2005年度作成

事業所名

株式会社広島情報シンフォニー（株式会社中国サンネットの特例子会社）

所在地

広島県広島市

事業内容

情報処理サービス、プロフェショナルサービス、オフィスオートメーションサービス、研究開発

従業員数

147名

うち障害者数

40名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	3	キーオペレータ
肢体不自由	28	管理業務、システムエンジニア、マシンオペレータ
内部障害	8	管理業務、システムエンジニア、カスタマーズエンジニア、キーオペレータ
知的障害	1	清掃、運搬
精神障害	0

目次

1. 特例子会社設立の経緯
2. 取り組みの内容
3. 障害のある役員へのインタビュー
4. 取り組みの効果
5. 今後の課題と展望

事業所外観

1. 特例子会社設立の経緯

　昭和56年から「完全参加と平等」をテーマとして始まった国連障害者の10年を契機として障害者に対する理解が高まるなか、障害者雇用の改善が社会の要請として大きくクローズアップされた。

　こうした時代背景の下、広島県、広島市と株式会社中国サンネットの三者による共同出資により、第3セクター方式による重度障害者多数雇用モデル企業の設立が検討された。

　重度障害者の多数雇用が期待できる業種として、情報処理サービス業を有力候補として関係業界等と協議を重ねた結果、民間セクターの決定をみて第3セクター方式の重度障害者多数雇用企業がスタートすることとし、株式会社中国サンネットの特例子会社として当社が設立された。

　創業時、社員数は障害者16人を含め40人という規模であったが、現在、重度障害者雇用数、業容ともに拡大し、ノーマライゼーションの理念を重度障害者の雇用拡大で具現することにより一定の社会貢献を果たしている。

2.取り組みの内容

（1）理念の明確化

　事業所の性格が第3セクター方式による重度障害者多数雇用企業ということから、重度障害者の雇用促進が経営理念にも謳われるなど、障害者の雇用促進は経営方針の主要な柱となっている。

　この経営理念が職場に具体的に実現するよう、メンタル面でのバリアフリーを目指して社員全員の意識改革を図っている。

　なお、当社の経営方針は、「重度障害者雇用モデル企業として身体障害者の職業的自立を目指し、明日ヘの希望につながる職場を提供し、さらには、人とコンピュータの調和を図り、豊かな地域社会、地域発展への貢献を目指す」としている。
 

（2）ハード面の整備

1）施設改善

・車いす対応エレベーター（1基）

・障害者用緊急避難スロープ（2階及び3階）

・障害者用トイレ（各フロア）

・車いす用出入口引戸（全館出入口）

・車いす用出入口スロープ（全館出入口）

・車いす当たり（全館廊下）

・手摺り（全館廊下、階段）

・健康管理室（1室、ベッド整備）
 

2）その他の設備

・障害者通勤用駐車場（屋根付、14台分）

・聴覚障害者専用データエントリーマシン（ランプ表示機能付）

・パニックボタン（非常事態通報用）
 

3）助成金制度の活用

①重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

②重度障害者通勤対策助成金（住宅の賃借助成金、駐車場の賃借助成金）
 

（3）ソフト面の整備

①カウンセリング

・産業医を配置し、月1回健康相談を実施

・生活相談員の配置、週1回生活相談を実施

②勤務優遇制度

　体調調整を図るため勤務時間内の休息制度を設ける

③コミュニケーション手段の確保

　月1回の全体朝礼の際に、聴覚障害社員用にプロジェクターを使用
 

（4）教育・育成体制

①一般教育（メーカー各種技術教育、OJT教育）

②技術関係教育（産業能率大学による通信教育）

③身体障害者関連教育（聴覚障害者向けパソコン通信教育、ノーマライゼーション教育）
 

（5）福利厚生

①重度身体障害者用の社宅の整備

②クラブ活動

③レクリエーション
 

（6）行政等関係機関との連携

　ハローワークが実施する障害者の合同面接会には積極的に参加し、重度障害者の雇用機会の確保や職域の拡大等に取り組んでいる。また、障害者雇用に係る助成金制度の活用について関係機関の助言を仰ぐ等、行政等関係機関との連携を密にし、重度障害者の継続雇用等に配慮している。

 

3. 障害のある役員へのインタビュー

　　（森孝男取締役企画部長　51歳　身体障害（車いす使用））

Q：入社されたのはいつですか？

A：創立と同時ですから、もう17年になります。

Q：これまで働いておいでになって何か困ったことがありましたか？

A：入社当時、マァ今でも十分とは言えませんが、17年も前といいますとお取引先のほとんどはバイアフリーになってなくて、階段を抱えて上がってもらったことがあります。お客様にお願いするわけですから心苦しかったですね。

Q：なるほど。で、その解決策は？

A：解決策と言えるかどうか、今はお取引先が心得てくださって来社くださることが多いですね。

Q：広島情報シンフォニーのオススメできる点はどんなところでしょう？

A：まず、企業として新しいものへの挑戦志向が強い点ですね。その精神は経営理念に掲げられてもいますが、社員レベルでも資格取得やスキルアップは大いに奨励されています。

　　それから、規模的に見て小回りのきく規模であり、ユーザー密着のいわゆる痒いところに手の届くサービスが提供できるのは当社の強味ではないかと思っています。

Q：企業の障害者雇用率がなかなか改善されませんがご意見はいかがですか？

A：障害者の雇用を堅苦しく考えないで、話を聞く、見学する、といった障害者と触れ合う機会を増やしていけば理解も進みますし、障害者雇用は決して特別困難なことではないと思います。

　　当社はハード面の環境は最初から整えられていたという事情はありますが、ソフト面で言えば例えば、障害のある新入社員に対して特に表立った支援はしていないですね。余り手を出されると返ってやり難いこともありますし、手を出すことが必要かどうかは周りが適切に判断している、といった感じですね。必要があれば「お願いします」と本人からも言っていますしね。

Q：ところで、森さんは役員でいらっしゃいますが、これはいつ？

A：2000年に取締役になりました。

Q：その時の感想はいかがでしたか？

A：最初は、“まさか”と思いましたし、次に“果たして勤まるだろうか”と今度は心配になりました。経営に参画することで身の引き締まる思いというか、立場を自覚するというか、徐々に責任の重さを感じました。

Q：企画部長としての抱負をお聞かせください。

A：非常に競争の激しい業界ですので、新規事業をどう開拓していくか、につきます。パソコンの使える高齢者の増加や、ユニバーサルデザインの社会的認知などが新しいサービスの提供につながらないか、などと思っています。

　　個人的には、後輩の励みになるよう、障害のある身としての自分の生き様を示すというか、マァ言うならば機関車の役割ですかね。

Q：ご多忙のところありがとうございました。ますますのご活躍をお祈りいたします。

4. 取り組みの効果

　ハード面の整備が印象的な当社においては、現在なおも社員からの提案・要望は直ちに取り入れ環境の改善を図っている。

　ソフト面についても、森取締役部長の話から、障害のあるなしに関わりなく社員それぞれが“サポートの適切な距離”を心得て、お互いあるがままを受け入れ、ごく自然体で仕事をしている、ノーマライゼーションの理念を職場に実現するための社員と企業双方の努力が感じられた。

5. 今後の課題と展望

　今後の課題は第3セクターの使命としての“福祉と経営のリンク”である。福祉の充実と収益の向上は相反する場合が多いが、競争が厳しい情報処理サービス業界において、当社が今まさに課題としている取り組みを端的にあらわす「プロフィット（利益）・プロデュース・プラン」という言葉が当社のポスターに掲げられている。利益の追求という企業としての当然に求められる行為と、福祉の充実した働きやすい職場の実現という両立が困難であるなかで、障害のある人たちの夢の実現に向けて並々ならぬ経営努力が感じられる。

　今後、高齢社会や環境への配慮の高まりなど社会環境が大きく変化するなかで、増加する高齢者や障害者は、消費者としても大きな魅力を持っている。当社はこれまでも、高齢者や障害者の福祉の向上、生活の質の向上に貢献する関連機器の開発・製品化で市場に問うているところである。

　さまざまな音色の楽器がそれぞれの持ち味を生かして響き合う美しいシンフォニー　（交響曲）を奏でるように、人と人がそれぞれの特性を活かして調和し、それぞれが得意とするITサービスを提供する。そのことが障害者の雇用促進、就業継続につながり、また、「社会の公器」としての企業責任を果たすことにもなる。

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