障害者の多数雇用を目指して~特例子会社認定への取組み~
- 事業所名 :
- 北海道はまなす食品株式会社(生活協同組合コープさっぽろの特例子会社)
- 所在地 :
- 北海道北広島市
- 事業内容 :
- 重度障害者に働く場を提供する「企業部門」(納豆の製造販売)と知的障害者に自立を支援する「能力開発センター」からなる。
- 従業員数 :
- 28名
- うち障害者数:
- 15名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 15 納豆製造、豆菓子・珍味パック製造 精神障害 0 - 目次
1. 事業所の概要
当社は、障害のある方々の雇用促進と職業自立の支援のため、北海道が呼びかけ、生活協同組合コープさっぽろをはじめ札幌市、北広島市などの近隣地方自治体や、道内に本社を置く主要な金融機関や企業が出資して設立された。
組織は、重度障害のある方々に働く場を提供する「企業部門」と、知的障害のある方の職業自立を支援する「能力開発センター」からなっており、障害のある方々の雇用促進を目指した北海道初の第3セクター企業である。
業務内容は、納豆の製造販売を主要事業とするほか、豆菓子や珍味のパック業務を行っている。北広島市及びその近郊に在宅する障害のある方々が、通いやすく働きやすい環境を備えた近代的工場での操業を平成7年から行っている。
○納豆の製造事業
○豆菓子パック事業
○珍味パック事業
工場従業員 28名
うち障害者 15名
ホテル、学校給食等に販売
[能力開発センター]
○訓練内容
納豆製造を主な訓練科目として基本的な生活習慣及び労働習慣を体得させるとともに、企業で必要な知識・技術を理解させる。
○訓練期間 1年
○訓練定員 10名
○指導員 3名

2. 特例子会社認定への取組み
(1)経緯
平成17年12月に障害者の雇用の促進等に関する法律により、当社の最大の出資者である「生活協同組合コープさっぽろ」の「特例子会社」の認定を受けた。
当社は、障害者の多数雇用(工場従業員28名中15名が障害者。うち14名は知的障害者)を行う傍らで、能力開発センターを併設し知的障害者の職業訓練にあたるため、構造的に経営赤字を生み出す要素があり、平成12年度には累損による深刻な経営危機に直面した。発足当初、当センターの運営については、その運営費の5分の4を国等の助成金でまかなうこととされていたが、国や自治体の厳しい予算削減等を受け、実際は経費の3分の1の約800万円を事業所の工場部門からの補填に頼っている状況にある。
このため、人員合理化や人件費10~20%の削減でもカバーできない部分で、経営ノウハウを有する資本の45%を出資する親会社の販売・財務支援に大きく依存してきた。
一方で、親会社も一時喧伝された経営合理化の波の中で、障害者雇用にあずかっていたクリーニング部門の閉鎖を受け、障害者雇用率の低下が指摘されていたことから、親会社と子会社が相互に補完し合う関係をつくることで障害者雇用が維持できることのメリットについて平成17年度に検討された。
(2)特例子会社の認定要件
特例子会社の認定を受けるにあたって、親子会社関係にかかる資本要件については、平成14年の法改正により、従来のいわゆる「特殊基準」(親会社が子会社の議決権の過半数を所有すること。)から「支配力基準」(親事業主が子会社の意思決定機関を支配していること。) に緩和されたが、当社の設立時においては、親会社の出資比率が51%以上ならば経営支配権は明確であるが、当社の場合、親会社の出資比率が諸般の事情から45%であったため、解釈上、必ずしも円滑に進んだわけではない。
親子会社関係にかかる資本要件の緩和については、特例子会社のさらなる設立を促進し、企業の障害者雇用の取組みを促進することが期待できること、及び、国際会計基準の導入により子会社の範囲が従来の特殊基準から支配力基準に拡大してきたことに対応する必要があることが背景にある。
(3)特例子会社認定要件の当社のケース
当社の認定に係る要件の詳細は、 次のとおりである。

1)親事業主が子会社の意思決定機関を支配していることについて(特例子会社の議決権の40%以上50%以下を所有し、かつ、次のいずれかの要件を満たす場合)
①『特例子会社の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること』について
当社の45%の議決権を所有している親会社は、平成7年4月の当社の事業開始以来、その『重要な財務及び営業又は事業の方針の決定』を支配し続け今日に至っている。
しかしながら、この双方の関係はこれまで慣行的に行われており(具体の個々の取引では、発注—応諾—納品の流れで、文書により、行われる場合が多い。)包括的な契約は締結していなかった。
これに対して、これまで当社に対し親会社として果たしてきた支配関係を明文化するため、契約書を締結した。
②『自己と「緊密な者」及び「同意している者」 とを合わせて特例子会社の過半数の議決権を所有すること』について
親会社は北海道からの要請を受けて筆頭株主となっており、当社の運営にあっては、北海道と密接な連絡調整により進めてきている。具体的には、北海道から役員として人材が派遣されおり、連携を密にして取り組んでいる。
このことから、 北海道は親会社に対し『同意している者』とみなされ、これにより両者で70%の議決権を保有することになっている。
③『「親会社の支配影響役員等」 が特例子会社の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めること』について
親会社の支配影響役員はこの時点で3名であり、要件は満たしていなかったが、これまでの取締役会で、 親会社と道から派遣されている専務取締役との協議により議案が作成され、すべての案件は、全員一致で承認可決されている。
④『特例子会社の資金調達額の総額の過半について、融資・債務保証・担保提供を行っていること』について
当社の資金借入れにあたり、親会社が「全額債務保証」をしている。
⑤『その他、親会社が特例子会社の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること』について、
親会社は、当社の重要事項について、必要に応じて北海道と充分協議を重ね、株主総会、取締役会等を運営している実態から、事実上、特例子会社の意思決定機関を支配している 。
2)『子会社の役員のうち少なくとも1名以上は親事業主の役員又は従業員から専任されていること、子会社の従業員のうち相当数が親事業主から派遣されていること等 親事業主と子会社との人的交流が緊密であること』について、
当社の代表取締役には、親会社の役員が派遣されているほか、取締役の1人は、親会社の他の子会社の常務取締役が派遣されており、当社の営業全般を担当している。
なお、当社の正社員8名のうち、7名が親会社からの派遣又は出向者である。

3)『子会社における常用の身体障害者及び知的障害者の雇用の状況が次の①及び②を満たしていること。①身体障害者又は知的障害者である常用労働者の数が5人以上で、かつ、子会社の全常用労働者に占めるこれらの者の割合が20%以上であること。②①の身体障害者又は知的障害者である常用労働者のうちに占める重度身体障害者又は重度知的障害者である常用労働者の割合が30%以上であること』について
子会社の工場部門では、全従業員28名のうち15名が障害者であり、うち重度判定者は11名である。
* 障害者比率 15/28 = 53.6 %
* 重度障害者比率 11/28 = 33.3 %
4)『身体障害者又は知的障害者のために作業施設や作業設備を改善し、かつ、身体障害者又は知的障害者の職業生活に関する指導を行わせるための専任指導員を配置する等身体障害者又は知的障害者のためのきめ細やかな雇用管理を行う、身体障害者又は知的障害者の雇用に特別の配慮を行っているものであること』について
当社は障害者雇用促進のために設置されたもので、作業施設や作業設備はそのために作られている。
専任指導員や、工場に勤務する従業員中親会社からの出向者及びパート社員9名は、同じく「障害者職業生活相談員」資格取得者等の体制を整えている。
5)『その他、重度障害者の雇用の促進及びその雇用の安定が確実に達成されると認められること』について、
当社は、障害者多数雇用事業所としての工場部門の他に「能力開発センター」を運営しており、主として養護学校卒業生で就職困難な方を、 訓練生(定員10名)として1年間の学習・実技訓練を行い、公共職業安定所の指導を受けながら就職に結びつける事業を展開していることから、『重度障害者の雇用の促進及びその雇用の安定』に寄与していると言える。
以上、特例子会社に認定される場合の実際のハードルは低いとは言えないが、親会社との障害者雇用の総合的な構築により、永続的な障害者雇用の促進に寄与できるものと考える。
なお、認定に際しては、公共職業安定所や障害者雇用促進協会から助言を受けることは必要不可欠である。
3. 特例子会社認定により期待される効果
特例子会社の認定により、親会社及び子会社双方に生じるメリットは、次のように想定された(2006年3月時点)。
項目 | コープさっぽろ | はまなす食品(株) | はまなす食品(株)分を加算 |
---|---|---|---|
1 常用雇用労働者数 | 2,660 | 28 | 2,688 |
2 法定雇用障害者数 | 47 | - | 47 |
3 雇用障害者数 (①×2+②+③) |
28 | 26 | 54 |
① 重度障害者数 | 4 | 11 | 15 |
② 重以外障害者数 | 20 | 4 | 24 |
③ 短時間障害者数 | 0 | 0 | 0 |
4 不足障害者数 | △19 | 0 | 超過分 7 |
5 納付金額(千円) | 11,400 | - | |
6 調整金(千円) | 納付金1人△50千円 |
8,424 調整金1人27千円 |
2,268 (実質、5,244千円の調整効果) |
コメント
- 2006年3月 時点において、はまなす食品(株)分を加算することにより、障害者の雇用数は、54名となり、7名の超過が実現する。
- 雇用率達成のうえに、さらに7名の超過分として、コープさっぽろは、2,268千円の障害者雇用調整金を請求できることになる。(但し 8,424千円は、はまなす食品(株)に還付)
- コープさっぽろは、障害者研修・指導費として年額 6,600千円をはまなす食品(株)に交付
実際のところ、特例子会社に具体的な効果がどう及ぶかは、親会社の子会社への経営ノウハウの更なる注入等に待たなければならないといえるが、親会社の障害者雇用率達成により、
①当社の生産品の販売強化による生産及び雇用の拡大の促進
②関係子会社認定による他の関連会社における雇用加算の可能性
といった特例子会社化の波及効果が期待される。
また、当社を「生活協同組合コープさっぽろ」グループの障害者雇用の重点事業として再確立するとともに、障害者の雇用サポート機能の再強化を進め、親会社「生活協同組合コープさっぽろ」の障害者雇用促進の社会的役割を果たすことも期待できる。
4. さいごに
障害者雇用の現状は、依然きびしいものがあると思うが、公共職業安定所の日ごろの活動に触れるたびに希望の灯りは確実に大きくなっていることを強く感じており、当社の能力開発センターの若い訓練生に見られる笑顔の明るさが、なによりの励ましになっている。
本多 公男
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