長期安定就労を目指して
1.事業所の概要
(1)沿革
当工場の母体である中園化学株式会社は、昭和36年に創業し、昭和62年には商標を「ホワイト急便」に変更した。現在ではクリーニング業に限らず、理美容業など500社以上のグループ企業を有しており、国内外にわたり展開している。
当工場は、昭和63年操業の近見リネン工場を移転する形で、平成4年にホテルや旅館などのリネンサプライ専用工場として「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」を活用し設立した。平成17年現在、当工場では熊本県内の約90社と取引があり、1ヶ月に約60万点の処理を行っている。
障害者雇用については、昭和63年から積極的に取り組み、平成6年に熊本県知事から「障害者雇用優良事業所」の表彰を、平成9年には労働大臣から表彰を受けた。
(2)労働条件
就業時間は、午前8時から午後5時までの実働8時間、休日は毎週木曜日と日曜日である。
給与等は、時間給制(月給制)とし、本人の能力に応じて決定し、ボーナスも年2回支給している。
(3)障害者雇用助成金の活用
各種助成金の活用状況は、以下のとおり。
①特定求職者雇用開発助成金
②重度障害者多数雇用事業所施設整備助成金
第1種重度障害者施設設置等助成金(施設設置に関して)
第2種重度障害者施設設置等助成金(施設改善に関して)
第2種重度障害者施設設置等助成金(設備更新に関して)
③重度障害者介助等助成金(職業コンサルタントの配置)
2.取り組みの概要
(1)雇用の経緯
障害者雇用については、前身の近見リネン工場操業の際に初めて取り組むこととなった。グループ内ではすでに障害者を雇用している工場においては、彼らが活躍し、その能力が十分活用できることが実証されていた。
実際に雇用した当初は、多少とまどいもあったが、共に働く中で真面目でひたむきに仕事に取り組む姿は、他の従業員にも見習わせたいと思えるほどであった。それ以後、ほぼ毎年障害者を受け入れている。
(2)雇用に向けた積極的な姿勢
当工場における障害者雇用に関しては、学校及び公共職業安定所等の関係機関と十分な連携を取りながら進めている。また、正式に雇用する場合には、ジョブコーチ等を利用し、職場実習を行なっている。職場実習の中では、工場での作業に耐えうる体力が備わっているか、工場の中で、本人がもっとも能力を発揮できるのはどの部署か等を見極め、本人や関係機関と十分相談し、雇用に至っている。
障害の有無や障害の程度は関係なく、当工場の仕事に耐える体力があり、仕事に一生懸命に取り組む姿勢を大事にし、人材を確保している。
(3)職場定着への取り組み
工場内でのサポートは、障害者職業生活相談員の資格を持つ工場長及び副工場長と、その補佐となる女性従業員の3名が中心となって行っているが、全従業員がサポート意識をもつような取り組みを実施している。
具体的には、毎日の朝礼で全員でその日の業務を確認したり、仕事の進め方を検討したり、業務終了後の清掃作業においては、全員で機械の安全点検を行っている。
また、月2回全体ミーティングを開催し、全員で業務についての話し合いや、伝達事項について意見を出し合っている。ミーティングで出た意見は集約して検討し、業務の効率化につなげている。
塚本所長は、「工場の利益を上げるためにどうしたらよいかをみんなで考え、それを実行に移していくことが重要である。一部の従業員で考えるのではなく、全員が参画することで、各自がこの職場になくてはならない存在であることを意識し、仕事に対しての責任と自信をもつようになれば」と述べる。
また、工場創業当初は、障害者同士、互いに自分の意見をうまく伝えることができず、些細なことによるトラブルが絶えなかった。事の重大さを真剣に受け止め、コミュニケーションを大切にし、ミーティングを設け工場内の意思疎通を図ったところ、喧嘩はなくなり、ひいては全従業員が一丸となることができた。
当工場では、食事会、バーベキュー大会やコンサートを企画し、多くの従業員が参加している。仕事以外のコミュニケーションも大切にし、従業員同士の交流が深まるよう取り組んでいる。
また、本人の表情がいつもと違ったり、悩みを抱えているようであれば、周囲の従業員が積極的に話しかけたり、上司が本人と話す機会を作っている。併せてジョブコーチや障害者雇用促進協会などの関係機関に連絡し、早い段階での問題解決を図り、内面的な部分への支援にも取り組んでいる。
このような取り組みを積極的に行ってきた結果、当工場における25人の障害者のうち、13人が10年以上、4人が勤続5年以上10年未満と職場定着している。
(4)安心・安全を中心にした職場改善
雇用の安定に向けて、就業環境の整備を積極的に取り組んでいる。
その1つが安全面での対策である。リネンサプライという業務の特徴として、大型の機械が多く、安全対策も二重三重に行っている。作業中に従業員の衣服が引きこまれるのを防ぐため、各機械にストッパー等の安全装置を設置している。本社には機械保守点検の専門部署があり、定期的に点検を受け、さらに独自に改良を加えて、従業員が使いやすくかつ安全な対策が強化されている。その結果として、障害特性に起因する事故は現在までに一度も発生していない。
また、通勤対策については、職場が通勤寮などから離れている課題に対し、助成金を活用して通勤用マイクロバスを2台購入、17人の送迎を行い、通勤問題の解消を図った。
3. まとめ
障害者雇用には、意思の疎通や業務の遂行援助など、雇用の継続を図る上で難しい場面があるが、当社は、コミュニケーションに重点を置き、彼らと同じ目線で物事を考え話し合い、信頼関係を強いものにしていくことで、彼らが働きやすい職場を築いてきた。
新規に雇用した障害者に対しては、「どんなことが得意なのか」「その能力をどの作業で活かすことができるか」を第一に考え、「自分は仕事ができる」という自信をつけさせることを考えながら接している。
障害者がいきいきと仕事をする姿は、当社の自信にもつながっている。障害者と事業所がともに成長できるよう、今後も障害者雇用を進めていく意向である。
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