2006年度作成

事業所名 :

東洋建物管理株式会社

所在地 :

青森県青森市

事業内容 :

ビルの清掃・警備・冷房設備等の管理、その他各種点検・保守・測定等のビル管理に関するサービス業全般

従業員数 :

1960名

うち障害者数:

42名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	10	清掃、ベッドメーク
肢体不自由	8	警備・設備管理、清掃
内部障害	5	整備管理、清掃
知的障害	17	清掃
精神障害	2	清掃

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯と現況
3. 職場配置（聴覚障害者によるホテル客室整備業務）
4. 聴覚障害者の特性と職場の対応
5. 職域開発、職場配置の取り組み
6. 派遣事業としての課題
7. さいごに

1. 事業所の概要

　 当社は、50年ほど前の創業以来、時代変化の中で、ビルの高層・大型化、多用途化、エレクトロニクス化の時代ニーズに対応して事業を拡大し、県内有数の企業として成長してきた。
　 現在、建物の設備・技術管理・環境衛生管理・清掃保全・保安警備・管理事務代行業務・病院内バイオテクノロジーを取り入れた業務の他、ホテルの客室整備やバンケットサポート、業務用資材の販売、一般・産業廃棄物処理業務など幅広く事業展開している。
　 最近は、最新技術を取り入れた椅子やソファーのクリーニングシステムを導入し、社会的なニーズに対応している。

2. 障害者雇用の経緯と現況

　 平成10年に初めて知的障害者を採用した。きっかけは青森県障害者雇用促進協会から障害者雇用を勧められ、地元の養護学校を見学し、初めての経験ながらも知的障害者の採用を決断した。
　 その後の事業拡大の流れに合わせ、障害者雇用を積極的に続け、併せて障害者職域開発も進め、結果、現在42名の障害者を雇用している。
　 最近は県内の各養護学校、公共職業安定所、障害者職業能力開発校、障害者職業センター等、幅広く支援機関を求め、障害者職業センターのジョブコーチ制度も利用し障害者の職場定着を目指した取り組みを行っている。

3. 職場配置（聴覚障害者によるホテル客室整備業務）

　 10年前の地元資本によるホテル開業に合わせ、清掃業務と客室整備業務を受託した。
　 2年ほど前に、当初は知的障害者を配置したが、ホテルという職場環境の中で問題が生じたので、さらに聴覚障害者を配置したところ順調に推移した。
　 業務配置については、1階から9階までのフロアーを障害者も含め、各フロアー3～4名体制でベットメーキングや清掃業務を行っている。うち聴覚障害者は5名で全員がベットメーキング専門の担当である。

4. 聴覚障害者の特性と職場の対応

　 聴覚障害者は聴力レベルと発音レベルの両点に配慮を要するため、同僚とのコミュニケーションに難しさがあり、接し方はもちろんのこと、話す速度や周囲の雑音等を考慮しつつ対応しなければならない。当然、職場における業務連絡等の情報伝達は、視覚による方法を考えている。
　 ホテルでの業務は、基本的に一人でできる職務としてベットメークを中心とした「客室整備」を担当させている。
　 聴覚障害者を採用し、ホテルの客室整備を担当させるための指導は、本人が作業に慣れるまで職場責任者が付きっきりで行っている。その間、コミュニケーションがうまく取れないこともあり、公共職業安定所から手話通訳者を派遣してもらい、彼らとの意思疎通に心がけながら指導を行ってきた。
　 しかしながら、彼らの立場からは、健常者同士の会話は「自分の悪口を言われている？」といった被害者的な受け止め方をされたこともあり、公共職業安定所の担当者や手話通訳者を交え、職場全員による話し合いを何度かすることで意思疎通を図った。
　 彼らは自らも、身振り手振りで他の従業員と積極的にコミュニケーションを取る努力をする中から、職場では自然と仲間意識が芽生えていった。
　 こうした対応の経験が、以後の聴覚障害者への指導に活かされてきたが、多少の口話や筆談も活用し、職場内のコミュニケーションムードは高まっており、業務の向上も図られつつある。
　 現在、職務を習熟した彼らは、担当ルームのベットメークの作業に自信と誇りを持ち張り切って取り組んでいる。

5. 職域開発、職場配置の取り組み

（1）業務訓練センターの設置

　 清掃業務といっても一般的なイメージとは違い、多種複雑で結構難しい作業となることが多い。
　 そのため、従業員の基礎的訓練が必要と考え、本社近くに別棟で、業務訓練センターを設置し、配置先の業務に合わせた様々な訓練を行っているが、人により清掃に対する業務の考え方が違うのか、時には事前の業務訓練の段階で頭を悩ます障害者もいて、指導担当者が苦労している場面もたまに見られる。
　 採用時に基本的な業務研修を行っているが、健常者は3日間、障害者については配置後の職場への適応性を考え1週間程度の期間を設定し、併せて障害者の職場配置の際には健常者と一緒にしたチームを編成し、習熟するまでの指導体制を取っている。
　 ホテルのベットメーク作業は、ホテル利用者と直接対話する業務ではないので、習熟すれば適職となる障害者も多くいる。
　 現在、5名の聴覚障害者がベットメークを担当しているが、大きな問題はなく順調に業務に励んでいる毎日である。

（2）障害者雇用の経験から職場配置を考える

　 障害者雇用も総勢で40人を超えてみれば、雇用側として、日々の雇用管理の中から人材活用の視点で適材適所を心がけられるようになってきた。
　 適材適所の運営ポイントは、障害部位ばかりではなく、彼らの人としての適性にも目を向けることが必要であり、そのような視点から一人ひとりの能力を十分に発揮させることにより職場管理体制ができていくものと考えている。

6. 派遣事業としての課題

　 平成10年の最初の障害者雇用以来、当社では積極的に障害者雇用を進めてきているが、企業としては社会貢献の一環として受け止めている。
　 その一方で、当社のような業種の企業は業務受託のオーナー側の理解が障害者の就業に大きな影響を与える。
　 今回の取材先のホテルにあっては理解を示す企業の一つであるが、数多くの一般企業ビルに所在する受託企業のオーナーに対しては、障害者の配置について事前に説明に力を注ぎ理解を得るよう努力をしているものの、時には障害者の配置に理解が得られず、断念せざるを得ないこともあった。
　 企業オーナー側にも顧客の反応を無視できない事情もあることと思うが、社会的に障害者の就業に対する理解が高まることを期待したい。

7. さいごに

　 自社内での業務よりも受託企業への派遣業務が多い企業においては、日常の業務現場として派遣先が圧倒的な数になる。それゆえ、健常者の管理だけではなく、本社から手の離れた障害者の様子に気を配る管理発想が必要となる。
　 それだけに、障害者雇用を担当する安西香部長代理の取材先のホテルへの案内に先を歩く元気さと、話題が業務訓練センターに及び、無理を承知で見学を依頼すると、訓練時間外であるにもかかわらず調整を図ったフットワークの良さが印象的であった。
　 障害者雇用の環境づくりに専念している印象が強く、「健常者との賃金格差はない」との力強い言葉や景況悪化の中での余剰人員対策には、障害者だからという発想はなく健常者も含め全員を対象に再配置を検討していくという説明に、障害者ではなく職場の要員という考え方をうかがうことができた。

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