何より人間 「夢・希望・笑顔」
1.事業所の概要
(1)概要
平成4年7月17日、株式会社本田技術研究所の特例子会社として、ホンダR&D太陽株式会社が設立された。本田技研工業株式会社には、これより先に特例子会社として昭和56年に設立した「ホンダ太陽株式会社」と昭和61年に設立した「希望の里ホンダ株式会社」があり、そのほか、本田技研工業株式会社でも障害のある人たちの雇用を積極的に行っている。
大分県日出町にある、緑の森の中によく調和した黄色い建物が当社である。13,500坪の敷地内は「働くゾーン」「憩いのゾーン」「個人のゾーン」に分けられ、誰もが生活しやすいユニバーサル・エコロジカルデザインに基く環境づくりがなされている。
来場者が最初に足を踏み入れる駐車場を見ても、人に対する細かな配慮が感じられる。玄関を入るとホンダ太陽創立者の故中村裕氏と本田宗一郎氏の写真とともに事業所設立の理念が掲げられている。
なお、当社を含め、ホンダ太陽株式会社における障害者雇用数は、151人中、75人である。
2.施設設備
(1)入口・駐車場


スペース有効利用

(2)事務所ドア

使用し易い

使用し易い
(3)CAD室


為の工夫

自由に移動出来る
(4)工場ドア・通路

避難が可能

安全な非難が可能
(5)工場

圧迫感がない


緊急事態告知が出来る

(6)生産設備

し易い(移動なし)

(7)休憩コーナー

いす・ソファー

自由にくつろげる

使い易い
(8)社宅

一人で登れる


来客を知らせる

作動している事を知らせる

シンクも洗い易い

(釣りロープ用アンカー)


セット出来る
(9)ユニバーサルガーデン等


(10)食堂

食事が出来る


(グリーン)

(斜めの切り込み)
(11)トイレ・医務室

スライド出来る
(段階的にスライドする補助バー)

3. 障害者雇用の理念
「この世に“障害者”という人種はいない。また、同じ人は一人もいない。人にはそれぞれ他にはない固有の素晴らしい“持ち味”がある。その違いを互いに認め合う中に、一人の人間としての自立が生まれる。たとえ、心身に障害は負っても人生に障害はない。“障害者”としてではなく「一人の人間」として社会に役立ち、普通に生きてゆく──これが私達の目指す“何より人間”──夢・希望・笑顔──です。」
中村博士が遺した「世に身心障害者はあっても 仕事に障害者はありえない」という障害者雇用の哲学が生きている。
当社の樋口克己取締役管理本部長が語る以下の10か条に、会社運営の理念が具体的な言葉で表現されている。
①会社の目的は利益にあらず。目的は“人”であり、利益は必要条件。
②人はひとりでは生きてゆけない。真の自立は共生(の場)の中にある。
③いろんな人がいて(多様性)こそ健全。画一(単一)はアブノーマル。
④「なんとかならないか」・「がまんvsがまん」-OCT+科学技術
(OCT=On The Chance Training)
⑤ただ与えることは奪うこと。自助努力がベース。
⑥「人」の管理をするな!障害より入るな、近づくな!
⑦役職任用に「障害」は障害とならず。・・・「役職は役割」身分保障にあらず。
⑧技術開発は未完成であれ!「人が働く」こと=「人の心」良品をつくる。
⑨障害に定年はなし。たとえ障害は負っても人生に障害はなし。そして誰もがたどる道。
⑩「特別でなくていいんです。普通になりたいのです。」
4.取り組みの内容
(1)障害者の募集、採用
当社を希望する障害のある人の最近の傾向は重度化・高齢化してきている。採用するにはかなり設備改良を必要と考えられる人、すなわちADLが自立していない人が多くなっているが、採用基準の最低のテーブルに載る条件は、ADLが自立していることが基本である。
車のアセンブリーが中心の事業所であり、「人の命」に関わる仕事である。その上、新たに受注する仕事はかなり高度化・大型化されたものが多いため、当社の要求水準と応募者の能力にギャップが生じてきていることから、職務に対応できる能力を持つ人材を採用することになる。
このことは、ホンダ太陽株式会社にも言えることだが、当社は研究所のニーズに応えることのできるスキル(CADの使用等)を持った人は積極的に採用する意向であり、最大50人規模まで伸ばしたいと考える。
(2)職場配置、定着、職場適応
過去に病気が進行して亡くなった人、CAD技術を習得し独立した人、結婚退職など、離職した人はいるが、概ね障害のある社員の職場定着は安定している。
職場適応に際しては、親会社である株式会社本田技術研究所の指導によりスキルアップを図り、さらなる高い領域への挑戦を行っている。
(3)能力開発
「やってもやらなくてもいっしょ」から、「やればはねかえる」方式へ、勤務評定にも連動させ、平成15年の冬の賞与から能率給を採用した。等級間格差は生じたが、モチベーションは高まったと評価している。
公平さを期すために、所属長が評価する評価表の公開を原則にしている。基準は、頑張った、よくやったではなく、できるだけ具体的数値で、いかにチャレンジしたかといったプロセスを評価できるよう、「何を、どうしたから、どうなったか」を目に見える形で説明している。
(4)組織体制
「障害の有無と役職は関係ない。役職は役割である。任用制度であり、身分保障はしていない。あなたが必要だから課長をやってください。必要なければどうぞ降りてください。」との考えとともに、「組織はできるだけシンプルにしたい。野球で例えるならば、サードゴロが飛んだらショートは一歩も動かないのではなく、ショートもカバーする」組織体制を採っている。
(5)賃金、労働時間等の労働条件
労働基準法が基本に、本田技研工業株式会社の賃金体系ではなく、大分県の平均的な製造業の賃金をベースにしている。給与形態は一本で、障害の有無による違いは設けていない。
年間の稼働日は244日、休日は121日。就業時間(拘束時間)は8:15~17:15までである。途中1時間の休息及び午前・午後10分の休憩がある。実労働時間は7時間40分である。
(6)継続雇用、退職、定年
60歳定年制を採っているが、労働基準法改正に準じ、本人が希望すれば嘱託の形で1年毎の契約雇用を行っている。
(7)安全衛生、健康管理
労働安全法に基づき、委員会を作って徹底している。労災もほとんどない。健康管理も医務室を設置して、太陽の家が面倒を見てくれる。
「遊びもあってはじめて人生。」様々な交流や語らいを通じた文化づくりが盛んに行われている。
(8)就業環境の整備
障害のある人たちが、如何に健常の人と同等に職務遂行できるか、具体的には、治具の改良あるいはやりがいといった、働き甲斐に直結する環境整備に取り組んでいる。
「地域・地元の人が誇ってくれる会社を目指そう、会社人である前に地域人でありたい」をコンセプトに地域交流(お祭り(ホンダまつり)・サッカー大会・講演会など)により、地域との接触を持つ試みを積極的に行っている。
「個性を輝かそう!」すなわち“百花・百香”(趣味やスポーツに一人ひとりが持ち味や個性を活かし、幅広い分野で活躍)できるよう、また、数々の世界を目指すアスリート社員のための施設設備を充実させている。
5. 今後の展望
当社の今後の展望として、当社発の核となる製品を研究開発し、「メイドインおおいた」として発信したいという意向がある。
また、障害者雇用については、平成20年を目途に、知的障害のある人の雇用に着手するよう検討がなされている。
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