ITをツールとした技術力のある障害者を雇用
- 事業所名
- 株式会社スマートバリュー
- 所在地
- 大阪府堺市
- 事業内容
- 地域情報化関連ソリューションの提供、オブジェクト指向型開発、Webデザイン、ネットワークシステムの運用管理、公共iDCを活用したISPサービス・MSPサービス
- 従業員数
- 17名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 1 サーバーの構築、メンテナンス業務 聴覚障害 0 肢体不自由 1 システム開発業務 内部障害 0 知的障害 0 精神障害 0 - 目次
![]() 事業所外観 |
1.事業所の概要
(1)事業の内容
ベンチャー企業を育成・支援するインキュベート施設である、さかい新産業創造センター内にオフィスを構える当社は、平成8年4月に株式会社堺電機製作所のIP技術部門として設立された。創業以来一貫してインターネットに関連した技術とノウハウの蓄積を進め、その資源を活かして顧客の価値を創造することを事業の根幹としている。
主な事業の内容としては、①地域情報化関連ソリューションの提供 、②オブジェクト指向型開発(Java/.net)、③Webデザイン、④ネットワークシステムの運用管理 、⑤公共iDCを活用した、ISPサービス・MSPサービス、等の情報化ソリューションを提供している。
(2)経営方針
現在推進している「地域情報化ソリューション」の幅をさらに広げ、関西圏から全国への展開を目指している。
以下、社長の考えであるが、「全ての働くという行為は、付加価値要素の追求として収益の最大化のために実践される。この会社では社員に長く働いてもらいたいと願っており、年齢と共に、苦労の中で成長を勝ち取り、より人間力が向上することを求めている。ここでは、年齢給制度ではなく、能力成果評価の結果を報酬に反映している。会社自体は、安定的な高収益体質を常に目標とし実践していくが、IT業界において、安定とはイノベーションの連続であることは明白である。精神と生活基盤の安定の中で、不要な心配事を取り払い、深みのある落ち着きの中から、常に新たなチャレンジを実践できる環境を構成し、新たな価値を見出し続けることが、働くモチベーションになればと考えている。働く中で、飛躍的に能力が向上する人は、必ず人間力の成長が付随しており、成長こそが、自身の価値向上及びパーソナル・ブランディングの形成であると考え、その集合体として長く仕事を続けることができればと思う。また、当社は地域において大切な会社として成長することを望んでいる。事業そのものではなく、組織として地域に根ざし、雇用を継続し、生活基盤と共に社会基盤の形成に少しでも役立てることが、私たちの使命であり、社会貢献であると考える。この社会貢献により、当社が大切に考える地域に少しでも良い影響を及ぼすことができれば、それが転じて当社が事業を長く継続させることができると信じている。」
(3)組織構成
社長以下、技術者集団として17人が情報化ソリューション業務に従事している。企業体としての組織は、“小さく”、“しなやかに強く”、“持久力”のある組織をモットーにしている。また、組織マネジメントとして、「言い訳のできない組織」とするため、「透明性と権限委譲」をコアポリシーとして、責任の明確化と権限の付与、及び適正な範囲の業務分掌をしっかりと実践したいと考えている。
(4)障害者雇用の理念
さかい新産業創造センター自体がバリアフリーの設計であり、物理的なバリアーは存在しない。その背景には、インキュベーション施設の設計段階から事業所として関わっており、ハード面での障害のある人への受け入れ体制を主体的に整備してきたという経緯がある。しかしながら、その場所へ移転する以前から障害のある人を雇用しており、業務を遂行するうえで有能な人、技術力がある人に関しては、受け入れは当然であり、それに関する支援は惜しまない、また支援という枠組みではなく自然体でのアプローチがなされている。
2. 障害者雇用の経緯、背景
現在、当社は障害のある人を2人雇用している。1人は全盲のAさんで、プログラム開発やネットワーク関連業務(サーバー構築、サーバー管理業務)に携わっている。Aさんは、職業能力開発施設を修了した後、数社の会社勤めを経て、当社が地域ISP事業としてサクラネットを立ち上げたときにネットワークの関連業務を手伝ったことがきっかけとなり、平成13年に雇用された。
脊髄損傷で車いすを使用するBさんは、職業能力開発施設でシステムエンジニアを目指していたが、指導員からの紹介でAさんが当社で働いていることを知り、駐車場や身障者用トイレ設備など、自分が働く上で必要な設備が満たされていることを確認した後、当社にアプローチし就職試験を受けた。就職の話が進んでいく中で、当社が、2階建ての建物の2階でエレベーターや身障者用トイレ等の設備がない場所へ移転するが、その2年後には現在建築中のバリアフリーの建物(現社屋)に移転する計画を知った。
当社は「設備が整えば雇用する」という話に進み、彼が通っていた職業能力開発施設と設備改造についての打ち合わせを何度か行った。結局費用負担の問題と2年後には再移転する理由で、設備改造はしないことにしたが、Bさんの能力を評価し雇用を決めた。
当初、次の移転までは在宅雇用を考えたが、Bさんから仕事を早く覚えるため出勤の希望が出たことに対し、エレベーターを設置する代わりに人海戦術で階段昇降を援助することとし、トイレに関しては車いすでアクセスできるよう社員が改造することで受け入れ準備を行った。現社屋に移転までの約2年間、車いすの昇降の援助を行った。現在Bさんは、設備の整ったオフィスで他の社員に気兼ねすることなくシステム開発業務に携わっている。
3.取り組みの内容
(1)視覚障害に対する取り組み(Aさんの就業環境)
パソコンを利用してサーバー構築、管理業務を実施している。
パソコンの画面を音声化する環境として、MMエディタ、MMメール、秀Term音声化プラグイン等を利用している。
業務内容はコマンドライン(主にUNIX系)での作業が多いため、パソコンの音声をヘッドフォンで聞きながら作業することで困ることはない。
紙原稿は電子化し、業務上の指示や連絡ではメールを上手く活用することによって、支障なく業務遂行ができる。

(2)肢体不自由に対する取り組み(Bさんの就業環境)
パソコンを利用してシステム開発業務に従事している。
バリアフリー設計の職場における設備上の配慮は、車いすが入る高さのOA机を利用している程度である。
顧客先へ出向いて打合せすることはないが、電話対応などで顧客対応を行い業務に反映させている。

(3)活用した制度や助成金
Aさんの雇用に際し、重度障害者介助等助成金を活用し、重度視覚障害者の業務遂行のために必要な職場介助者を配置している。
4. 障害のある社員のコメント
当社での勤務にあたって、特に困ったり問題となることはないとのこと。働く上での意識については次のように語る。
「情報産業は、日進月歩で技術革新が行われており、技術的変化に対応すべく業務を遂行し、バリエーションのあるいろんな仕事を任されている。技術動向を見据えながら、当然その変化に対応するために自己のスキルを高めていくことが要求される環境にある。この会社は、規模的に大きすぎないというメリットとして、多面的に業務を捉えて遂行する必要があり、仕事を一通りの流れの中で、完結した形として任せてもらえる。そこで責任も発生するし、業務をこなしていくための知識も必然的に必要となってくる。
また、給与は年棒制であり、実績に応じて半年更新といった非常に厳しく、有能な社員にとっては、自分の貢献度を即座に反映してもらえる制度を採用してもらっている。このような環境に身をおいて働くことは、自分の好きな分野で仕事をしているといった側面も必要であるが、働くことで得られる貢献度や対価を切実に感じながら業務を遂行している緊迫感がある。また、ハードな業務であり、体調管理の面で気を遣うこともあるが、意欲的に業務を進めることのできる環境が精神面の維持にも役立っている。」
5. 障害者雇用のメリット
社員は、人海戦術で車いすを介助したりするなかで、自然と彼らと共に働く環境をつくってきた。社長の「特に何もしていない。打ち上げや飲み会で車いすの入れる店を探したり、担いだりするだけ。」との言葉に、有能な人を受け入れ共に仕事をしていくのは当り前という姿勢が感じられる。
また当社の事業については、W3C Web Accessibility Initiative(W3Cウェブ アクセシビリティ イニシアチブ)がまとめたガイドライン、及び、平成16年6月に制定されたWebコンテンツのアクセシビリティに関する規格「JIS X 8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3部:Webコンテンツ」に基づき、障害者や高齢者の方にも閲覧しやすい、アクセシブルなWebサイト作りに配慮したWebサイト制作を業務メニューとして実施している。これは、障害のある人が共に働き、必要とされる情報提供の方法を正当に認めてもらえるといった点での強みがあり、業務を実施する上で対外的なメリットも充分ある。
6. まとめ
就業環境さえ整えば、本人の持つ専門的な知識や能力を活かし、ITをツールとして働くことが可能である。技術革新の凄まじい環境に身を置きながらも、自分の好きな分野で働くことで収入を得ることのできる環境が当社にある。本人の能力だけではなく事業所が自然な受け入れ体制を構築することで、彼らが気兼ねなく自己実現ができるという部分が多分にある。
また、IT業界では技術動向を見据えて、自己研鑽によるスキルアップが求められる場合が多いが、当社では自主的な勉強会を実施し、コミュニケーションをとりながら業務の取り組みについて指導し、仕事を見守る仲間が勤務している。
当社には、障害のあるなしではなく共に業務を遂行していく社員としての連帯感や企業風土が自然として備わっている一方で、トップはそのような取り組みを意識させず自然体で構えている。社長が語る人間力の向上、人間力の成長を求めることが、当社の環境を自然と創り出せることに繋がっている。
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