事業所名 :

株式会社メープルハウス

所在地 :

石川県金沢市

事業内容 :

カフェ・レストランなどの飲食業、洋菓子製造販売、フラワーショップ、ブティックなど

従業員数 :

53名

うち障害者数:

1名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	1	洋菓子包装業務
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 知的障害者雇用の経緯（職場実習の受け入れ）
3. 雇用前実習の実施
4. さいごに

事業所外観

1. 事業所の概要

　昭和61年に設立した当社は、カフェ・レストラン営業を中心として洋菓子の製造販売など多種の事業を展開している。平成18年4月には株式会社となり現在全国に15店舗を展開するなど成長著しい企業である。社長や人事担当である常務は、障害がある人の雇用には「障害があっても働く意欲と企業が求める水準をクリアできれば十分雇用できる。」と前向きである。
　当社で雇用した重度知的障害と自閉症のあるNさんが働く本店では、焼成部、仕上げ部、包装部、カフェ・レストラン部、フラワーショップ部があり、Nさんは包装部に配置した。

店舗内

2. 知的障害者雇用の経緯（職場実習の受け入れ）

（1）養護学校在学生の職場実習の受け入れ

　中学部3年生から高等部3年生までの4年間の就労に向けたプログラムを組み、産業現場等における実習（現場実習）を実施する金沢大学教育学部附属養護学校に在籍していたNさん（男性）は、クッキーづくりをしたいという希望を持っており、当社において高等部3年生の6月に2週間、10月に2週間実習を受け入れた。
　1回目の実習では、焼成部にて焼成作業の補助作業をしてもらったが、専門的技術を必要とする作業が多く作業量の確保に課題があったため、人事担当者は学校の進路担当者との相談のうえ、2回目の実習を受け入れるとともに、包装部にてシール貼りやクッキーのケース詰めといったルーチン化した作業を設定した。
　この包装部における2週間の実習に対するNさんの作業を評価し、Nさんを内定した。

（2）雇用にあたっての課題

　素直で真面目であるが、言語のみによる指示の理解や場面の理解が苦手であるNさんは、大声や厳しい口調での指示や注意を受けると情緒が不安定になり、時には泣き出したり大きな声を出して物にあたることが学校生活場面で見られた。また、時間に対するこだわりも若干見られる。
　高等部3年生の夏休み中に、障害者職業センターのワークトレーニング社におけて1週間、職業準備支援を受けたが、指示に対して泣き出すことが数回あり、精神的な耐性の強化が課題として挙げられていた。

3. 雇用前実習の実施

（1）各支援機関からの支援

　10月に受け入れた2回目の実習から4月1日の採用まで5ヶ月間空くことと、現場実習後も学校生活場面にて情緒が不安定になることから、当社は、学校から申し入れを受け、次の点を趣旨として雇用直前の1週間、現場実習（雇用前実習）を受け入れた。

　雇用前実習を受け入れるにあたり、当社は、障害者職業センターのカウンセラーがNさんと保護者、進路担当者、担当ジョブコーチと就職にあたっての不安や予想される課題に関する話し合いを基に策定した事業主支援計画について提示を受けた。
　なお、実習の際には、石川県では障害者就業・生活支援センターの支援員が養護学校高等部3年生の現場実習時に学校と連携して支援を行っているが、Nさんの支援を行った金沢障害者就業・生活支援センターの支援員においては、障害者職業センターの第1号職場適応援助者（ジョブコーチ）でもあるため、進路担当者、障害者職業センターの配置型ジョブコーチと併せて、雇用前実習時にも引き続き支援に加わってもらった。
　当社はNさんの雇用前支援を受け入れるにあたって、学校・障害者職業センター・障害者就業・生活支援センターの三機関の連携による支援を受けた。

Nさんの作業の様子

（2）スムーズな雇用と職場定着に向けた取り組み

　当社におけるNさんの2回の実習で見られた課題や雇用前実習の課題について、ジョブコーチや進路担当者による課題解決のための提案を受け、対応した内容は表2のとおり。

　雇用前実習時に、従業員がジョブコーチや進路担当者から実際に指示や説明の仕方などモデルとして提供を受けたこと、また、雇用前実習の最終日に、特に心配されていたNさの情緒が不安定にならないような配慮や、不安定になった時の対応について従業員全員が支援者と話し合えたことは、当社でNさんを雇用する上で非常に意義があった。

Nさんの作業の様子

4. さいごに

　現在のNさんの仕事ぶりについて、雇用前実習時には5種類の作業に従事したが、わずか4ヶ月余りで10数種類の作業をこなしており、材料の準備や片付けまで一人でこなしている。雇用前に心配された、泣き出したり大きな声を出す状況は一度も見られない。
　Nさんと共に働く従業員は、彼の特性を理解し、安定して働けるよう配慮している。
　障害のある人々が、それまでの学校生活から就労場面に移行する際、事業所はいかにスムーズに受け入れることができるか。このことは事業所における課題点でもあり、彼らを社会に送り出す学校にとっても重要な関心事である。
　当社のNさんに対する取り組みは、学校生活から職業生活への移行という視点で、事業所が、学校と就労支援機関と連携して実施する雇用前実習の重要性を示唆している。