事業所名

社会福祉法人まつみ福祉会　介護老人保健施設桜山荘

所在地

沖縄県豊見城市

事業内容

介護老人保健施設

従業員数

156名

うち障害者数

28名

障害	人数	従事業務
視覚障害	3	リハビリ（マッサージ師）・介護事務
聴覚障害	3	一般事務・介護
肢体不自由	4	送迎・介護・営繕
内部障害	1	一般事務
知的障害	10	介護・清掃
精神障害	7	一般事務・介護・清掃

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 雇用支援機関との連携
4. 取り組みの内容
5. さいごに

施設外観

1. 事業所の概要

　桜山荘は平成元年12月1日に介護老人保健施設として、沖縄県南部の豊見城市に開所した。心身に障害があっても、住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、その人の持つ機能を最大限に活かす支援を志向し、入所、グループホーム、通所リハビリテーション、通所介護などのサービスを提供している。

　当法人は、“いろいろな人が関わった重層的なコミュニティをつくりたい”という夢を持っており、利用者である高齢者と職員だけではなく、障害者はもちろん、登校拒否児、近隣住民や保育士などいろいろな人々と交流を持ち、それぞれが役割を担い、相互に助け合うことにより良好な人間関係を築くことができるような取り組みをしている。

2. 障害者雇用の経緯・背景

　当法人は、サービスを提供する側と受ける側の二極構造という、従来の老人介護の在り方に疑問を持っていた。すなわち、受ける側は依存心が強く主体性がなくなってしまう一方で、提供する側は業務遂行が優先となり、指示命令口調が多くなってしまうなど、双方にとって健全な関係を築いていくのに好ましいものではないと考えている。

　そこで、働きながら同時に利用者から援助を受けるといった中間的な存在として障害者を雇用している。当施設で勤務する彼らは、生活のペースがゆったりとしていて、自分自身にハンディキャップがあり、痛みを理解しているため他人を誹謗中傷することが少ない。

　それゆえ、利用者は、互いに助け合い、家族的で穏やかな環境づくりができ、自分のペースで行動ができ暖かく見守ることができる彼らに対し親近感を持つ、といった望ましい関係作りができるなどの効果が期待でき、二極構造を打破するためのきっかけとなると考えている。

　“いろいろな人が関わった重層的なコミュニティを作っていきたい”という夢の実現のための第一歩でもある。

　現在、28人の障害者を雇用していて、利用者に対する介護者の割合が他施設と比較すると圧倒的に高く、そのため利用者一人ひとりに目が行き届くことができるとともに、利用者のペースに合ったゆったりとした時間を作り上げている。

3. 雇用支援機関との連携

　高齢者介護は、障害・認知症老人のペースにあわせて介助することが重要であり、質の高いサービスを提供するためには、どうしても多くの人手が必要になる。介護報酬減額という厳しい状況であるが、障害者雇用助成金制度等を活用しつつ、より質の高いサービスを維持している。

　問題が生じた場合や対応に苦慮する場合には、障害者職業センターに相談しアドバイスを受けるなど、様々な専門機関と良好な連携関係を築き最大限に活用している。

　また、ジョブコーチについても、障害者向けの作業マニュアルを作成してもらったり、支援対象外の障害者についてもアドバイスを受けている。

4. 取り組みの内容

　障害者雇用を継続していくために、彼らの持つ能力や意思を尊重し、本人と面談の上、職種や出勤時間など労働条件を決めている。常に100％を求めるのではなく、できる範囲で徐々にできるようになればいいというように、長期的に見守る姿勢を大切にしている。

　精神障害者の場合、日によって気分や体調に波があるので、毎朝顔を合わせた時には、「昨日はよく眠れた？」、「調子はどう？」と声をかけて体調を確認するほか、疲れた時には随時休憩時間を設けるなど、無理な負担をかけない工夫をしている。

　また、本人から希望のあった場合には、能力に応じて新しい職務を任せるなどスキルアップの体制も設けている。昇格もあり、頑張った分はきちんと認めることによって、目標を持って仕事に取り組んでいけるようにしている。

　職業生活相談員は2人配置し、定期的なグループワークや、必要に応じて適宜個人面談を通して、早期に問題解決を図るようにも努めている。

　指示・命令系統を一本化するなど職員への教育や指導も徹底している。介護の仕方、作業の仕方についてそれぞれ職員から指示すると彼らは戸惑い混乱をしてしまうため、彼らへの指示命令は、直属の上司に限定している。その上司については、障害者雇用支援に関する研修会などに積極的に参加してもらい、専門的な知識と支援技能の習得を促している。

　また、職員に対しては、障害者雇用の理念を資料として配付するほか、障害理解のための啓発会議を設け啓発しているため、職員の間では、彼らに対する差別や障害者雇用に対する抵抗感は見られない。

　当施設で勤務する精神障害者からも、「これほど理解してくれる事業所は今までなく、自分達のことを理解してくれている事務長や同僚に出会えたことがとても良かった」と話しており、本人の一所懸命楽しそうに仕事に取り組んでいる様子や、他の職員の話をいきいきと話す様子から、当施設が障害者が無理なく自分のペースで仕事ができる職場環境を整えていることがうかがわれる。
 

クリスマスの準備

利用者とのゆんたく（談笑）風景

施設の清掃

食器洗い

5. さいごに

　当法人は、今後、1人で自立した生活を送ることは困難であるが、共同生活によりそれぞれが役割を持ち、共に助け合える、家庭のようなコミュニティ作りを構想しており、そのための共生ホーム（仮称）をモデル事業として経営したいと考えている。

　しかし、そのためには、法律上の制約や資金調達、運営上のノウハウといったハードルが多く存在する。構想を実現していくためには、まず、その効果を検証できる実績を作り、行政などに情報発信していくことが必要であるが、そのために、具体的な事業内容やプラン等を作成し、専門的家から指導を受け、取り組んでいく意向である。

　障害者雇用という枠だけにとらわれず、コミュニティ構想の実現に向けても着々と取り組んでいる。
 

やりがいを持って仕事に取り組む
（事務長を囲んで）