障害者の職域拡大に向けた取り組み
～タクシードライバーとして能力を発揮～
1. 事業所の概要
当社は、昭和25年8月に一般乗用旅客運送業として開業した。開業当時は保有している営業車輌は78台であったが、平成17年現在「観光自動車株式会社」として営業車輌78台を所有している。県下でも業界中堅として、鹿児島市を中心として営業を行っている。
従業員は、現在パートを含め103人、うち障害者は7人である。更に、鹿児島市から障害者優良従業員の個人表彰の受賞者を出している。
2. 障害者雇用の経緯
障害者雇用の取り組みは、20年前に知人の紹介で軽度の肢体不自由者をドライバーとして採用したのがきっかけである。本人は一般従業員と何ら変わることなく勤続26年が経過しようとしている。
その後の障害者雇用に関しては、ほとんどがハローワーク主催の「障害者就職面接会」を通じて雇用している。
近年、タクシードライバーとしての資格及び適性能力を持つ障害者の雇用が困難になってきているが、企業の社会的責任を果たすため、障害者雇用率の達成を目標に取り組んでいる。
また、障害者自身がタクシードライバーという職業に不安を持っていることから、当社では「採用時及び入社後の効果的なケア」をテーマに、事業所全体で障害者の職場定着に取り組んでいる。
3.職務遂行上の設定内容
（1）勤務形態について
勤務については、上司の理解もあり障害者本人の事情に応じて、スケジュールを組んでいる。
基本的には以下のとおり。
A勤：平常勤務（昼間・夜間）
B勤：2日勤務、隔日勤務
但し、季節的催し物・行事等が地域で実施される場合は、特別勤務時間で勤務する。
（2）事故処理及び苦情の対応について
事故を生じた場合には、必ず本人から窓口である事故担当運行管理者へ報告するようになっている。本人の状態を把握し、指導助言しサポートする。
また、苦情が寄せられた際の窓口には、相談員を配置している。平成17年度には相談員数を増やし、女性相談員も配置した。
4.取り組みの内容
（1）面接時の積極的な働きかけ
面接時には、障害の有無に関係なく仕事を評価することと、むしろ意欲があれば働くことのできる環境であることを説明している。
さらに、当社の経営理念や障害者に対する配慮等を丁寧に説明し、本人の職業意識の向上に努めている。
（2）入社後の取り組み
1）事故防止に関する事項
安全運転・事故防止は基本であり、従業員の職場定着につながる。運行前点検を徹底し、事故防止に努めている。
2）相談体制の整備
悩みや不安を抱えたときは、気軽に相談できるよう障害者職業生活相談員を配置している。また、障害のある従業員が指導的立場にあり、他の障害者の良き理解者となっている。
さらに、障害者職場定着推進チームを設置し、安心して職務を遂行できるよう配慮している。
3）意欲向上への取り組み
年間売り上げ順位により、上位入賞者には表彰状及び賞品を授与している。更に、無事故年数に応じて、表彰状及び賞品授与等も実施し、働く意欲を持てるよう配慮している。
4）施設の整備
営業車管理の合理化の為に自動洗車機を設置するほか、障害者雇用助成金を活用して、洋式トイレ・単身用宿舎（寮）を設置した。
5. 障害者雇用の効果
タクシードライバーという職種は、障害者が従事することは難しいと考えられているが、支援機関の援助を受けながら、当社では障害者の職域拡大につなげる取り組みができており、当社及び障害者の自信となっている。
彼らの乗客への対応は、約7割が車内である為ほとんど支障を感じない。車外で対応することが困難な場合については、ほとんどの乗客が理解を示してくれる。
彼らが常に安全第一とサービス精神を心がけ、お客に不快感を与えることなく笑顔で勤務している姿は、当社全体に好影響をもたらしている。
6. 今後の課題と展望
若年層のドライバーが少なく、タクシードライバーとしての適性能力を持つ有資格者の応募が近年減少していることから、応募を待つだけではなく積極的に求人を働きかけることが重要と考えている。
障害者の雇用管理については、中途障害者は、自己の障害について十分に認識していないことがある。中途障害者を含め、従業員全員が障害特性を理解できるよう、支援機関を利用した啓発活動を行っていく必要がある。
障害者が収入面で不安を感じている場合には、評価されている障害者の事例を挙げ、努力に見合った収入が得られることを説明する。
より働き易い職場づくりに向けては、各種助成金をはじめ支援機関を積極的に活用しながら努めていく意向である。
7. まとめ
意欲はあっても資格が必要であり、適性能力が問われる当該職種においては、障害者も事業所も消極的であるため、障害のある人にとってタクシードライバーは、未だ希有な職種であるが、逆に言えば、適性と資格（普通自動車二種免許）を持っていれば障害者にとっても十分対応できる職種であることを当社は示している。
近年、タクシードライバーの希望者が少ない現状において、発想の転換をすることにより障害者の職域拡大につながる可能性も十分にある。当社が多数の障害者を雇用し職場定着に全体で取り組む姿勢が、今後、他の同業者においても、現在の業務内容を見直し（例えば、営業車のワックス掛けや車内清掃、事務所内外の清掃等）障害者の雇用への取り組みを促すことは十分考えられる。
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