事業所の概要

　当社は、昭和22年の青果店開業に始まり、その後昭和58年にフレックス株式会社となり、平成11年にフレックス株式会社と中部ウエルマート株式会社及び株式会社アコレが合併して誕生し、平成12年に現在の商号に変更した。

　事業内容としては、スーパーマーケットを、三重県を中心とする東海地方で展開している。大株主としてイオン株式会社が50％以上を保有しており、平成17年12月5日現在で63店舗を三重県・愛知県・滋賀県にて展開している。
 

松坂中央店

2. 障害者雇用の経緯

　障害者雇用については、フレックス株式会社時代に取り組んでおり（当時の雇用率は約1.6％）、合併後もその流れが変わることなく平成17年6月現在の雇用率は3.08％である。

　当社は『お客様を原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する』というイオンの基本理念、そして『お客様』『地域社会』『株主様』『お取引様』『働く仲間』という5つの「社会のお役に立つ」ことを喜びとするマックスバリュ中部の「私達の理念」に基づき、事業活動を行っている。

　このうち障害者雇用に関しては『社会のお役に立つ』が理念として合致しており、この理念に対して積極的に取り組むことが必要である、という考えが企業風土としてある。また、当社の社長が社団法人三重県障害者雇用促進協会の理事であったことも、障害者雇用率達成の一つの動機付けとなっている。店舗における具体的な障害者雇用の目安として、従業員100人以上の規模に対し1人以上の雇用を割り当てている。

3. 具体的な取り組み

　当社の障害者雇用率の達成要因として以下の取り組みがあげられる。
 

（1）実習の受け入れ

　福祉施設からの職場体験の受け入れや養護学校からの依頼に対しほぼ100％受け入れている実績があり、それを各店舗に業務上の使命として位置付けている。

　配属を検討する店舗に2週間の実習を2回実施し、当該店舗において従業員の受け入れ体制を整える時間をとっている。併せて障害のある人にとっても、職場の雰囲気を体感することができることに加え、常に従業員が隣につき作業する中で、自身の勤務状況をイメージしやすくしている。この店舗における実習は、人事部を通して各店舗に振り分け、実習中の態度や能力を各店舗の店長と人事部で調整した後に、職安を通して採用をしている。実習を通して採用する割合は全体の3分の2であり、1年以内の離職率は合併後の平成12年以降は1名である。

　採用に際しては、職業としての適性があるか、挨拶ができるか、真面目に仕事に取り組むか、体力があるか、が判断の目安としており、合計4週間の実習を通して各店舗の店長による判断と人事部との調整で決定する。また、一般採用後に障害を自己申告した社員や、中途の内部障害のある社員が勤務している。
 

（2）採用後の取り組み

　障害のある従業員については、他の従業員と同様の扱いをしている。

　パート・アルバイトには職務給があり、評価1～5段階で技術認定を受けた後に昇給する。

　正規職員は昇級試験を受けて昇給をする。この昇給に関しては、4月と10月に半期に1度、各店舗で全従業員を対象とした面談を通して各従業員の評価を行っている、また、7月と12月にその評価結果を各従業員にフィードバックするための面談を実施している。各店舗の責任者と直接話をする時間と機会を設けることは、自分の意見を伝えることが困難な知的障害のある従業員にとって職場定着の一つの要因となっている。

　トレーニングは基本的に業務遂行上最も適していると考えているOJTで行っているが、一度、従業員の能力が一定レベルになかったことから、三重障害者職業センターの職域開発援助事業（現在は「ジョブコーチ制度」に移行）を活用し、生活支援パートナー（現在は「ジョブコーチ」に移行）の支援を受けた。
 

（3）設備の設置

　当社本部のトイレを障害対応に改修したり、階段に昇降装置を設置するために、第1種作業施設設置等助成金を活用した。各店舗についてはまだ、ハード面のバリアフリーが不十分であるかもしれないが配属の時点で考慮をしているため、早急に対応しなければならない状況ではない。なお、助成金活用は一つのきっかけではあるが、助成金があるから障害者雇用をしているわけではない。当社が掲げている理念を達成する為の手段として助成金を活用し、障害者雇用を継続をしていくことについては事業所内で意識の統一や相互に協力することのほうがより重要である。
 

トイレを改修

階段昇降機を設置

（4）余暇活動等

　余暇活動や退社後のレクリエーション等については、基本的には事業所として関与しない立場をとっているが、グットライフクラブという組合に加入している従業員は、他の従業員とともに福利厚生を受けている。
 

（5）職場内におけるフォロー

　各店舗における障害のある従業員の採用人数が多くても2人程度であるが、できることはすべて自己責任のもとに実施してもらい、できないところをフォローしている。従業員は採用前実習を通して、彼らを理解する時間があり、一緒に行動し、作業する中で理解している。彼らに差別的な対応をする従業員に対しては個別に指導し、改めて対応の仕方を考えてもらうようにしている。

　障害のある従業員のAさんは、「職場ではパソコンの入力作業をしており、楽しく働いています。チームの中では分からないことはすぐに聴く事ができる環境です。」と語る。後輩で希望する人がいれば是非当社紹介をしたいほど働きやすい環境に満足している。将来的には今の上司のようなマネージャーになり、障害者雇用の調整を行いたい、と希望する。

4. 取り組みの効果と今後の展望

　障害者雇用に取り組んだ効果としては、事業所本部と各店舗間において、全従業員が企業理念・行動規範である『地域の暮らしに根ざし、地域社会に貢献し続ける企業集団』、つまり社会貢献を理解できていることが最も大きい。

　今後の課題は、各店舗におけるバリアフリーと、現在は受け入れを見送っている精神障害のある人の受け入れをどのようにするかであり、必要に応じて順次対応していく。また雇用の拡大については、新規で展開する店舗についても既存の店舗同様に対応していく。

　当社の障害者雇用が定着している事の要因としては、企業風土と実習の受け入れがある。企業風土については企業理念や行動規範を全従業員が理解し実践していることが挙げられ、また、実習を受け入れることにより、個々の障害のある人に対して各店舗の従業員が理解する時間を十分設けることができる。これら2つの要因がマッチしていることが、当社の法定雇用率を大きく上回る雇用率を達成することにつながっている。

執筆者：学校法人大原学園　大原医療秘書福祉専門学校梅田校 専任教員