事業所名 :

松岡株式会社

所在地 :

山形県酒田市

事業内容 :

製糸、婦人服製造、電子・電器部品製造、システム開発等

従業員数 :

260名

うち障害者数:

5名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	製造（グラインダー操作）
肢体不自由	3	製造（電子部品製造に派遣(1)、婦人服縫製(2)）
内部障害	0
知的障害	1
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の現況
3. 取り組みの内容
4. さいごに

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）事業所の歴史

　当社は、平成19年に創業120周年を迎える歴史ある企業である。明治5年に庄内藩士3000人が開墾した松ヶ丘の土地で養蚕業が始められた。明治20年には松岡株式会社の前身である松岡製糸所を創設し、昭和45年に現在の松岡株式会社に改称した。
　事業内容は製糸事業に始まり、婦人服製造部門、電子部門、電器部門、システム開発部門と時代のニーズに応えながら、事業の多角化及び拡大を積極的に進めてきた。
　本社は山形県旧松山町（市町村合併によって平成17年より酒田市）にあり、また県内に村山工場と鶴岡工場がある。
当社の社是は、以下のとおりである。
　一、信用ある製品をつくり、広く社会に貢献しましょう。
　一、豊かな心を養い、誠意職務に勉めましょう。
　一、責任を重んじ創意と努力によって社業の進展を期しましょう。

（2）事業の内容

　現在の事業部門とその主な内容について、創業当時からの製糸事業を引き継いでいるシルク事業部は、特殊生糸「ファンシルク」を開発し、またブランドシルク「和木沢絹」「松岡姫」、ナイロン等との「複合糸」などを創出している。
　ファッション事業部は主に企業のユニフォームの生産を行っている。
　また、こうした繊維関係とは別に、カラープリンターの部品加工及び電気製品の表示装置に使用されている液晶表示装置の実装などの精密部品を生産する電子事業部、産業機器の金型などによる部品の制作を行うシステム開発事業部、VTR用磁気ヘッド、光学系レンズ、デジタルムービーカメラ鏡筒部品の組立・検査や、DVD、MDのレンズ検査などを行っている電器事業部がある。
　最近では、システム開発事業部が、従来金型を使用している自動車部品などに紙で成形を行う技術を開発している。この新技術の利点は、紙を使用することによるリサイクルが可能になることや、紙の特性を生かして軽量化が図れることなどである。これを大手企業に技術提案しているところである。

2. 障害者雇用の現況

　当社が最初に障害のある人を雇用したのは昭和52年である。その時採用された社員は今でも在職中である。
　現在は本社と村山工場で5人が在職中であるが、内訳として肢体不自由者（下肢障害）が3人、聴覚障害者（重度）が1人、知的障害者が1人である。肢体不自由者の2人がファッション事業部でミシン縫製、もう一人の肢体不自由者（両下肢）は電子事業部からの派遣で他社の部品製造ラインで働いている。聴覚障害者は、システム開発事業部でグラインダーの操作にあたっている。すべて公共職業安定所からの紹介である。
　当社は平成13年度までは法定雇用率を大きく上回っており、障害者雇用調整金（常用雇用労働者が300人を超える事業主で、障害者雇用率を超えて障害者を雇用している場合に支給される）の申請事業所であった。現在は、村山工場の移転等により従業員の退職もあり、調整金の支給は受けていない。

3. 取り組みの内容

（1）職場配置

　当社における多岐にわたる部門と職種は、障害者の雇用に大きな意味をもつ。障害の種類を問わず、事業主が考える障害者の雇用上の課題で最も多いのは、「会社内に適当な仕事があるか」ということである（身体障害者76.6%、知的障害者81.4%、精神障害者79.6%－厚生労働省「平成15年度障害者雇用実態調査」より）。
　障害者はその障害特性ゆえに制限も生ずる場合もあるが、職種を豊富に設定することで、彼らに適した職務を用意することができる。当社は自社の特徴を障害者雇用に有効に生かしている。
　ファッション事業部で勤務する2人の従業員は、雇用して30年近く経っている。1人は東京で縫製の経験があり経験者募集に応募してきた。もう1人は18歳で入社し現在に至っているが、その縫製技術は非常に高く、メーカー担当者からも最優秀の折り紙をつけられるほどである。現在はリーダーとして全体のとりまとめ役をこなしている。
　当社は、自社の工場での勤務に加えて、取引先の事業所に社員を派遣している。電子事業部に配属した肢体不自由を抱える従業員も他社に派遣し、製造ラインで勤務している。
　派遣先では自社ほど同僚からの理解や配慮が得られないこともあるが、作業上の能力が十分にあれば派遣も可能である。そこには「障害」ではなく「能力」に注目する当社の方針がうかがえる。

（2）職場での配慮

　聴覚障害のある従業員は、システム部門でグラインダー（研磨機械）を使用しているが、グラインダーの操作にあたってはモーターの回転音の確認が重要である。単に操作上の問題だけでなく安全の確保のために必要であるため、彼が安全に機械操作ができるよう、モーターがまわるとランプが点灯するパトライトを付けた。また、現在運転操作研修中の平面研削盤にも同様にパトライトをつけている。なお、コミュニケーションについては筆談で十分に対応が図られている。

グラインダーの運転状況を確認するためのパトライト

平面研削盤にもパトライトを取り付けた

　ファッション事業部で勤務する2人はともに下肢障害があるため、立ち続けて行う仕事は身体の負担が大きいことから、椅子に座って作業が行えるミシン主体の作業に特化して配置したことで、彼らはその能力を十分に発揮することができている。

（3）同僚・上司の対応

　聴覚障害のある従業員の上司は、通常の筆談に加え、自ら手話を覚えてより一層のコミュニケーションを図っている。
　また、ファッション事業部で勤務する下肢障害のある2人の作業においても同僚の協力がある。彼らの努力する姿を見て協力する周囲の従業員も、当社の障害者雇用を支えている。

4. さいごに

　当社が従業員の能力に最も適した配置と、仕事をさらにスムーズに行えるための配慮がなされている背景には、多角的な事業部門を持っていることもさることながら、伝統ができているのだと清野総務部長は言う。今後も障害の有無に関係なく、適切な人材がいれば雇用していく意向である。
　このような当社の障害者雇用の取り組みから、あらゆる事業所ごとに障害者雇用のあり方を見出すことが、障害者雇用促進にとって重要であることがうかがわれる。