2006年度作成

事業所名 :

共栄繊維株式会社

所在地 :

埼玉県さいたま市

事業内容 :

ウエス（機械の油拭き等に用いられる布）、工業用品（軍手、スムス、布手）の製造販売、中古衣料の輸出・販売

従業員数 :

133名

うち障害者数:

6名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	ウエス裁断
肢体不自由	3	コンベアを使用した選別、ウエス裁断、アパレルリメイク
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	2	ウエス裁断、洋服の選別

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯、背景
2. 業務概要
3. 取り組みの内容（発達障害者雇用の推移）
4. 発達障害者に関する当社の考察
5. 今後の課題・展望

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯、背景

（1）概要

　当社は、埼玉県さいたま市に本社工場、リネンサプライ工場及び関東圏に5店舗のアパレルセレクトショップを持つとともに、月間1,200トンもの中古衣料をアジア・アフリカ諸国に輸出する環境関連事業を行っている世界トップクラスの企業である。

（2）障害者雇用の経緯、背景

　社長を始めとする経営者が社会貢献活動としての障害者雇用に理解があること、更に「会社が必要とする業務の役割をキチンと果たせるならば、障害の有無を問わず採用する」との基本的な考え方の中で、平成5年から肢体不自由者・聴覚障害者の採用を行い、また近隣の養護学校（知的障害）からの実習も受け入れており、職場内には障害者と一緒に働いても違和感のない自然な雰囲気づくりができていた。

（3）発達障害者雇用の経緯

　平成17年7月に、埼玉障害者職業センターから発達障害者（高機能自閉症・アスペルガー症候群）2名の推薦があり、ジョブコーチ支援と併用した3ヶ月間のトライアル雇用制度を用いて、障害者職業センターのジョブコーチが職場生活をサポートする中で本採用に至り、その後の職場定着が図られた。

2. 業務概要

（1）工場全体の仕事の流れ

①納品入庫 → ②選別コンベアへの投入 → ③種類・用途別仕分け（1）・（2）

＜工程説明＞
　①近隣県から購入された原材料(古着・古布類)を工場に納品入庫する。

　②選別用コンベアへ投入し、選別場所へ移動する。

　③再利用（国内店舗販売用・海外輸出用）できるものとウエス用に使用できるものに分類・仕分けし、それぞれの工程(1)または(2)に乗せる。

　④生地の汚れや使用可能状態等をチェックしながら色分け・仕分けを行う。

　⑤ウエス裁断機で規定のサイズに布地を裁断する。（約40～50cm）

　⑥規定枚数にウエスをまとめ、梱包する。

　⑦衣服の擦り切れ・汚れ等を見て、再利用の可能性のチェックをする。

　⑧スーツやGパン等を折り畳み、種類別に規定枚数ごとにまとめてカゴに収納する。

　⑨カゴ収納されていた商品を梱包する。

　⑩フォークリフト等を用いて生産作業場所から出庫場所へ商品を移動させる。

　⑪商品が出庫されるまで出庫場所に積載して保管する。

　⑫フォークリフトにより販売先別に商品出庫し、トラック等に積載して搬出する。

（2）障害者が担当する業務

1）発達障害（2名）
　Mさん：アスペルガー症候群
　Oさん：高機能自閉症

2）身体障害
　・聴覚障害　⇒ウエス裁断
　・肢体不自由⇒コンベアによる選別、アパレルのリメイク、ウエス裁断

3. 取り組みの内容（発達障害者雇用の推移）

（1）採用までの流れ

①職業準備支援　⇒　本人に対し、障害者職業センターのワークトレーニング社にて2カ月の働くための準備を高める支援を受けてもらう

②面　　　　接　⇒ 人事担当者の面接を受け、実習を決定

③実　　　　習　⇒　2週間の実習を行う

④トライアル雇用　⇒　雇用契約を交わし、トライアル雇用により職務を遂行してもらう

⑤本　採　用　⇒　障害者職業センターのジョブコーチの支援を受けながら本採用とする

（2）ポイント

1）面接前の支援内容について、当社の業務とは異なる部品組立作業等で職業準備支援を受けた。

2）対象者は2名とも高学歴だが、発達障害のある経緯について面接時に当社に説明した。

3）障害者職業センターのジョブコーチが実習時から付き、当初はジョブコーチが職場のリーダーから仕事の説明を受けて、当人に仕事を理解させるようにした。

4）Mさんはウエス作業、Oさんは再利用作業で実習を開始した。

　Oさんが担当した再利用作業は、判断業務が少なく、Oさん自身もファッションに興味が深かったため、大きな問題もなくスムーズに適応できたが、Mさんが担当したウエス作業は布生地の選別（例：Tシャツで同じ白色でもメッシュとメリヤスは区分する）等の感覚的な判断業務が多かったため、適応に難しい面があったが、本人がノートにメモを取ることができたため、ジョブコーチと一緒にマニュアルづくりをして対応した。

5）実習からトライアル雇用の期間中もジョブコーチのコーチングの下で仕事への適応が図られた。

ジョブコーチの入り込み状況の変遷－
　・実習中　　　　　　＝3～4日／週（約半日）
　・トライアル雇用中　＝2～3日／週
　・本契約後　　　　　＝1～2日／週
　その後、2週間に1日となり、現在は3週間に1日となっている。

トライアル雇用の期間中、Mさんはマニュアルを作成して仕事を進めるようにしてきたが、生地の感触、織り方等、感覚で判断することが難しく生地の選別に自信が持てずにいた。正しく選別できた場合は、ジョブコーチから「大丈夫」とか「会社の人に聞いてごらん」という声かけで安心感を与えるようにした。

布生地のパターンが多種に亘り、マニュアルでは判断が困難な場合、「微妙袋」（判断が「微妙」なものを入れる袋という意味）を作り、とりあえず袋に入れて後から職場の人に見てもらうといったツールを作成するなどの改善も図った。

日常生活で身だしなみに気を遣うOさんに対し、トイレなど他の従業員に迷惑がかからない場所で整えるよう説明を行った。

6）トライアル雇用期間を通じて、仕事も一人で遂行できるようになり、入社当時に気を遣っていた職場のメンバーにもとけ込んで良い雰囲気となったこともあり、本採用に移行した。

現在、現場管理者とジョブコーチに本人も入り、繁忙期等に現場で聞けなかったことを話し合う場を持つ等、本人の自立に向けた対応を取るようにしている。また、年配者の女性パートの方が相談者となり、面倒見良く対応しているが、併せて周囲のメンバーが忙しい時には、現場管理者が新たな作業指示をメモにして本人に手渡しコミュニケーションを図る方法も取り入れている。

4. 発達障害者に関する当社の考察

Mさんは前職がシステムエンジニアと介護関係、Oさんは印刷関係と、ともに定型的な作業は初めてであるが、本人の気持ちが固まれば前向きに仕事に取り組むことができた。特に高機能自閉症のOさんの場合は、定型的で自分が得意とする分野では殆んど問題のないことがわかった。

Mさんの特性－アスペルガー症候群
　ウエスの許容範囲の大きさや汚れ具合の程度の適当さが判断できず、混乱してしまう傾向がある。作業を理解するために手順や注意事項をノートにメモを採るようにし、キチンと周囲が判断することにより、安心して業務に励んでいる。
　ミスをしてはいけないという気持ちが強い。全体朝礼で生産性アップの話をした場合、必要以上にプレッシャーを感じてしまうことがある。

Oさんの特性－高機能自閉症
　特に問題行動は見られないが、身だしなみには非常に気を遣っており、トイレに頻繁に行って鏡で顔を見に行くほか、通勤時の服装はスーツに革靴姿でキチンと身支度している。

5. 今後の課題・展望

社内は障害者に対する差別意識がない自然体の雰囲気にあり、仕事ができれば障害の有無に関わらず採用する基軸は今後も変わらず、これからもウエス作業や選別作業等が可能であれば障害者の採用及び実習受け入れは継続する予定である。

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