"ヤル気"と"責任感"を持たせ知的障害者の戦力化を図る
- 事業所名
- 株式会社丸和
- 所在地
- 和歌山県和歌山市
- 事業内容
- 病院、福祉施設、ホテル、レストラン等のリネンサプライ、レンタル及び販売・クリーニング全般
- 従業員数
- 95名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 7 洗濯品の事前仕分け作業、洗濯後の仕上げ作業 精神障害 0 - 目次
1.事業所の概要
(1)概要
株式会社丸和は、和歌山に本拠を置く病院、福祉施設、ホテル、レストランなどのリネンサプライを中心に、レンタルや販売、クリーニングなどを行うトータルリネンサプライ業を行っている。商圏は近畿一円に広がっており、近年ではリネンサプライ技術を活用してのホテル運営や、パリの三ツ星レストランの有名シェフを招致してフランスレストランの経営を行うなど、成長型の社会貢献企業として地域に貢献している。
(2)障害者雇用状況
現在当社は、社員95人のうち知的障害者を7人雇用している。彼らの平均年齢は約26歳で、40歳が最年長である。
定着率については、7人中5人が5年以上勤続しており、うち1人は在職中に結婚し、子を設け、自立した生活を送っている。
彼らの担当業務は、病院の医師・看護師などが着用する白衣を対象とする洗濯工場及び病院リネンを対象とする洗濯工場における洗濯品の事前仕訳作業や洗濯後の仕上作業である。

(工場は本社と隣接している)
2. 障害者雇用の経緯、背景
「思いは人へ、環境へ。」というキャッチフレーズのもと、トータルリネンサプライ企業として人と地球に優しい商品の提供を心がける当社は、障害者雇用の分野に対しても積極的に取り組む。
平成6年には和歌山県の指導のもと、社会福祉法人「桃の木会」の設立に携わり、一般企業に就労の機会が少ない障害者の雇用の場を提供する施設として、知的障害者福祉工場「マルワック」、また、継続就労が見込まれる障害者に対して生活の場を提供し自立促進を促す施設として、知的障害者福祉ホーム「ローズ桃山」をそれぞれ設置した。現在でも、当社はマルワックに対しホテルでのリネン品の洗濯を委託するなど密接な協力関係にある。
まだ企業規模が小さな頃から障害者とともに作業を行ってきた経営者は、苦労を共有してきた経験を持ち障害者雇用にとても積極的である。事業所が大きく成長した今でも、「会社が社会に対して少しでも利益還元ができるよう責任を果たす」という経営者の考えが社内に息づき、障害者・健常者の区別のない企業風土が徹底されている。
3.取り組みの内容
(1)健常者と分け隔てなく扱う
彼らの作業環境を含め、全社的に効率性を高めるために大幅な機械化がなされており、どうしても人の手を要する作業だけは社員が手作業で行っている。彼らにもこの作業の一部を分担しているが、社内で少数の障害者が活き活きと作業できる環境を維持するために、彼らに特別な配慮は行っておらず一人の社員として等しく接している。
(2)白衣の洗濯工場での取り組み
彼らは衣類を乾燥機から取り出し(写真①)、丁寧に折りたたむ仕上げ作業(写真②)を担当している。大型装置による自動化が進んだ工場内(写真③)で、このようにどうしても手で行わなければならない部分を彼らが担当している。
近畿各地から洗濯衣類が集まり社員全員が忙しく作業する工場内では、お互いの声かけが行き届いている。



(3)病院リネンの洗濯工場での取り組み
彼らは大量に集められたシーツなどのリネンを大型機械が自動的に洗濯できるよう仕分け作業を行っている(写真④)。他の作業場では、障害のない社員とグループで、洗い上ったリネンを自動的に折り畳みプレスする機械に装着する仕上げ作業(写真⑤)も担当している。


(4)関係機関等からのアドバイスを受け適切な対応を図る
直属の上司は就業時間の中での関わりであるため、彼らの悩みに対して適切ではない対応をとり、彼らの勤務意欲を奪ってしまうことが懸念されたため、決して職場内で問題を抱え込まず、彼らを支援してきた家族や保護司、卒業した養護学校などから広く助言やアドバイスが受けられる体制をとっている。
現在の支援内容と過去の支援内容をすり合わせ、より充実した支援を図るとともに、彼らの直属上司はこの助言により適切な対応をとることができ、彼らが働きやすい作業環境を構築することができた。
(5)声かけを増やす
作業内容から、当日の調子、共有できる話や楽しい話題まで、スキンシップを図るよう声かけを絶やさないようにしている。ある程度単純化された作業においては、障害のない社員においても集中力が低下することは否めない状況でのなか、このような簡単な声かけひとつで、彼らに「まわりの同僚が自分に関心を持ってくれている」という意識を持たせることや、彼ら自身に自然に自覚を促すことができている。当社の障害者定着率が高いのも声かけが基本となっている部分が大きく、現在では7人とも欠勤がほとんどない状況である。

(6)作業指導を積極的に行う
また彼らの直属の上司に対しては、積極的にできる限り早い時期に集中的な作業指導を行うよう指示している。採用当初に適切な作業方法を繰り返し伝え、実際に行わせてみることにより、適切な作業方法を体に記憶させ、彼らが作業に対し過度に負担を感じることのないよう習熟することを可能にしている。障害者の育成に重きを置く当社では、直属の上司が障害者雇用や労務管理などの研修を受けることを優先させている。
(7)担当作業を任せる
病院リネンの洗濯品の事前仕分け作業(写真④)は、彼らに全面的に任せている。当日の作業担当が休む場合は、交代で他の部署から応援を呼ぶことで、彼らに自分で作業管理を行わせて意欲と責任感を持ってもらうことを目的としている。交代要員として洗濯品の事前仕分け作業にあたる障害者も、別の作業工程においてチームの一員として信頼を置かれており(写真⑤)、いずれの現場でも彼らは一人の社員として必要とされている環境になっている。
(8)待遇は健常者と同じが基本
当社に無くてはならない社員となった彼らの実力に応じ給料を支給するほか、始業・終業・休憩時間・有給休暇取得などにおいても、障害のない社員と同じ就業規則や待遇を適用し、同様に規律を遵守するよう労務管理もなされている。
4. 障害者雇用による効果
障害者雇用に前向きな経営者の考えが浸透された企業風土のなか、「障害者を障害者として扱わず、ひとりの社員としてみていく」姿勢が社員全員に徹底されている。また、設立母体となった社会福祉法人「桃の木会」との交流も活発である。
取引のある企業からは、障害者雇用と業績の向上の両方を獲得できている企業として、大いに企業ブランドの価値が向上し、信用度が高まっている。
5. 今後の課題と展望
現在、若年労働力の減少に恒常的に悩まされつつある状況のなか、当社では今後も積極的な障害者雇用を打ち出していくことにより、良質な労働力としての障害者の育成・戦力化を考えている。長い障害者雇用の経験により企業が社会に対し責任を果たし、また企業の発展をも可能とするノウハウを既に当社は蓄積している。
具体的な障害者雇用計画としては、今後は養護学校とのパイプをさらに太く保ち、新卒を定期的に採用できる体制を取りたいとの希望を持っている。これは、障害者を自社で適切に育成し、少しでも長く働いてもらいたいという長期的な視点が背景にある。
職域開発においては、現在の業務の他にも代替可能な職務を検討できる余地は残されており、今後社員全体に対し障害者の割合が増す可能性は高まる。
当社は、平成18年6月に社会福祉法人「桃の木会」のある和歌山市近郊の桃山地区に新工場を完成させ、製造キャパシティの増大を実現する計画である。知的障害者福祉工場「マルワック」や知的障害者福祉ホーム「ローズ桃山」も近くに所在するので、業務面において「マルワック」とのコラボレーションから付加価値を創りだすことも可能となるほか、「ローズ桃山」から新工場に勤務する社員も将来的に出てくることが予想される。
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