2006年度作成

事業所名 :

アイシン精機株式会社

所在地 :

愛知県刈谷市

事業内容 :

自動車部品及びベッド・シャワートイレなどの住生活関連商品並びにガスエンジンヒートポンプなどのエネルギー関連商品の製造販売

従業員数 :

11,600名

うち障害者数:

164名

障害	人数	従事業務
視覚障害	11	ヘルスキーパー、法務、人事事務等
聴覚障害	60	自動車部品製造・検査等
肢体不自由	59	人事・安全衛生に関する事務等
内部障害	28	生産技術、人事事務等
知的障害	5	自動車部品製造等
精神障害	1	廃棄物の分別処理等

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の理念・経緯
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果

1. 事業所の概要

　当社は、1943年、航空発動機を製作する東海飛行機株式会社として創立、1945年にはミシン自動車部品生産へと事業転換し、1965年に現在の社名とした。
　事業内容は、自動車部品の製造を中心に、豊富な雇用技術を生かし、住生活機器、エネルギー関連、福祉関連機器等の製造に進出しており、刈谷市、半田市などに11工場を設置し運営している。

2. 障害者雇用の理念・経緯

（1）理念

　当社の障害者雇用の理念は、「ノーマライゼーション・共生」障害をお持ちの方もそうでない方もみんなが生き生きと働ける環境づくりとしている。

（2）障害者雇用の経緯

　バブル時に年間600～800人を新規採用した当社は、平成3年～5年にかけ障害者雇用率が1.52%と法定雇用率を下回る状況となったことをきっかけに、これまでの「法定雇用率を維持するために不足分の採用活動を行う」という考え方や「納付金を支払う」という消極的な考え方ではなく、雇用率2.0%以上を目標にするとともに、企業の社会的責任として障害者の働く場を積極的に提供する方針を打ち出し、平成9年に当社で働いている障害のある社員を対象にアンケートを実施、翌年にはアンケート結果から把握した課題に対し1つずつできるところから対応してきた。
　さらに継続的に障害者雇用に取り組むべく、「今後の障害者雇用について検討する」短期プロジェクトを発足し検討を行った結果、採用から教育・定着まで一貫して行える組織が必要との結論に達し、平成11年には「しんせつ業務開発室」に障害者支援のための専門チームを設け、当社の目指す『健常者も障害者も共に生き生きと働ける職場づくり』に向け、障害者だけの特別な職場を設けず、健常者と対等に働けるような環境整備を実施してきた。
　なお、当専門チームは、平成14年に企業市民活動を推進する「さわやかふれあいセンター」と統合され、障害者支援チームとして、引き続き皆が生き生きと働ける職場環境づくりに努めている。

3. 取り組みの内容

（1）下肢障害への取り組み

1）自動車部品の精密検査
　加工完成品の洗浄具合の確認を顕微鏡を使用する。精密測定を行う作業台の高さを車いすの寸法に合わせ、下部を膝が奥まで入れるよう改善した。

2）自動車部品の組付け
　高さや体勢保持などが調整できる作業いすを製作した。
　この改善によって、障害者も健常者と同じ高さで仕事をすることが可能になり、生産性も向上した。

3）設備改善
　具体的な改善内容は、以下のとおり。
①車いす使用者用駐車場及び駐車場案内板の設置
②入口にスロープの設置
③車いす使用者が操作しやすいFAXの設置
④障害者用トイレ及びトイレ案内板の設置
⑤エレベーター内に車いす使用者を配慮した背面確認鏡の設置

（2）視覚障害への取り組み

　従業員の健康維持及び予防のためのマッサージについて、20分コースと40分コースを設定。
　社内のインターネットを使い予約業務を実施し、受診後はパソコンでカルテを記入する。
　利用者の受付からカルテ作成まで1人でできるよう、パソコンには音声ソフトをインストールするほか、拡大読書機を設置した。
　通勤面においては、行政へのはたらきかけにより点字ブロックや音響信号を設置した。

（3）聴覚障害への取り組み

　自動車部品などの検査及び組付け作業において、図面を確認しながら実施。
　コミュニケーションは、主に口話・筆談だが、必要に応じてその都度手話通訳者の派遣を受けている。また、プリント機能のついたホワイトボードや携帯用ホワイトボード、携帯メールFAXを併用している。

（4）採用

　積極的に聾学校や養護学校、職業能力開発校等に対し募集の連絡をし、書類、職場実習、面接や作文により採否を検討する。

（5）教育

①新入社員、特に聴覚障害者については、事前に自分の障害について、また健常者の中でうまくコミュニケーションをとって働く心構えについて考える教育を実施。
②終業後に聴覚障害者と同じ職場で勤務する従業員や手話ボランティアが集まって手話教室を行っている。教室は1週間に1回、3ヶ月コースで開催し、講師にはその工場の聴覚障害者が先生になって手話を教えている。
③職場定着に時間を要する従業員に対しては、ジョブコーチの支援を受けながら、作業指導や教育を実施。

④障害への理解を深めるため、管理監督者研修を年1回実施。座学やグループワークに加え、様々な障害体験を設けている。

⑤管理者となった社員全員に対し、障害者雇用、障害への理解、接し方に関する研修会を実施。

（6）職場定着

①各工場に生活相談会を設置し、障害者職業生活相談員が、本人やその職場の従業員に対してヒアリングすることにより、問題の早期発見・早期解決を図っている。
②機械検査、有機溶剤取扱、アーク溶接機取扱など、様々な資格が取得できるような環境をつくり働きがいにつなげている。

（7）アビリンピックへの参加

　平成18年から参加。機械CAD種目でアビリンピックに参加した従業員は、週2回のトレーニングにより県大会にて優勝、第29回全国障害者技能競技大会にて優勝し金メダルを獲得し、平成19年に静岡で開催される第7回国際アビリンピックへの出場権を獲得した。

（7）助成金の活用

障害者雇用に際し活用した助成金は以下のとおり。
①第1種作業設備設置等助成金（エレベーターやトイレなどに活用）
②障害者介助等助成金（手話通訳担当者委嘱）
③特定求職者雇用開発助成金

4. 取り組みの効果

（1）採用について

①「自分の意思でどこにでも行ける」をコンセプトに、バリアフリーが具現化された。
②障害者自身に職場実習を通して「社会参加」を体験させることができた。
③各工場における協力体制が徐々に浸透されてきている。
④ヘルスキーパーの採用により、従業員の健康維持（筋肉痛や肩こりなどの軽減）が図れている。

（2）教育について

①障害特性に応じた接し方や支援の方法を学ぶことで、従業員が理解を深め、彼らと自然に接する環境ができている。
②彼らに「障害」に対してあらためて考える教育を実施することで、「自分のできること」「できないこと」が整理され、どのような支援が必要かを職場に伝えられるようになってきた。
③新入社員や中途障害者に対して、同じ障害の先輩社員を紹介することで、今後の働き方や生活についての不安が軽減され、励ましになっている。

（3）職場定着について

①生活相談会を設置することで、職場環境の改善など議論できるようになった。
②資格が取得できる環境があるため、働きがいにつながっている。
③アビリンピックに参加することで、感動を共有でき、「自分もがんばろう」というやりがいにつながっている。

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