福祉作業所との連携のもと、企業内作業所を設置し知的障害者を雇用
1. 事業所の概要
（1）アデランスグループの概要
アデランスグループの企業理念は、永遠のヒューマニズムと時代に即した英知により、健康で心豊かな生活と快適な社会を創造し、『ウェルネス』の実現を目指します
株式会社アデランス本社における障害者雇用の表彰について、平成17年度に社団法人東京都障害者雇用促進協会新宿支部から障害者雇用優良事業所として表彰を受けた。
（2）当社における企業内作業所の設置運営
平成15年に新設され、重度知的障害者5名と指導員1名を採用した作業所の名称は、アデランスグループ企業理念のもと、健康や豊かさを実感できる労働の場となるように、「ウェルネス工房」と命名し、アデランス社員のキーワードである「GENKI」（G…元気に仕事、E…笑顔で接客、N…のびのびした人間関係、K…希望あふれる会社、I…イキイキした職場）を実践しつつ、地域に密着した社会貢献活動の一環として運営している。
2. 障害者雇用の取り組みの経緯（企業内作業所の設置）
（1）設置の経緯
新潟県胎内市の社会福祉法人七穂会は、廃校跡地に開設した分園「虹の家高浜」が直ちに満員になったため、現在の利用者の社会復帰を図ることで定員枠に余裕を持たせ、入所希望者を受け入れたいとの希望を持っていた。
七穂会の隣接地に所在する当社は、障害者雇用を推進するにあたり、同法人と連携し障害者雇用を図った株式会社クラレ（当ホームページ内の2005年度事例を参照）の作業所を見学し検討した結果、その十分な広さを持つ社有地に設置する判断をした。
（2）作業内容の設定
障害者が従事する職務内容の検討が出発点であった。当社には全国の店舗から使用済のかつらが集まることから、かつらの止め具であるストッパーをはずし、かつらにハサミを入れ、産業廃棄物として区分し廃棄する職務を設定した。作業工具はペンチとハサミを使用する。
さらに、アデランスグループで展開するかつらの展示試着や撮影会開催案内のダイレクトメールに宛名シールを貼り付け、封筒に文書を入れる作業や、かつらケースの組立作業、製品配送用ダンボールの作製とグループ会社への納品作業と職域の拡大を図った。
作業の流れは、季節や午前・午後で変えている。作業の緊急性と作り置きのできるものとを臨機応変に組み合せている。このことが社員に作業へのマンネリ感を持たせず、意欲や集中力の持続につながっている。
なお、工房で勤務する社員の作業が途切れないよう、グループ会社も含め全社で協力体制をとっている。
（3）雇用状況
平成15年に重度知的障害者を5名採用してスタートしたウェルネス工房は、平成16年に2名を増員し現在7名を雇用している。勤務年数が最も長い社員は4年目になる。指導員は現在2名体制で指導している。なお、生産本部においては2名の障害者を雇用している。
3. 取り組みの内容
（1）募集方法
ハローワーク、七穂会との協力により募集を行い、面接のうえ採用している。
（2）労働条件
勤務時間 ：9:00から15:45 実働6時間（休憩45分）
休日 ：土曜、日曜、祝日及び当社の指定した日
雇用契約期間 ：1年間。双方合意のもとに契約を更新する。
社会保険の加入状況：全員加入。
賃金 ：時給。最低賃金適用除外申請を行っている。
福利厚生 ：社員食堂の利用、行事など当社と同様。
（3）組織と指導体制
工房の運営については、当社が指導員と月1回細かな打合せを行う。なお工房では仕事の流れが変わりやすいため、作業に空きが生じないよう、指導員は当社と連絡を密にしている。作業場所が工房と当社とに分かれる場合もあるが、配置に支障が生じないよう体制を調整している。指導員が休暇で人手不足のときは、当社から応援が入る。
（4）指導内容
生活指導は、必要に応じて七穂会の援助を得ながら指導員が対応している。
作業は工具等の使用を含め指導員が繰り返し根気良く指導する。障害のある社員の習得状況に個人差はあるが、障害特性に応じ一人ひとりに適した指導をしているため支障は無い。
なお、彼らの中には作業手順を忘れることがあるので、以前に従事した作業であっても指導員は再度作業方法を説明し、検品している。
基本的に、指導員は彼らに随時説明や対応がとれるよう、常に彼らの傍らで指導を行っている。
また、指導員は工房社員の個別面談を月一回実施している。
（5）安全対策
ハサミなどの工具類は工房事務室で管理している。また事務室から工房内が一望できるよう、各部屋の窓を拡大しガラス張りのようにしている。
（6）家庭との連絡・健康管理・通勤対策
各家庭との連絡について、連絡帳によるやりとりを行っている。毎週工房社員がその週を振り返った内容を書いたものに、隔週ごとに指導員がコメントを加え、各家庭に持ち帰る。家庭では返信や家庭での状況を記入し工房へ戻す。内容に対して、特に健康状態には気を配っている。
年一回の契約更新時には、本人との2者面談や家族を含めた3者面談を行う。その際は本人の良いところを伝えている。
通勤対策について、通勤用自動車購入のための助成金を新潟県雇用開発協会に申請し、認定を受けて購入、運行している。車輌ナンバーは、社員が覚えやすいよう工房の電話番号に合わせている。
（7）七穂会との連携
七穂会の「虹の家高浜」の忘年会や社会見学等の行事には、企画段階から参加し、当法人利用者の就職に係る連携体制を継続的に確保している。
4. 取り組みの効果
当社において、最近3年間の離職者が出ていない。社員にとっては、就職ができたことと当社の対応に喜びと張り合いを感じており、前向きに仕事に取り組んでいる。体調不良以外欠勤もほとんど無い。
また工房社員が当社にて作業する機会もあるほか、作業場所も取り扱った製品の当社への納入においては、工房の社員が搬入すること、社内食堂を共用で使用することで、当社の社員との関わりが日常的に生じ、暖かい声かけを受けることによって彼らは孤立感を持つことなく勤務している。
5. 今後の課題
現在工房で勤務している7名の勤務状態は安定している。しかし、彼らの平均年齢が高くなっているので、今後の作業効率や意欲に注意していく必要がある。
また、引き続き安定した仕事の確保を図ることも必要である。
6. さいごに
当社は、七穂会と株式会社クラレが実現した社会復帰の成功例を参考に、工房を設置し7人の障害者雇用を実現した。
指導員にとっては、問題行動が生じた際も含めて、彼らの特性に応じた対応について同法人から支援を受けることができ、福祉と雇用が途切れずに取り組まれている状況である。併せて同法人と隣接していることから、社員は仲間と交流があり孤立感が解消される。
また、当社の社員との日常的な関わりの機会を設けるほか、本社では社内報にて工房の開設を周知し、随時工房の現況をグループ全社員の目にふれるよう発行する取り組みは、企業理念を生かした位置づけの表れでもある。
大企業の法令順守の気風が進んでいる中、障害者雇用の進め方に対する株式会社アデランスの取り組みは他の大企業の参考事例として紹介することができる。
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