聴覚障害者との共生が自然体で行われている職場
- 事業所名
- 長崎船舶装備株式会社
- 所在地
- 長崎県長崎市
- 事業内容
- 船舶内装・一般住宅・素窯業施設の設計施工
- 従業員数
- 369名
- うち障害者数
- 11名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 9 船舶ユニットバス製造、船舶木製家具製造 肢体不自由 1 営業事務 内部障害 1 調達事務 知的障害 0 精神障害 0 - 目次
1. 事業所の概要
創業は昭和18年9月1日で、当初は「長崎艦船装備株式会社」が名称であったが、昭和21年5月に現在の社名に改称した。
平成17年現在、従業員は369人、うち障害者は11人である。
当社の組織や障害者の配置などは次のとおり。
| 長崎本社 | 4階 長崎事業部・九州事業部・海外事業部（中途障害者2人） |
| 3階 設計部 | |
| 2階 総務部・経理部 | |
| 1階 インテリア事業部・パナホーム事業部 | |
| 香焼地区工場 | 生産部長崎工場 事務3人・設計2人・現場26人（うち聴覚障害者6人） 海外事業部鉄工工場 事務3人・現場3人（うち聴覚障害者1人） |
| 中国事業所 | 尾道工場（聴覚障害者2人） |
女神大
2.障害者雇用の経緯と背景
（1）障害者雇用の経緯・理念
生産部における木工加工、家具・建具の製造職について、学校や公共職業安定所からの相談で聴覚障害者の雇用を検討し、ものづくりに意欲が高く、協調性と根気がある人を求めていた。主に県立ろう学校のインテリア科・木工科の卒業生を採用し、積極的な障害者雇用を行ってきた。
また、昭和52年には障害者職業生活相談員を選任し、昭和60年には障害者職場定着推進チームを設置するなど、相談体制を整えた。
その結果、平成17年6月1日現在の障害者雇用率は7.01％と高い水準になっており、昭和55年には長崎県知事から、平成元年には労働大臣から表彰を受けた。
（2）取り組みの内容
能力・適性を見て職場配置を行っているが、随時能力及び職務内容の見直しを行い、木工加工から家具・建具の製作へとレベルアップした職務への移行を図っている。
生産部の障害者においては、聴覚障害のために生じる危険性に配慮し、建造中の船での作業はせず、工場内での作業配置としている。工場の1階から2階へ荷物を上げるリフトの起動時には、ブザーと共にランプが点灯するよう、安全面への配慮を行っている。
全て受注生産であり、図面と仕様書により1人完結型で製作するため、熟練工になるためには時間と経験を要するが、障害者技能競技大会（アビリンピック）家具部門にも出場した熟練工も在籍し、他の従業員の目標となっている。
（3）定着率の良さと職務再編成
障害者の受け入れを始めた当初は困難もあったが、障害者雇用が進むにあたって、全従業員が「障害があっても一緒に働く仲間」という意識を持ち、定着率の高い職場を作ってきた。中途退職者も出ず、平成17年で勤続36年、58歳の聴覚障害者もいる。
3. 中途障害者の職場復帰に向けて
当社では、中途障害者の継続雇用を図るため、職務の再編成や配置に工夫を行っている。
（1）東京営業所から四国事業所へ
1）配置転換
東京営業所単身赴任中の平成15年2月8日に脳梗塞で倒れ入院、手術を受け右上肢・下肢が不自由となった社員について、リハビリ療養後、平成15年7月31日身体障害者手帳を取得。家族の住む丸亀市に近い四国事業所に転勤させて雇用の継続を図り、平成16年4月1日付けで職場復帰した。
2）職務の再編成
職務内容については、従来の外回りを主とする営業職から、外出を必要としない事務所内での見積・工事見積表・サンプル帳・会議資料等の作成業務に変更した。これまでの営業経験を活かしたいという本人の希望にも合致し、活躍している。
3）能力開発・教育訓練
従来不十分であったパソコン操作の技術を習得させるため、一般事務担当者を補助者として配置し、ワードやエクセル等必要な知識の向上を図った。
4）人的支援・社内体制
同じ事務所内で、常時一般事務担当者と設計担当者によるサポートが可能になるよう、体制を整えた。
仕事量については、まずはできる範囲として、時間的な余裕を持たせるよう配慮した。
また、機能回復訓練のため週1回のリハビリ施設への通所が必要であるとの申し出を受け、勤務時間の配慮を行った。
（2）四国事業所から長崎本社へ
1）配置転換
平成17年4月1日付で、長崎本社海外事業部営業課事務担当として転勤。家族とともに赴任した。
四国事業所で行っていた事務作業は継続して行うが、それに加え、営業職の知識と経験を活かした工務マニュアルを1年間で作成し、システム化して営業課の業務の効率化を推進する。
機能回復や職場適応の状況をみながら、新たな措置が必要となれば今後も考慮していきたい。
2）設備改善
本人が所属する海外事業部営業課は、本社ビルの4階にある。移動補助として、第1種作業施設設置等助成金を利用し、各階段に手摺を設置した。
緊急時の避難対策として、消防署に相談し、布担架の配備を検討している。
4. 今後の課題・展望
障害者を受け入れるために、職務の再編成を行ったり、設備の改善を行うなど、柔軟に対応してきたことで、障害者と健常者の共生が自然体で行われている職場となった。
今後は、ろう学校の卒業生だけでなく、広く採用活動を行い、適材の確保に努めたい。
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