タクシーと福祉を融合させた事業における障害者雇用
- 事業所名 :
- クラブ自動車株式会社
- 所在地 :
- 福島県郡山市
- 事業内容 :
- 旅客運送業及び介護福祉事業
- 従業員数 :
- 210名
- うち障害者数:
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 タクシー乗務員 内部障害 2 タクシー乗務員 知的障害 0 精神障害 0 - 目次


1. 事業所の設立経緯と事業内容
当社は、大正7年に山形県鶴岡市で乗合自動車業として創業され、その後、昭和2年に福島県郡山市でタクシー業を開業した。戦後は昭和35年に有限会社クラブ自動車商会、昭和59年に現在のクラブ自動車株式会社に組織変更された。
近年はそれまでの旅客運送事業に加えて福祉事業にも重点を置き、平成11年より訪問介護員養成(2級課程)研修事業所指定を受け、事業所内で社員に資格を取得させている。このことにより同年に介護タクシーを開業。また、平成13年には介護保険適用事業者認可を受け、指定居宅サービス事業を開始した。
当社の全職員数は、平成18年9月現在で210名となっており、その主な事業内容は貸切観光バス、タクシー・ハイヤー及び介護福祉事業となっている。介護福祉事業については、運送業のメリットを生かし、在宅介護の他に移送介護部門を設け、ヘルパー乗務員が高齢者の自宅から医療機関・福祉施設等への送迎を行っている。加えて一般のタクシー乗務員も多くは訪問介護員の資格を持って乗務を行っている。
地域でのNo.1タクシー事業者として旅客運送事業を通して、利用者の利便と地域社会の交通、観光、福祉に貢献すると共に仕事を通して人格の成長と安定した生活の確保を図る。
●人材育成の基本方針
当社85年の歴史と地域でのNo.1企業の誇りを持ちながら、サービス業としての意識を常に自覚し、全てのお客様のニーズに応えられるドライバー(ケアードライバー)を目指す。
2. 障害者雇用の状況
(1)雇用の状況
当社の従業員数210名のうち5名が障害者であり、障害者雇用率は3.33%である。以下、5名の障害の種別・等級及び職種を示す。
略称 | 性別 | 障害の種類 | 等級 | 従事職務内容 |
---|---|---|---|---|
A | 男 | 内部障害(心臓) | 1 | 乗務員 |
B | 男 | 内部障害(腎臓) | 1 | 乗務員 |
C | 男 | 下肢機能障害 | 6 | 乗務員 |
D | 女 | 上肢・下肢機能障害 | 3 | 乗務員(移送介護) |
E | 男 | 下肢機能障害 | 3 | 乗務員 |
彼らの職務は全て普通二種免許を持った乗務員である。男性従業員は車輌課に所属し通常のタクシー乗務をしているが、上下肢機能障害のある女性乗務員に関しては、二種免許に加え訪問介護員2級も取得し、福祉課に所属してタクシーによる高齢者の移送介護を専門に行っている。所属の違いは障害による区分ではなく、本人の取得資格や適性・性格などを生かした配置である。
(2)障害者雇用の経緯
当初から障害者に対し採用の是非の区別は無かったが、平成5年頃に障害者が乗務員の募集に応募してきたことが障害者雇用のきっかけである。この時は特に障害の有無で採用を判断したのではなく、本人の能力や乗務員としての適性の有無で採用した。その後、当社は複数の障害者を雇用するが、別途障害者を募集したのではなく、通常の募集に障害者が応募してきたものを区別無く採用した。
(3)職場での労働環境
5名の職種であるタクシー乗務について、基本的には一般の乗務員と同じ勤務体系であり、日勤・夜勤を含め週48時間勤務している。また女性乗務員については、タクシーを使用した移送介護が主な業務であるが、移送介護の性質上、朝6時から15時までの日勤のみの勤務であり、予約のあった高齢者の自宅ベッドからタクシーへの乗降時の介護、及び病院内あるいは施設内等への移動までが業務である。
基本的にタクシー乗務は同僚社員と過ごす時間は多くなく、個人で乗務していることが多いが、彼らが帰社した時の様子を見ると、職場は明るい雰囲気を持っている。


3. 障害者雇用に際しての工夫と配慮
(1)労働条件・社内体制
当社で勤務する5名の障害者の労働条件(労働時間・賃金・福利厚生)は基本的には他の乗務員と全く同一である。上肢及び下肢障害に関しては乗務員としての業務に全く支障が無いため、夜勤を含めた勤務体系となっている。ただし、内部障害者のうち腎機能障害者については、週3回、日中に人工透析を行っており、通常の勤務体系が取れないため、事業所の配慮により夜勤のみの勤務とした。透析を受けている場合、時間的な制約から一般企業では正社員になることが困難である場合もあるが、当社は透析を受けていても正社員として勤務できる態勢をとっている。
(2)人的支援
特に障害のある乗務員だけに対するシステムではないが、現在はGPSを使用した配車システムを採用しており、タクシーの所在地や移動を事務所で常に把握している。特に内部障害のある乗務員に対しては常に身体状況を心に留め、長時間の停車などがあった場合には付近の乗務員がすぐ駆けつけられる体制をとっている。
また、特に障害のある乗務員に対しては、有事の場合に家族とすぐに連絡がつくように、緊急連絡先を事業所が把握している。
(3)能力開発・教育訓練
障害のある乗務員を含めた教育としては、他のタクシー会社も行っていることであるが、免許を持たない採用予定者に対する普通二種免許の取得補助がある。
当社の特色は、訪問介護員養成を福島県の認可を受けて自社で行っていることにある。事業所として能力開発に取り組み、乗務員も含め、社員に対する訪問介護員の資格取得について積極的に推進したことにより、多くの乗務員が訪問介護員の資格を持ち、福祉事業の拡大とともに、障害にある社員に対する職域拡大へと繋がった。
(4)労働環境の改善
タクシー業務は、一日の運転業務が終了すると各自が洗車をし、タクシーを返却して帰宅するが、洗車が肢体不自由の乗務員には最も重労働であった。このため、当社は郡山市内ではいち早く自動洗車機を導入した。導入の経緯は労使の話し合いによるものであるが、とりわけ障害者も共に働く職場であることが強調され、労使ともそのことに十分理解をした上で導入した。このことにより、障害のある乗務員ばかりではなく、障害のない乗務員についても労働環境が改善された。障害者の労働環境の改善が事業所全体の環境改善に繋がっている。
4. 取り組みの効果
サービス事業に対する目に見える効果を計るものとして、利用者の評判や意見がある。当社の場合、市民からのタクシー業務に対する評判は良いが、特に高齢者の移送については、「気持ちがわかってもらえる」ため、障害のある乗務員個人に対しての評判が良く、利用にあたって個人の指名も入る。
障害のある乗務員をあえて宣伝している訳ではないが、その情報が利用者の間で自然と広がり、当社のイメージを高めているようである。
5. 今後の展望
当社は、これまでのタクシーによる旅客運送業に加え、福祉事業にも重点を置いている。しかし、福祉事業を全く別組織とはせずに、福祉関係の資格をもった乗務員も育成しているところに特色がある。一般的には介護ばかりに目を奪われていた福祉事業であるが、高齢者や障害者が好む場所あるいは必要な場所に自由に移動することも福祉にとっては重要なことである。タクシーと福祉を融合させた事業は今後も発展する可能性は大きく、そのような事業に障害者を積極的に参加させることは大切なことである。
今後は訪問介護員養成研修に加えて、精神障害者ホームヘルパー養成研修・痴呆介護実務者研修を社員教育に積極的に取り入れ、ケアードライバーを育成していく予定であるという。
今後の障害者の採用に関しても、特に区別はせず応募してきたものに対して公平に接し、採用を行っていく意向である。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。