障害特性を踏まえた作業構成と柔軟な受け入れにより
障害者雇用に取り組む
- 事業所名 :
- エダ産業株式会社
- 所在地 :
- 石川県金沢市
- 事業内容 :
- 制御盤及び関連部品の塗装
- 従業員数 :
- 15名
- うち障害者数:
- 3名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 1 制御盤等の運搬・磨き 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 2 制御盤等の運搬・洗浄 精神障害 0 - 目次
1. 事業所の概要
昭和28年に繊維染料や工業薬品の販売を事業として始業した当社は、繊維産業が衰退する状況を鑑み、事業内容を機械塗装業及び建築設計業に変更し、今日に至っている。
塗装事業部門においては、各企業からの発注に応じて、配電盤、分電盤、冷暖房制御盤、監視制御盤、溶接機用制御盤といった各種制御盤を中心とした、あらゆる機械部品の塗装を行っている。
2. 障害者雇用の経緯と現況
(1)経緯
平成13年にハローワークに求人を募集したところ、聴覚障害のある人(Aさん)の紹介を受け採用したことがきっかけである。
はじめはコミュニケーション面での不安があったが、本人に対しては手話通訳士を通して職務内容の説明が可能であること、また石川県障害者職場実習制度(以下、県実習)が利用できることについて説明を受け、まずは県実習を利用することとした。県実習期間中にコミュニケーションの不安は徐々に薄れ、本人の働きぶりも評価できることから採用するに至った。
その後の障害者雇用について、当社の事業内容は、制御盤や関連部品の外枠の塗装が主であるが、その形状は様々であり塗装も様々な方法で行われるため複雑な内容であったことと、塗装以外に運搬や洗浄など多くの作業が発生することから、効率的な作業遂行のため職務を分担したところ、運搬や洗浄を主に従事する人材が必要になった。その際、Aさんを雇用した経験から、塗装の補助として障害のある人を雇用することとし、現在はAさんと知的障害2名の計3名の障害のある人を雇用している。
当社で働く知的障害のある従業員の1名は、金沢市社会福祉協議会(以下、金沢市社協)の就業支援担当(ジョブコーチ)との連携において進められた。
(2)障害者の雇用状況
障害種別 | 仕事内容 | 勤務期間 | |
---|---|---|---|
Aさん 男性 |
身体障害(聴覚障害) | 制御盤等の磨き作業 制御盤等の運搬 |
5年1ヶ月 |
Bさん 男性 |
知的障害B(軽度) | 制御盤等の運搬 制御盤等の洗浄 制御盤等のエアーがけ |
1年7ヶ月 |
Cさん 男性 |
知的障害B(軽度) | 制御盤等の運搬 制御盤等の洗浄 |
1年5ヶ月 |
3. 取り組みの内容況
(1)聴覚障害への取り組み(Aさん)
1)雇用の経緯
平成13年7月、ハローワークからAさんの紹介を受け、県実習を2ヶ月間利用した。県実習開始時に手話通訳士を介して作業説明を行ったことで、Aさんも徐々に仕事に慣れていくことができ、従業員とジェスチャーや口話にてコミュニケーションがとれるようになった。実習中にコミュニケーションの不安は徐々に薄れていき、本人の丁寧な作業が認められ、採用となった。
2)職務配置
①制御盤等の磨き作業
工具を使用し様々な形の制御盤等を磨くため、手先の器用さと丁寧さが求められる。

②制御盤等の運搬作業
磨き作業の合間に、塗装や磨く場所への運搬と、塗装を焼き付ける焼き釜への出し入れを行う。手に持てる小さいものもあれば、台車に載せ2人がかりで運ばなければならない大きさのものもある。焼き終わった直後の制御盤等は熱く、火傷に気をつけながら行うこともある。
他の従業員から声をかけられる場合や、時間が決まったものもあり、状況に合わせ運搬している。
3)現在の状況
Aさんの職務内容は専門的ではあるが、その分ある程度の判断とパターンを覚えることができれば、言葉でのコミュニケーションをあまり必要としない。磨く作業と運搬を主な職務として固定したことで、仕事にも早く慣れることができた。
社内の連絡事項について以前は手話通訳士を依頼することがあったが、最近はコミュニケーション面の問題は少なく、何かあればハローワークに連絡することとなっている。作業の説明や休憩時間では、Aさんは従業員と言語以外のコミュニケーションを通して意思疎通できるようになっている。
言語でのコミュニケーションがなくても仕事をこなせ、安定した出勤をしているAさんを評価し、雇用を継続している。
(2)知的障害への取り組み(Bさん)
1)雇用の経緯
他者とのコミュニケーションをとることが苦手であり、自らの意思を訴えることが少なく、難しい言葉になるとわからないことがあったBさんは、ジョブコーチ支援を希望していたため金沢市社協に登録し、自分に合う仕事を探りながら求職活動を行っていた。
当社は、平成17年1月にハローワークからBさんの紹介を受け県実習の利用を開始した。職務内容は制御盤等の運搬や洗浄等の補助であった。当社はBさんの知的障害に対し、一つの個性と考え対応した。また、Bさんも指示に対し問題なく遂行し、作業場面で最低限の意思疎通ができたことを評価し、県実習で1ヶ月間、トライアル雇用を3ヶ月間利用し採用した。
なお、Bさんの雇用により知的障害への理解が深まり、もう1名の知的障害のある人の雇用へのきっかけとなった。
2)ジョブコーチ支援
Bさんの県実習を開始するにあたって、担当者は、金沢市社協の就業支援担当からBさんのコミュニケーションの特性、特に簡単な言葉での指示は理解できることについて具体的に説明を受けた。当初Bさんは作業についてわからないことがあっても、自ら従業員に尋ねることが少なく指示待ちの状態であったため、適切に質問できるよう、就業支援担当の支援を受けながら、質問するタイミングの理解を図った。
3)職務配置
①制御盤等の運搬作業
内容についてはAさんと同じである。主に小さいものを運ぶが、時には30キロ近くの制御盤を台車に載せ工場内を運搬するなど、体力を要する。

②制御盤等の洗浄作業
主に部品の洗浄を行う。業者から搬入された制御盤等には、油性インクによるマーキングと油がついているため、ハケで薬品をまんべんなく塗り布でふき取る。部品の角の細かい部分は拭きにくいため手先の器用さが求められる。
③エアーがけ作業
Bさんは、運搬において体力的に負担がかかることから、当初は作業の区切りをつけず定時に作業を切り上げ残業を拒むことがあった。しかし、県実習が進むにつれて重い制御盤等を運搬できるようになり、トライアル雇用後からは勤務時間を延ばすまでになった。
1年半経過した現在も運搬と洗浄が主な職務だが、Bさんの真面目な仕事振りを評価し、新たにエアーがけ作業を加えた。
制御盤等によって位置が異なるネジ穴を見つけエアーをかける。

4)現在の状況
当初は分からないことを自ら尋ねることが少なかったBさんだが、質問のタイミングについて就業支援担当から説明を受け、最低限の質問はできるようになった。また、従業員が簡単な言葉で指示するほか、うまくできていない部分については繰り返し説明するといった柔軟な対応により作業面の課題も克服できた。
採用後1年半経過した現在、少しずつ仕事の幅が広がりつつあるBさんに対して、様々な職務を覚えていくよう期待している。
(3)知的障害への取り組み(Cさん)
1)雇用の経緯
Bさんに対してトライアル雇用を利用することが決まり、知的障害についての理解が深まった頃、軽度の知的障害があるが、他の従業員と同様、教えられたことや指示されたことはこなすことができ、コミュニケーションや作業能力に大きな課題が見られないCさんについて、ハローワークから紹介を受けた。県実習と3ヶ月間のトライアル雇用を通じてCさんの作業能力を評価し採用した。
2)職務配置
①制御盤等の洗浄作業
主に大型の制御盤等の洗浄を行う。内容はBさんと同様である。制御盤等の大きさに合わせて脚立を使用するなど臨機応変な判断にも対応できている。また、作業内容も正しく把握しており後輩に説明もしている。

②制御盤等の運搬作業
洗浄作業の合間に運搬を行う。内容はAさんと同様である。周囲の状況を見ながら行うことができている。
3)現在の様子
性格が明るく愛嬌があるCさんは、皆から好かれている。後輩への指導の役割も果たしており、高く評価している。
4. さいごに
当社は障害の種類によって採用の是非を考えることは行っていない。彼らが当社が求める職務が遂行できれば採用している。どのような障害があっても仕事ができれば評価することが、現在雇用している3名にとってもとても励みになっている。
なお、当社は、精神障害のある人に対し、短時間勤務や段階的に勤務時間を延ばす方法で雇用し、その人の長所である記憶力を活かして、種類や方法が多いマスキング作業を一人で黙々とできる空間を割り当て任せていた経験もある。
障害特性を理解し効率的な作業を構成するほか、従業員の柔軟な受け入れ態勢、すなわち彼らの相談に応じる人間関係ができていることも障害者雇用を進めるうえでの当社のポイントとなっている。
就業支援担当 吉藤 佳奈子
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