職務内容に応じた積極的な障害者雇用と経営姿勢
 事業所外観 |
1. 事業所の概要
昭南病院は職員数470人、ベッド数154床を有し、地域では大規模な病院として、地域住民の心身の支えとなっている。
以前は介護老人福祉施設と併設していたが、平成16年12月に現地に新築移転した。
診療科目は、内科、外科、脳外科、神経内科、リハビリテーション科を中心に12診療科を持つ病院として、一日平均300名の患者が来院する。特徴として、専門外来（IVH、人工透析、人間ドッグ・通所リハビリテーション）を設置している。
さらに関連施設として、大隅在宅介護支援センター及びケアセンター「やごろう苑」ならびに大隅地域訪問看護ステーションが設置され、専門職員（臨床心理士・言語療法士・運動療法士等）を配置し、地域医療・福祉の中心施設となっている。
また、院長の障害者雇用に対する理念としては「職員採用にあたっては、健常者・障害者の区別は全くなく、必要な仕事を十分にこなすことができるか否かが判断基準」があり、完全な能力主義を取っている事業所である。
2. 障害者雇用の経緯
当院の職員採用にあたっては、「必要な仕事ができるか否か」が重要であり、この要件を満たせば障害の有無は関係ないとし、人材を確保してきた。障害を持っていても、能力があれば評価し、自分の能力を十分に発揮できる職場である。
知人の紹介で初めて雇用した障害者は、当時リハビリ科の物療アシスタントとして従事し、とまどうことも多かったが、現在ではドクターの指示によりリハビリ科の補助業務をこなしている。
その後3人の障害者を採用し、現在に至っている。
しかしながら、精神・知的障害者の雇用に関しては、今のところ適職がないため採用は見合わせている。
3.定着推進への取り組み
（1）勤務体制について
原則として、8：30～17：30の勤務。ただし、職種によっては早出・遅出勤務がある。
時間外勤務はほとんどない。
（2）障害者雇用時の院内教育訓練について
部署ごとに主任を通して共通理解を図るほかは特に実施していないが、現在のところ職務遂行に際して支障は見られない。
（3）障害者職場定着推進について
平成15年6月に障害者職場定着推進チームを設置し、人事担当主任を窓口として、以下構成員を中心に定着を図っている。
人事担当主任及び関係部課職員（4人）
障害者職業生活相談員（1人）
4.職務内容
（1）理学・作業療法士の補助作業
昭和54年に採用したAさん（男性）は、医師の指示のもとリハビリ訓練を行う理学療法士のアシスタント業務に従事している。具体的には①リハビリ訓練の事前準備、②リハビリ器具等の後片付け、③清掃、④患者の誘導介助で、効率的な業務遂行を常に心がけている。既にベテランの域に達し、利用者からの信頼も厚い。
（2）調理師
平成3年に採用したBさん（女性）は、患者様・職員の食事調理を担当している。入職時は調理師免許を持っていなかったが、2年間の実務経験を積みながら免許を取得した。
右手が不自由であるが、左手の機能を十分に発揮しながら勤務している。
（3）看護師
平成2年に採用したCさん（女性）は、訪問看護を中心に業務を行っている。
長年、看護師として当院に勤務していたが、中途で内部障害者となった。訪問看護師として職場復帰した現在も定期的に検診を受けることができるよう配慮されている。自身も障害者となり、患者の気持ちを考慮しながらのサービスを心がけている。
（4）臨床心理士
平成15年に採用したDさん（女性）は、ケアセンター「やごろう苑」の臨床心理士として、高齢者の自立と生き甲斐づくりを支援している。下肢に障害があるが、専門職として活躍し、急性期を過ぎ症状の安定した高齢者に対するリハビリテーションや、悩みを抱える患者に対するカウンセリングを行うほか、入所者の支援プログラムを企画・運営している。
更に、平成16年度から取り組んでいる「予防介護通所リハビリ」の個別ケアの充実に努めている。
5. 障害者雇用の効果
調理師免許取得に向けて努力するBさんの積極的な姿勢は、他の職員に少なからず刺激を与えた。
また、障害のある従業員の、患者の視点から提供するサービスやその姿勢は、利用者に安心感を与えるだけでなく、他の職員にもよい影響を及ぼし、当院の支援のあり方にも活かされるようになった。
6. 今後の課題と展望
現在当院で雇用しているのは身体障害者のみであるが、今後は、これまでの障害者雇用の経験を活かし、障害を限定せずに雇用を拡大していきたいと考えている。
機能訓練指導員として視覚障害者を雇用している事例や、清掃等の間接業務に知的障害者を雇用している事例を参考に、業務内容を見直し、障害者雇用を進める意向である。
7. まとめと考察
病院における障害者の従事業務としては、視覚障害者の3療師（針師、灸師、あんま・マッサージ・指圧師）理学療法士及び知的障害者の清掃等が一般的であるが、当事業所は、リハビリ・調理関係に加えて、看護師や臨床心理士の分野まで雇用実績を築いている。
経営者の理念が背景にあることを考えると、当事業所が今後障害者の働く場として拡大していく可能性は大きい。
医業という職種で、彼らが生き生きと職務をこなしている背景には、勿論、本人の懸命な努力と併せて、当事業所や従業員全体が醸し出す「人の心を包み込むような雰囲気」と「障害を意識しないふれあい」が、大きな要因としてある。
また、障害者の雇用促進には、ハローワークや障害者雇用促進協会等との密接な連携と助成金の活用等がキーポイントとなるケースが多く、当事業所では、比較的障害者自身の努力や資質が大きなウエイトを占めていたが、今後障害者の雇用拡大に向けては、日頃から支援機関との連携及び活用は大事な要素となる。
当事業所は、適性と能力を重視し、仕事に懸命に打ち込む人であれば採用する姿勢を持って障害者雇用に取り組んでいる。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。
