小売店で聴覚障害者と知的障害者の雇用に取り組む
1. 事業所の概要
昭和58年9月に総合小売業として設立された当社は、現在、沖縄県内中南部を中心とした店舗展開を行っており、平成17年6月現在では11店舗となっている。
2. 障害者雇用の経緯
障害者雇用のきっかけは、沖縄雇用開発協会主催のセミナーに参加し、事業所には「障害者を雇用する」という義務が企業に課せられていることをはじめて知ったことによる。しかし、人事担当者を含めた職員一同、障害者に関する知識はほとんどなく、どのような障害があるのか、どの程度の仕事量をこなすことができるのか等、不安ばかりが先に立ち、障害者雇用に踏み切ることができなかった。
そのような折、ハローワークから合同面接会の案内を受け、障害者に対する理解を深めようという思いもあり、面接会へ参加し、聴覚に障害のあるAさんを採用した。
Aさんの面接にあたっては手話通訳士が同席し、提示した職務に対してAさんの対応できる範囲や勤務意欲を確認した上で、仮雇用という形で採用を決定した。コミュニケーション手段に関しては、従業員が手話を使えなくとも筆談やボディランゲージで対応できるという「行動優先」の発想を人事担当者が持っていたことも採用を決定する要因となった。
3.取り組みの内容
（1）職場見学により職務のマッチングを図る
まず念頭に置いているのは、雇用する側、される側ともに選ぶ権利を有していることである。採用までに二度面接を行うが、2次面接において実際の職場風景を見てもらい働く環境を把握してもらう。職場定着を図るうえで、本人が希望する職務と対応できる職務がうまくマッチングできるよう取り組んでいる。
（2）雇用支援機関との連携
当社で勤務する身体障害者のほか、4人の知的障害者の雇用にあたっては、沖縄障害者職業センターの支援を受けている。平成17年度に採用した知的障害者に対しては、ジョブコーチ支援事業を活用することでスムーズに職場に適応することができている。
各種助成金に関しては、ハローワークや雇用開発協会等から情報を得、効果的に活用している。
また、養護学校在学生の職場実習も積極的に受け入れており、働くことを体験してもらうことで、働く意欲を伸ばすことに貢献している。しかし、「職場実習を受けたので、是非雇用してもらいたい」という学校側の強い要望もあり、その対応に苦慮している。そのためにも、支援機関間の連携が重要であり、今後の課題である。
（3）聴覚障害者雇用に向けての取り組み
聴覚に障害のあるAさんは、周りの従業員と積極的に関わりたいという意識が高かったため、自然と周囲もコミュニケーションを図ろうという意識を持つことができた。多少手話ができる従業員もいたが、手話のできない人も手話の本を購入し学習する等、手話によるコミュニケーションに対する意欲が高まった。Aさんが手話を教える場面も見られ、コミュニケーションをきっかけとしてお互いに支援体制を自然に築き上げることができた。
（4）知的障害者雇用に向けての取り組み
①職務配分とチェック体制の設定
特に知的障害者に対しては、一度に多くの作業を任せるのではなく、個人の能力に応じた職務の配分を心がけている。また、やるべき作業内容をメモ帳に記入することで、どの段階まで仕事が進んだのか、あとどのくらい仕事が残っているのか等、管理者が明確に把握できるようにしている。特別な研修は課しておらず、ほとんどがOJTである。
②トライアル雇用・ジョブコーチ支援の活用
トライアル雇用も積極的に活用しており、ほとんどが本採用につながるが、採用への移行が困難な場合は、沖縄障害者職業センターのジョブコーチ支援事業を併用している。
③安全面への配慮
水産売り場や精肉・厨房等においては刃物を使用する作業があるため、他の従業員と一緒に作業を行う意識を促す一方、常に従業員と共に作業することが困難な場合もあることから、障害特性を勘案したうえで刃物を使用しない部署へ配属するなど、安全面には十分留意している。
④従業員が意見を出せる場の設定
また、3ヶ月～半年に1度「ゆんたく会」というミーティングを開き、従業員が普段感じていることを話す場を設けている。この会において出された要望を基に、より働きやすい環境づくりに努めている。
⑤給与
働く意欲を高めるためにも、障害の有無を問わず同等の昇給を支給し、キャリアアップの可能性も広げている。
4. 今後の課題と展望等
当社は、各支援機関を活用することにより障害者雇用を推進している。事業所側の要望と求職する障害者の要望がマッチすれば、今後の雇用も検討したいと考えている。
そのために、当社から支援機関に対する要望する内容は以下のとおり。
①行政機関は、障害者の障害程度や作業能力等の情報を、もっと事業所へ提供して欲しい。
②支援機関間においても積極的に情報交換を行うべきである。例えば、養護学校卒業生の就職先を職場実習先の事業所へ限定するのではなく、ハローワークは障害特性など勘案し障害者を雇用していない事業所に対してもアプローチすることにより、「雇用の輪」が益々広がるのではないか。
特定の事業所が受け入れるのではなく、多くの事業所が積極的に障害者雇用へ取り組んで欲しいという願いを持っている。
当社は、障害者雇用に対し多彩なアイディアを持って前向きに取り組んでいるが、将来的には数ヶ所の事業所との共同事業所を設立し、多数の障害者を雇用することも検討する意向を持っている。
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