「共に働き、共に生きる」が基本理念
～充実した福利厚生が障害者が活き活きと働ける職場をつくる～
 事業所外観 |
1.事業所の概要
（1）概要
昭和62年に設立した当社は、飲食店事業3ヶ所（食堂：厨房センター、レストラン、喫茶）を展開するほか、売店事業では日用品・食料品の販売を行っている。また環境整備事業として、ランドリーを中心に、給食・クリーニング品の配達・回収事業のほか、受託による4事業所の清掃（屋内・屋外）事業と事業内容は多岐にわたっている。
（2）設立の経緯
当社の設立のきっかけについて、社会福祉法人旭川荘が運営する知的障害者施設の職員が、障害者を雇用する事業所を探したが見つからなかったことから、ならば自分たちで立ち上げようと、旭川荘の役職員や、友の会梶谷忠二元会長等が出資し設立した。
事業所名は旭川荘の江草安彦理事長が命名。トモニーには「共に働き、共に生きたい」という願いが込められている。
現在は、小野隆重社長が経営している。
2. 障害者雇用状況
当社は、旭川荘利用者に対するサービス提供と共に、重度障害者の雇用を目的としている。
当初は従業員16人（知的障害者4人）でスタートしたが、現在は従業員63人中34人の障害者（うち重度28人）が勤務しており、障害者雇用を目的とした事業所たる役割を果たしている。従業員のうち旭川荘の出身者は少なく、地域に根ざした障害者雇用の受け皿になっている。
1）雇用している障害者34人の内訳
知的障害者 28人（うち重度26人）
肢体不自由者 6人（うち重度2人）
2）各業務に従事する障害者の配置数
①飲食店での調理・盛付け・配膳・喫茶サービス等の業務
知的障害者 9人（うち重度8人）
②売店による日用品・食料品の販売業務、商品陳列、補充、包装等
肢体不自由者 2人（うち重度1人）
知的障害者 3人（うち重度2人）
※地域で行事等があった場合はその開催地に出張し、出店による日用品・食料品の販売にも従事す
る。
③環境整備事業（ランドリー関係のクリーニング品及び給食の配達・回収）
肢体不自由者 1人（重度）
知的障害者 6人（重度）
④受託清掃業務（受託4事業所の屋内・屋外の清掃業務）
肢体不自由者 3人
知的障害者 10人（重度）
3.取り組みの内容
（1）ラジオ体操・朝礼
①ラジオ体操によるウォーミングアップ
当社の一日は、朝7時50分のラジオ体操から始まる。次々に従業員が集まり、音楽が流れ体操が始まる。とにかく元気がよく、第2体操が終わる頃はうっすらと汗が浮かぶ従業員もいる。
②朝礼における指示伝達
体操後、それぞれ部署に就いた従業員に対し、幹部職員が朝礼を行う。
まず、基本的な注意事項をわかりやすく全員に伝える。「笑顔はただでできるサービス、○○さん、笑顔、笑顔」「インフルエンザが流行っているので土日は家でゆっくり休みましょう」など。特に体調に関しては細心の注意を払い、何よりも健康を一番大切に考えている。
最後に全員で「いらっしゃいませ、お待たせしました、ありがとうございます、いつも笑顔のトモニーです、みなさん頑張りましょう」とかけ声を出し、終わりに「よっしゃ」のかけ声と共に、両手を引きつけるガッツポーズが入る。
（2）新人教育としての事業所見学
入社1年目の職員に対しては、他の事業所へ出張し見学を行っている。身だしなみはもちろんのこと、時間に遅れず集合することや見学先での適切な対応について注意を促す。緊張しながら色々なことを経験してもらい一つ一つの体験を大事にしている。
なお出張の時は、その地で一番おいしいものを食べるのが恒例になっている。「体験が大事、いい思いを先にする、先行投資も必要です」と萩原取締役は話す。
（3）自閉症に対する当社独自の取り組み
自閉症のある障害者を多く雇用している当社は、「自閉症の障害者は、毎日きちんと決まった同じ仕事でないとパニックを起こす」という福祉の定説とは逆に、彼らのこだわりを逆に利用して一つの固定化された作業だけでなく、様々な仕事ができるよう養成に取り組んでいる。実際に自閉症の重い障害者が強いこだわりを持ちながらも懸命に働いている。
（4）トモニー方式（ワークシェアリング）による職務遂行
本来健常者が行う職務を細かく分けることにより障害者ができる作業を創出し、障害者に振り分けている。
彼らにできる作業はすべて任せ、健常者は彼らができない作業を行うが、またその中で障害者にできることはないか分析を続ける。このように共に労働を分かち合うことが当社の基本的戦略になっている。
（5）技能向上への取り組み
平成17年岡山県障害者技能競技大会（アビリンピック岡山大会）喫茶サービス部門へ8人が参加し、銀メダルを含む3人が見事入賞した。
（6）福利厚生その他
1）社内行事
新年会の一泊旅行（1月）、日帰りの研修旅行（2月）、花見（4月）、親睦会（8月）、2～3泊の研修旅行（11月）がある。特に11月の研修旅行は、昨年は2泊3日の南九州をグリーン車、一流のホテル、一流の料理を用意し旅行した。
「一流のサービスを体験しないといいサービスができない」という信念に基づき、当社は福利厚生に費用を使う。当社で勤務する障害者のほとんどが給料より行事を楽しみにし、加えて幹部を含め健常者も楽しんでいる。「共に一流の体験を楽しむ」思いが当社を動かす原動力になっている。
2）余暇活動（スポーツへの取り組み）
退勤後は早速ランニングを行う従業員がいる。個々人で各自に合った活動を行っている。また定例の活動もあり、それぞれ希望者が参加している。
【月】 17時から ヨガ愛好会 （女性4人）
【火】 〃 スポーツの日 バレー、サッカー、ランニング等
なお、昨年は日頃の成果を試すため、全国障害者スポーツ大会（岡山国体リハーサル大会）へ参加し、従業員や家族を中心とした大応援団の応援を受け全員健闘した。
3）社内結婚
昨年、厚生専門学校の厨房で働く従業員とレストラン「ゆずりは」で働く従業員が結婚、披露パーティーにはスタッフ全員で2人を祝福した。
4. 今後の展望
当社は、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会の岡山県支部長の他、岡山職親会（精神障害者社会適応訓練事業）にも所属し、今後は身体障害者、知的障害者に加え、精神障害者の雇用にも取り組む意向を示している。
ただ、「トモニーがこれ以上大きくなることより、他の事業所と連携して障害者雇用の拡大を目指している。障害者はゆっくりだが必ず成長することを他の事業所へ伝えたい」と、地域における障害者雇用の促進を強調する。
当社の、福利厚生を楽しみ重度の障害者が誇りを持って働いている姿から、仕事をする上でお金以上に大切なものがあることを教えられる。
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