事業所名

住友電工プリントサーキット株式会社

所在地

滋賀県甲賀市

事業内容

携帯電話、スマートフォン、コンピューター本体・周辺機器等用フレキシブルプリント回路（FPC）の開発、試作、製造事業

従業員数

466名

うち障害者数

9名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害
聴覚・言語障害	1	一般製造
肢体不自由	2	CADオペレーター、一般製造
内部障害	1	一般製造
知的障害	5	プリント基板製造（CL貼り合わせ、検査）
精神障害
発達障害
高次脳機能障害
難病等その他の障害

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の理念
3. 障害者雇用の状況
4. 具体的な取り組み
5. まとめ

事業所外観

※本事例の各種データについては、2014年6月時点となっています。

1. 事業所の概要

　当社は、住友電気工業株式会社のフレキシブルプリント回路（FPC）事業を拡充するため、平成2年、住友電工のFPC生産子会社として、滋賀県甲賀郡石部町（現・湖南市）に「住電サーキット株式会社」を設立（現・住友電工プリントサーキット株式会社石部事業所）。次いで平成12年、住友電工のFPC事業を分離・独立させ、「住友電工プリントサーキット株式会社」として、甲賀郡水口町（現・甲賀市）に水口事業所の設立を加え、同事業を集約・発足した。

　現在当社では、水口事業所でFPCの試作・開発・生産を、石部事業所で生産をそれぞれ行う体制としている。

　当社の生産品であるFPCとは、絶縁フィルム上に銅箔の電気回路を形成した配線材料で、その主な用途は携帯電話、スマートフォン、コンピューター本体や周辺機器、OA機器、ゲーム機などあらゆる電子機器に利用されている。

2. 障害者雇用の理念

　当社の障害者雇用率が2.58％（平成26年6月現在）に達する背景をなす障害者雇用の理念の源は、当社創立の母体たる住友電工における障害者雇用の積極的取り組みにある。

　住友電工では全社挙げて障害者を積極的に雇用する実績があり、その理念が同社を母体として設立された当社に受け継がれている。

3. 障害者雇用の状況

　当社における障害者雇用の現状は、水口事業所・石部事業所の2事業所を合計した全社計で、対象常用雇用者数は、平成26年6月現在で計466人、うち障害者数は9人（雇用上は8人～身体障害者は重度（車いす使用）1人、重度以外2人。知的障害者は重度以外5人）であり、雇用率は2.58％（平成26年6月現在）である。

　障害のある従業員の配置は、水口事業所では障害者4人（うち重度身体障害者1人、重度以外身体障害者1人、知的障害者2人）、石部事業所では5人（うち身体障害者2人、知的障害者3人）が勤務している。

　雇用状況は、次表のとおり。

表　障害者の個別就労状況

4. 具体的な取り組み

（1）重度身体障害（水口事業所）

①当事業所では、FPCの試作・開発・生産事業を行っており、CADによる設計作業が不可欠となっている。同部門へは、高校卒業後、愛知障害者職業能力開発校システム設計科にて訓練を受講した男性の車いす使用者1人を、平成14年4月に開始したトライアル雇用を経て、同年7月（当時21歳）に嘱託として採用した。
 

②採用後、その作業環境を整えるため、通勤用マイカー使用のための駐車場を設定、玄関と出入口を自動化（以上、障害者作業施設設置等助成金を利用）、また、社内で1カ所設置している来客用専用トイレの使用、業務用エレベーターの使用について特例の承認を行うなど便宜を図っている。
 

事務所へ通じる自動ドアをリモコンを使って操作

③嘱託として採用後3年を経過した平成17年9月、本人及び家族から正社員への登用についての要望受けた。検討の結果、本人の作業面の評価においては、CADによる業務処理作業レベルが、車いすの使用や手指に障害がある身体状況のため、他の同種作業従事者の作業レベルよりも若干低位にあることは否めないが、半面、仕事に取り組む姿勢いわゆる情意面においては、正社員に求められる要件すなわち嘱託での勤務に比べ、より高い業務処理レベルと責任、ロイヤリティを要することを理解、認識し、かつその意欲を持続しうると現場責任者はじめ事業所が判断し、正社員に登用するに至った。
 

（2）知的障害（石部事業所）

①当事業所における知的障害者の職務については、クリーンルーム内で電気回路をプリントしてある基板の上に絶縁フィルムを手で位置合わせをしながら、定められた位置に貼る仕事（「貼り合わせ」）を、それぞれ一人で担当させている。貼り合わせは、定型的反復作業であるが、机上の軸受けに合わせてセットすることで貼り合わせる位置にズレが生じないよう配慮しているため通常不良品は発生しない。また、当初は作業効率あるいは生産性において経験者とは差が生じるが、彼らの作業習熟の速度と正確性は、障害のない従業員の平均的作業量と比べて遜色なく、かつ不良品の発生はほとんどみられない。

　また、より難度の高い作業を自ら進んで経験しステップアップしようとする意欲が感じられる従業員も見られる。
 

②職場配置の手法については、彼らは障害者福祉施設や養護学校等からの依頼による職場実習を経て採用しているが、この職場実習において遂行可能と思われる幾つかの作業を経験させ、当初の作業内容の遂行力とより難度の高い作業への志向の程度を班長が観察した上で、彼らの特性を見極め、適応できる仕事を調整する手法を取っている。

5. まとめ

　当社の各事業所における障害者雇用の取り組みについて以下にまとめる。

（1）重度身体障害に対する取り組み

　採用に至るまでに、障害者職業訓練校 → トライアル雇用 → 嘱託採用 → 正社員登用というステップを設けることで、当社の障害者雇用の理念が各機関の連携によって結実しており、また、今後一段と重要な課題となりうる障害者の業務処理レベルの一部が他の従業員一般のレベルに比べ低位にある時の昇進管理は、当社の障害者雇用の理念から今後に向けての一つの可能性を示していると言える。

（2）知的障害に対する取り組み

　彼らのなかには、職務遂行力の向上や、特に軽度障害者において上向志向の高まりが一層明らかに見られることもあり、適職が簡単な反復作業である固定観念は必ずしも実情にそぐわない状況も起こりうる中、当社の職場実習は、本人に就業の可能性について実際の作業を通じて確かめ、意欲を喚起させるのはもとより、受入れ事業所としては就職への可能性の見極めに加え、より難度の高い実習作業に順次従事させることにより、彼らの特性や配置可能な複数の作業群の展望が可能となる。