事業所名

株式会社呉竹

所在地

奈良県奈良市

事業内容

固形墨・液体墨・筆ぺん・書道用品・絵画用品その他の事務用品の製造販売

従業員数

248名

うち障害者数

4名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	4	墨液製造補助、ラベリング、商品の仕分け
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯と現況
3. 取り組みの内容
4. まとめ

事業所外観

1. 事業所の概要

　当社は、明治35年に創業、昭和15年に株式会社呉竹精昇堂の社名を付けて以来60年を越え奈良県にて社業を展開している。固形墨から始まり液体墨を開発し、昭和50年代には海外展開し、独自の技術を持つ筆記具メーカーとして発展の歴史を刻んできている。平成4年に市内の旧本社から経営拠点を移転し、平成14年10月1日に創立100周年を迎え、CI（Corporate Identity）の考え方を導入、平成15年に現社名に変更した。レンガ色の落ち着きのある社屋は、いかにも日本古来の墨や筆など伝統的な製品を扱っている雰囲気を持っている。

　当社の経営理念は、次の一文で表現されている。「呉竹は品質第一主義を持って良い品を安く豊富に供給し、企業の繁栄を図り、社会の福祉に貢献する。」

　当社の業務について、大きく墨の製造と筆ぺんを含む各種のペン類の生産に分けられる。液体墨の製造は機械化され、年間を通して製造している。日産は30000本～42000本で、種類は500になる。固形墨は毎年10月初頭から翌年の5月上旬頃までの時期に製造する。固形墨は成型と乾燥に加え、個々の製品に職人が手作業で彫刻や磨きを行っている。
 

当社製品

2. 障害者雇用の経緯と現況

　伝統ある事業所であるため従業員の平均年齢は高く、保守的なイメージが持たれやすい一方で、当社の社員の平均年齢は、男女とも約35歳であり、自由で闊達な社風が感じられる。

　障害者雇用は、既に10数年以前から取り組んでおり、10年以上勤続している社員は3人で、その間、障害者の離職は一度も起きていない。

　平成3年から3年連続で知的障害者を採用し、平成12年には更に1人を雇用、現在合計4人の知的障害の社員が勤務している。うち正社員での雇用が3人、パートタイムでの雇用が1人となっている。

3. 取り組みの内容

　当社は、総務部を中心とした職場定着のための推進体制を整えている。勤務時間は8時30分から17時30分までのフルタイム勤務で、勤務時間や賃金、休暇などの労働条件は障害のない社員と全く差がなく、安心して継続勤務できる体制をとっている。

　障害者雇用において留意している点は、過重な目標は設けないということ。大きすぎる負荷は心と体のバランスを失わせる要因になりかねず、働くことに経済的な意味があっても、リラックスして仕事に取り組めるような環境づくりが大切と考えている。

　また当社では、従業員全員が終日、一つの流れの中で動いている。本社工場で働く知的障害のあるAさんも、機器を使用した墨液づくりの一連の作業の中で全く他の従業員と変わりなく仕事をこなしている。職場では皆が働く仲間で、思い込みや先入観も入る余地は見られない。社員の平均年齢が若いということが、良い職場環境を生んでいると言える。

　本社工場のそばに設置しているペン工場兼出荷仕分け部門では、出荷の際のラベリングと商品の仕分けに3人が従事している。手作業が主となるが作業スピードは非常に速く、作業を継続してきた成果がよく表れており、非常に重要な戦力となっている。

　設備面での特別な工夫や、彼らを支援する特別の決まりごとを設けていないことが、彼らに負担感を持たせず離職を防止し長期雇用を実現している大きな要因の一つとなっている。

出荷仕分け部門での作業

4. まとめ

　当社が毎月発行する社内報「やわらぎ」の第315号に、当社主催の第9回絵てがみコンテストについての記事が掲載された。記事の中で“絵てがみのポイント”は、第一に“真心”が取り上げられている。人を雇用するということは、単に労働力と賃金のやり取りではない。人と人との交流を通じてどのような立場の人であれ、自分を表現し自分を実現していく場こそ、“真心”のある職場であるというのが、創業100年を超えて培われてきた伝統が意味しているところである。

　当社では、障害者も健常者も安心をして長く働ける職場環境を更に培っていくことが、過去100年と未来100年の架け橋であり、大きな目標となっている。