職場実習を契機に障害者雇用に取り組む
- 事業所名
- 大山乳業農業協同組合
- 所在地
- 鳥取県東伯郡琴浦町
- 事業内容
- 酪農生産のための指導事業、生産資材を斡旋販売する購買事業及び生乳の処理・加工、販売事業
- 従業員数
- 463名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 2 伝票作成他窓口業務。
ダンボール組み立て作業。内部障害 3 レストラン厨房チーフ。
菓子製造時の原料準備。
菓子の箱入れ作業。知的障害 2 牛乳瓶種類別選抜作業 精神障害 0 - 目次
![]() 事業所外観 |
1. 事業所の概要
本所及び本所工場は鳥取県中部のやや西よりの大山山麓に位置している。
本所工場は市乳(市販の牛乳)、加工乳、菓子等を製造し、鳥取市に販売部の鳥取支所、米子市に指導業務を行う米子支所がある。大山の麓には、自然と畜産とがおりなす共生地域としてふれあい体験施設「大山まきば」がある。
昭和21年に32人の酪農民が任意組合を設立し、現在地に約50m2の処理加工施設を建設、市乳、バター、乳飲料の販売を開始した。昭和41年に美保、東部酪農と合併し現在の「大山乳業農業協同組合」となった。県内の酪農生産者は全員組合員となり、大同団結が完結し、名実共に鳥取県の酪農生産者団体となった。
構成は、正組合員296人、准組合員1,009人。乳牛飼養頭数11,488頭で平均頭数46.7頭と全国平均より規模が小さい。平成16年には、他業者も含め県内の処理工場は本所の新工場1箇所になり、全額農民資本による1県1生産組織、1処理工場という全国に例のないユニークな存在となった。
2. 障害者雇用の経緯と状況
平成9年度以降、障害者の中途退職や定年退職があったことから、平成14年度には法定雇用率が0.68%まで低下したため、公共職業安定所から障害者雇用について要請があり、組合として障害者の雇用について検討することとなった。
年度 | 障害者雇用率 | 障害者総数 ( )内は重度 | 障害者 新規採用数 |
平成8年 | 1.66% | 5(2) | |
平成9年 | 1.46% | 4(1) | 1 |
平成10年 | 1.16% | 5(1) | |
平成11年 | 1.15% | 4(1) | |
平成12年 | 1.16% | 4(1) | |
平成13年 | 1.39% | 4(1) | |
平成14年 | 0.68% | 3 | 2 |
平成15年 | 0.65% | 3 | 1(1) |
平成16年 | 1.12% | 4(1) | 2(1) |
平成17年 | 2.177% | 7(3) | 1(1) |
3.取り組みの内容
(1)職場実習の受け入れに係る経緯と内容
平成14年度に、雇用経験が乏しかった知的障害者の職場実習の受け入れについて養護学校から依頼を受け、知的障害者雇用ノウハウの蓄積と障害者雇用の改善を図るため、雇用も検討することとして実習を受け入れた。
1)受け入れ体制の整備
過去に1人の知的障害者を雇用したが、充分な対応ができず退職に至った反省から、総務部長を中心に現場の課長・職員からなるプロジェクトチームを立ち上げた。
①業務 : 販売店から回収した牛乳瓶の種類別選別を作業内容とした。
②作業時間 : 学校と協議し、一般の就業時間に即し8時~17時とした。
③作業指導者 : 過去に知的障害者の作業支援の経験がある職員を含めた2人の職員で個別支援を行う体制を作った。また、指導者が適宜養護学校の担当教諭と連絡を取り合えるよう余裕のある勤務態勢を設けた。
④支援内容 : 作業手順と併せ、あいさつ等の生活習慣も重要との認識から支援の対象とした。
2)職場実習の結果
①作業は、知的障害者の就労経験がない部門で行われることとなり、暗中模索の取り組みとなったが、課長や作業指導者が焦らず少しずつ、ゆっくりと繰り返し指導したことにより、実習生に作業への慣れや意欲が現れてきた。
②作業内容が実習生の職業適性に合っていた。
③生活習慣の指導として「おはよう」「おつかれさん」等の日常的な声かけにも努めたことにより、実習生の緊張感もほぐれ、職場への適応や意欲を引き出すことができた。
④同級生で同じ町内に住む実習生を同じ部門に配置したことで安心感と競争心が見られた。


職場実習後の懇談で、実習生から「ここで働きたい」との強い意欲が確認された。現場の課長からも、作業の質も高く、出退時も大きな声で挨拶ができるといった生活習慣の全般を含めて高い評価があり、養護学校と協議の上、採用を決定した。
この職場実習を通じた雇用が、再度障害者雇用について理解を深める契機となり、以降、心臓機能障害者、上肢・下肢・体幹機能障害者、腎臓機能障害者を雇用した結果、平成17年度には障害者雇用率が2.17%となった。
(2)職場配置と配慮事項
障害の種類 | 年齢 | 勤続年数 | 従事している業務、配慮事項 |
下肢機能障害者 (4級) |
54 | 15年 | 伝票作成・製品渡し等の窓口業務。 肉体的な労働には多少困難があるので事務系の職場に配置。 重い物を持ったり、長時間の立作業がないよう配慮 |
知的障害者(B) | 22 | 3年 | 販売店から戻った牛乳瓶の種類別選別作業。 複雑な内容の業務をこなすのは困難なため、単調で、身体を動かす業務に配置。 |
知的障害者(B) | 22 | 3年 | 〃 〃 知的障害者2名は、同級生で同じ町内なので、出勤も作業も一緒に行動している。 |
心臓機能障害者 (1級) |
57 | 2年 | シュークリームの製造前に原料を種類ごとに計量し準備する作業。 人工弁を使用しているため、重労働がないよう配慮。 |
上肢・下肢・体幹機能障害者(5級) | 41 | 1年 | アイスクリームを箱詰めするダンボールの組立作業。 握力が弱いため、製品を持っての箱詰め、重い物を持つことのないよう配慮。 |
腎臓機能障害者 (1級) |
49 | 1年 | 菓子を箱に入れる作業。 長時間の継続作業は困難なため、マイペースで作業が出来るよう最終のラインに配置。 |
腎臓機能障害者 (1級) |
47 | 7年 | 平成17年1月に受障(中途障害者)。 レストラン厨房チーフ。休息時に業務に支障が無いようサブチーフを入れた。 |

(3)職場定着推進チームの設置
昭和61年5月に設置したが、障害者が定着し雇用率も上昇していたことなどから活動は低調であった職場定着推進チームについては、知的障害者の雇用と定着のため、継続的な支援体制が重要であると痛感したことから、職業生活相談員の増員を図り職業生活相談員資格認定講習を受講し強化を図った。
(4) 福利厚生
1)職員間の触れ合いを図るため、運動会、納涼祭にも積極的に参加を促すとともに、関連企業、地域住民と触れ合う場の設定にも努めている。
2)安全衛生、食品衛生等の講演・研修を毎月行っており、職員としての自覚を深めさせるため参加させている。
(5)職場環境の改善
3階の作業現場については、身体障害者を中心とした安全確保のために「障害者作業施設設置等助成金(第1種)」を活用して手すりを設置した。
4. 今後の課題と展望
現在、彼らが勤務している製造部門については、平成16年度に省力化(オートメーション化)した新工場を増設したため、製造部門では以前に比べ労働定員が減少している。このため、酪農指導部・品質管理部・総務部といった各部門に職域の開拓を求めている。
また、建物の老朽化への対策に関して、障害者雇用のためリニューアル(バリアフリー化)も併せて検討する。
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