事業所名 :

AKグループ（株式会社アルス・株式会社秋田オイルシール・秋田オーリング株式会社）

所在地 :

株式会社アルス：秋田県山本郡八峰町
株式会社秋田オイルシール：秋田県能代市
秋田オーリング株式会社：秋田県山本郡三種町

事業内容 :

自動車・産業・家庭・医療機器のオイルシール、型物、ゴムパッキン等の製造

従業員数 :

368名

うち障害者数:

35名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	2	品質管理、製造工
肢体不自由	4	製品検査、包装
内部障害	1	裁断工
知的障害	28	バラシ工、マルメ工、プレス工、抜型工、製品検査、成型、仕上工、製造工、成型補助
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯と現況
3. 取り組みの内容・今後の課題

株式会社アルス

株式会社秋田オイルシール

秋田オーリング株式会社

1. 事業所の概要

　白神山地の麓にある八森町（現八峰町）の商工会に勤めていた金屋信栄代表は、故郷に親の面倒を見る長男が残って働ける事業所を設立のため脱サラし、昭和49年に自身の財産を担保に秋田エーアルエス（現株式会社秋田アルス）を設立した。
　経営も軌道に乗り10年程経過した頃、同じ山本郡内の他の町村から職場の創設について依頼を受け、昭和59年に秋田県と藤里町の誘致企業として、能代市に秋田オイルシール、平成4年には三種町に秋田オーリング株式会社を設立した。
　3社は、白神山地の麓に三角形の位置関係で設置しており、いずれもゴム製品製造業として、自動車や産業用機械部品の精密Oリング（断面が円形のリング状のパッキン）、オイルシール（油漏れや異物の外部からの進入を防ぐためのパッキン）、Xリング、型物ゴム製品、医療用ゴム製品、各種ゴムパッキン等を製造している。原材料の研究開発から金型設計、生産技術開発を重ね、グループ3社統一の生産システムと徹底した品質管理システムを構築しており、秋田オイルシール株式会社は国際品質規格であるISO9001、2000の認証を取得している。
　また、ドイツの自動車部品メーカー「ロバート・ボッシュ社」から品質と技術力で高い評価を受け、自動車用の燃料噴射バルブ用シールの大量受注を受けるなど、ベンツ、フォードを始め世界各国の自動車メーカーに最重要保安部品として使用されている。加えて、産業用ロボットからガス、水道、電気などの家庭用機器及び医療用器具に至る分野の製品にも当グループ製品が組み込まれている。

2. 障害者雇用の経緯と現況

　株式会社秋田アルス設立時に社員募集を行ったところ、13名の応募者の中に身体障害（3、4級）のある人2名から応募があり、彼らの障害で対応できる職務を検討し採用した。雇用後は他の社員と区別しないで作業に従事させたところ、作業に取り組む姿勢や作業能力は他者と比較しても遜色なく勤務していたため、障害があっても十分に一人前の仕事ができることを実感した。
　その後、金谷代表の子供がダウン症と診断を受け、ハンディのある子どもを持った家庭の生活ぶりを肌で感じて、「家族をどうしたら楽にしてあげられるか」、社業が年々発展していく中で「社会にどうしたら恩返しができるか」と考えるようになった。そのことがきっかけで、昭和56年に2人の知的障害のある人を雇用し、根気よく丁寧に教えながら作業を任せると期待以上に作業が遂行できたことから、彼らが十分戦力になることが分かった。
　その後は毎年のように障害者を雇用しており、株式会社秋田アルスで17名（聴覚1名、知的16名）、株式会社秋田オイルシールで13名（聴覚1名、肢体3名、内部1名、知的8名）、秋田オーリング株式会社で5名（肢体1名、知的4名）がそれぞれの部署で作業に従事している。

3. 取り組みの内容・今後の課題

（1）採用

　身体障害者の場合は、作業遂行の度合いが大きな判断基準であり、障害の種類は問わない。加えて、通勤の可否も一つのポイントである。
　知的障害者の場合は養護学校在学中に職場実習として受け入れ、作業意欲と家族の理解・協力について見極める。家庭に不安があれば、それがそのまま仕事にも影響するからである。
　また、なかなか親離れができなかった知的障害のある社員を雇用した際には、母親も一緒に臨時工として雇用し、6カ月後に別々の職場で働けるよう対応したこともある。

（2）研修・指導

　雇用後は、必ず研修を行う。株式会社秋田アルスにて専任の援助者が、ある程度の作業ができるよう順序よく説明しながら、仕事に慣れることを前提に行い、その後、グループ企業においてそれぞれの指導員が実践の場で指導を行う。
　身体障害者の場合、作業効率が平均値に至るになるまでに3～6カ月程要し、知的障害者の場合は、単純労務において2年程要するが、一旦身につけた作業効率は他の社員を上回るものがあり、長い目で取り組む必要がある。同時に、職業生活相談員や父母の会などで構成している障害者職場定着推進チームが一丸となって、職場や家庭において指導に当たっている。
　また、本人が持っている潜在能力を引き出すために、休憩時間を利用して紙折りや腕相撲など遊びながら手先の器用さや持続力、応用力を把握し、特性を生かせる職場配置の判断材料とする。
　指導は、本人の見極めながら「繰り返し、丁寧に、覚えるまで根気よく」を基本に行っている。特に当グループの製品は種類も多く繊細であるため、緻密な作業が要求される一方で厳しい競争の中では品質の低下は許されない。簡易なものから複雑なものへと徐々に難易度を高めながら、作業が発揮できる力を引き出している。ハンディのある社員は、指導された通りに定型作業を正確に遂行している。品質確保にとって最も重要なことであり、社業の発展への貢献度も高い。

検査部門（製品を一つ一つ目視で検査）

製造部門（真空加硫成型ラインでのシール製品の製造）

（3）視覚によるミス防止対策

　種類の多い製品は、同じゴムでも材料が全く異なるほか、大きさも似ており非常に間違いやすいため、絵表示にするなど製品が一目で分かるよう工夫している。

（4）健康管理

　障害のある社員の健康管理には特に留意しており、嘱託医師による健康診断を月1回実施し、継続データをもとに相談員が医師と相談の上、精神面も併せてチェックしながら対応している。

（5）社員寮の設置

　障害のある社員で年長の人は50歳代になり、特に知的障害のある社員の場合は作業能力の低下が目立ってくる。彼らに対し、退職後の生活の場を提供するため、知的障害のある社員30人が入居可能な2階建ての寮を建設し、現在は20人が入寮している。併せて、知的障害のある社員全員が「会社を辞めても一人で生きていける」ようにと、年金資金・共同住宅資金として毎月財形貯蓄をしている。寮においては、指導員兼務の管理人が、生活から職場に至るまできめの細かい指導・配慮を行っている。

社員寮

（6）今後の課題

　今後は、知的障害のある社員の高齢化が当グループの大きな課題であり、その対応として、内職的な授産のシステムづくりを検討している。