本人・家族・学校とコミュニケーションを図り知的障害者雇用に取り組む
1. 事業所の概要
(1)沿革
昭和24年(1949年)、千葉市登戸町(現・千葉市中央区登戸)に「登戸生活協同組合」を設立。その後幾度か合併、名称変更を経て現在の「生活協同組合ちばコープ」に至る。
なお、現在、いばらきコープ・とちぎコープ・コープぐんま・さいたまコープ・コープとうきょう・コープながのの6生協と、県域を越えたコープネット事業連合を作り、協同して事業を進めている。
(2)理念
生活協同組合の理念は、以下のとおり。
ともに はぐくむ くらしと未来
私たちは、一人ひとりが手をとりあって、
一つひとつのくらしの願いを実現します。
私たちは、ものと心の豊かさが調和し、
安心してくらせるまちづくりに貢献します。
私たちは、人と自然が共生する社会と
平和な未来を追求します。
協同組合の原点である「協同の心」、一人ひとりが暮らしを良くするために自ら行動し、ふれあい、学びあい、教えあい、助け合う精神とその行動。「豊かに暮らしたい」、「安心して暮らしたい」という一人ひとりの願いを大切にし、地球を守り、人間を尊重し、生命を慈しみながら、より良い暮らしと未来を創造していくことである。
人と自然、個人と社会、消費者と生産者、あなたと私など、それぞれの多様なあり方を尊重し、違いを乗り越え、くらしと未来をはぐくむ。
時代や社会構造が変わっても、人々がくらしの豊かさを願う気持ちは変わらず、食べ物から、健康、子育てなど、くらしに関するコミュニケーションを広げ、より良いくらしや社会をつくり上げ変えていく役割が、生協に求められているという。
(3)概要
当事業所は、8事業本部制をとり、「供給事業・共済事業・福祉事業・利用事業」等を主業務として千葉県全域に展開している。
地域センター(共同購入事業) 26
物流センター 3
店舗 23
介護事業センター 10
組合員数 487,546名(18.3.20現在)
従業員数 3,619名(18.3.20現在)
エキスパート職員(正規職員)890名
キャリア職員(嘱託職員) 53名
メイト職員(パート職員) 2,676名
2. 障害者雇用の状況
(1)現況
昭和57年(1982年)に知的障害者1名採用を皮切りに、以後順次コンスタントに採用を続け、現在に至っている。
下肢障害者 2級 1名
4級 1名
5級 1名
上肢・下肢障害者 1級 1名
体幹障害者 2級 1名
聴覚障害者 6級 1名
知的障害者 重度 3名
中軽度13名
(2)採用方針
障害者の実雇用率(18.6.1現在、2.08%)を念頭に置きながら、「地域社会とともに生きる」という理念・ビジョンに基づき社会的弱者といわれる方々の雇用に取り組んでいる。
当事業所が求める人材として、能力のある方であれば採用するという考えであり、障害者は別枠採用するとともに、応募者の中に障害者がいれば積極的に採用している。
本年度は、JRつくばエキスプレスの開通に伴い人口増が期待される流山市内に2店舗を新設(11月オープン)するにあたって、障害者については各店舗1名をハローワークを通して募集し、知的障害者2名の採用を決定した。
(3)勤続年数
障害のある従業員のうち一番長い人は、知的障害者の24年であり、知的障害者16名のうち10年以上勤務している従業員が13名と、定着率の高い職場である。ちなみに、障害者の最高年齢は身体障害者で50歳代前半である。
3. 知的障害への対応
当事業所の定着率が高い理由のひとつとして、平成12年(2000年)に物流センターとして開設稼動した、冷凍冷蔵食品を専門に扱う東金冷凍冷蔵センターでの取り組みに見られる、就労意欲の喚起のための知的障害者の家族を含めたコミュニケーション作りがあげられる。
(1)冷蔵センターにおける勤務状況
当冷蔵センターでは、5人の中軽度の知的障害のある従業員が勤務している。彼らは、開設時に他の事業場(八街・習志野・四街道の三センター)を統合した際に転入した従業員であるが、上は37歳(勤続19年のベテラン)から下は29歳(勤続10年の中堅)と油の乗り切った戦力となっている。
5人は主として、空になったプラコン(プラスチックケース)を整理整頓し、所定の場所へ移動させるという、いわば単純作業に従事している。彼らを指導する担当者は「個性の強い5人である」と話す。
(2)家族や出身学校と協力しトラブルに即対応
彼らは人間関係でトラブルを起こすことも多く見られるが、大体が単純な事柄であり、話を聞いて解決しているが、必要に応じて家族に連絡するほか、出身の養護学校の教員に対応してもらうなど、適宜、即対応している。彼らの示す親愛表現がセクシュアルハラスメント問題となることもあったが、これもセンター全体の問題として即対応し解決した。
(3)見学会、職場だより
当センター独自の取り組みとして、家族とのコミュニケーション作りとして実施している「ご家族職場見学会」を定期的に開催することと、「東金だより」という広報紙形式のお便りがあげられる。見学会は半日コース(10時から12時まで)で設定する。
(プログラム例)
10:00~10:20 男子メイト職員の役割
現在の役割 プラコンの回収と整理作業
今後適正を考え 積み付け作業・箱洗い作業に拡充予定
10:20~11:00 作業場の見学 仕分け室~仕分け前室~プラコン置場
~洗い場~積み付け
11:00~12:00 座談会 職場・家庭での様子
「東金だより」は5人一人ひとりの近況と、家庭への連絡事項が掲載されている。18年5月発行のたよりには、翌月予定の職場旅行等の記事を掲載した。
その他、日々の作業には「指導・介助・援助・業務日誌」が設けられ、個別の出勤状況や、日ごとの実施内容を記入する内容になっていること。また毎日の終礼時に「顔を見、話をする」という職場での細やかな対応を実施している。
4. 職場体制・環境
(1)教育訓練
採用時の教育訓練について、知的障害者以外は一般的な内容を実施している。知的障害者の場合は、事前に養護学校等からの職場実習(原則2週間から4週間、2週間を2回実施することもある。)で受け入れた生徒を採用しているため、特別な研修は行っていない。
(2)健康管理
障害者・健常者の区別なく、年一回、35歳以上については年二回の定期健康診断を産業医の指示のもとに行っている。
知的障害者については、家族から健康診断結果に対する感想を聞くなどの対応をとっている。
(3)労働環境の整備・改善
地域から信頼され、社会に貢献できる「ちばコープ」をめざし、環境、平和、食育、次世代育成支援など時代やくらしのテーマに積極的に取り組んでいるなかで、「働きやすい職場環境づくり」も積極的に進めている。
例えば、男女共同参画の取り組みでは、当事業所の基本方針を策定し、男女共同参画推進室を設置するなど、多様な働き方のできる人事制度の導入を果たしている。
平成15年に、育児・介護支援制度と運用が評価され『ファミリー・フレンドリー企業』として、厚生労働大臣表彰を受賞した。
5. 今後の課題と展望
現在は、身体障害のある従業員は事務系、知的障害のある従業員は現場ということで対応している。知的障害のある従業員については、当面職場の配置換えは考えていないが、近い将来においては条件が整えば実施していきたい構想を持っている。
また、精神障害者を含めて障害者の職域拡大を図るとともに、接客面への配置等について今後の課題と考えている。
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