障害特性に応じた対応と社員教育により定着率の向上を図る
- 事業所名 :
- 小川工業株式会社
- 所在地 :
- 和歌山県橋本市
- 事業内容 :
- 自動車関連部品等の製造・販売
- 従業員数 :
- 138名
- うち障害者数:
- 5名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 営業、検査、設備メンテナンス 内部障害 0 知的障害 2 出荷、製品の仕上げ等 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
当社は、オートマチック・トランスミッション用の部品及びシートベルト用ファインプレス品など様々な自動車部品、また建築用高ナットなど付加価値の高い加工・特殊技術を活かした製品を国内の数々のメーカーに提供している技術主導型企業である。本社は、高野山の麓に位置する橋本市内にあり、近代的設備の導入された工場が国道沿いで稼動している。
当社は、設備部門の管理から企業の体質改善・体質強化までの全社的活動である「TPM(トータル・プロダクティブ・メンテナンス)活動」すなわち設備の管理から企業の体質改善・体質強化に至るまでの全社的な活動を奨励している。機械保全技能士資格の取得を奨励し、2006年3月には機械保全技能士資格保有者が56名に達するなど、社員の技能アップと企業の体質強化に早くから取り組み、TPMの優秀賞第1類に引き続き、2006年10月には、第1類継続賞を受賞した。

2. 障害者雇用の経緯と現況
(1)障害者雇用に対する姿勢
佐々木代表取締役社長は若い頃、自閉症の子どもに対するボランティア活動を行った経験を持つほか、企業全体としての障害者に対する理解は深い。企業理念の中にも『生きる価値を高めよう!!~全員が参画する活性化された職場で、それぞれの能力を高め続けて』とあり、ノーマライゼーションの考えが根底に根付いている。
(2)障害者雇用の経緯
1993年に初めて知的障害のある人を雇用した際には、役員会や部課長会議等で様々な問題点を出し合い、改善策を検討、同時に社員に協力を求めた。特に安全面の問題については、非常に大きな問題であり、職域の開発と併せて、かなりの試行錯誤を繰り返したが、社員の協力も得て、当時雇用した知的障害のある社員は、現在も継続して元気に勤務している。
(3)障害者の労働条件及び業務内容
現在、正社員として肢体不自由のある社員3名及び知的障害のある社員1名、ファースン社員(パート社員)として知的障害のある社員1名を雇用している。
ファースン社員は、半年契約・時間給で継続的に労働契約を更新している。有期の契約ではあるものの継続的な雇用形態であり、正社員とほぼ労働条件は変わらず、少額ではあるが賞与も支給している。
業務内容について、肢体不自由のある社員は、営業、検査、設備メンテナンスを他の社員と同様に行っている。知的障害のある社員には、製品のラベル貼り等の出荷業務や、製品の仕上げ等の作業を任せている。


3. 取り組みの内容
(1)障害特性を鑑み個別に対応する
障害のある社員の苦手とするところを他の社員がフォローすることによって、彼らが働きやすい環境を創り出す。当社はこの姿勢を当初から一貫して通してきた。
ある知的障害のある社員は、季節の変わり目や作業の指示量が多いとパニックに陥り、自制を失ってしまう傾向があるため、社長をはじめ部門長や仲間の社員が、本人の話す内容や表情から、パニック状態に陥る兆候を予測し適切なフォローを行っている。
(2)障害者雇用助成金の活用
障害のある社員が働きやすい環境を作るため、彼らの当社での生活について彼ら自身とともに考え個別に対策を採っている。その際には、障害者雇用助成金の活用が有効である。
知的障害のある社員が出荷業務を行う際、簡単に操作できるラベルプリンタを導入することによって業務の効率を図ったほか、中途で受障した身体障害のある社員とともに検討し、トイレを和式から洋式に改善するにあたっては助成金を活用し、個別に働きやすい環境を作りだしてきた。
(3)学校、家庭、企業の三位一体での取り組み
当社は最初から、特に知的障害者の安定した雇用を図るためのノウハウを持っていなかったため、当初から養護学校の先生からアドバイスを得るほか、定期的なバックアップを依頼している。また、本人の表情や体調に異変が見られたときは、家庭との連絡を密にとり、知的障害に対する理解に努めてきた。
現在では、彼らから社長や職場の仲間に身近な悩みを打ち明けるなど、お互いの信頼関係が構築されている。
(4)知的障害者への指導で得たノウハウ
1)障害の有無にとらわれず、分け隔てなく受け入れる
障害に対し特別な目で見る社員が当初は存在したが、継続して教育を行うことにより、他の社員と分け隔てなく彼らと接する環境が社員間に芽生えた。障害のある社員は心理的な不安定を感じることなく、社員の一人として仕事をすることができる。
2)注意をする役割を担う社員を定める
佐々木社長は、採用当時から彼らに厳しく注意する役割を担っており、職場内での事柄のみならず本人にとって注意すべき事柄は、毅然とした態度で注意することを実践してきた。知的障害のある社員の中には、不特定の社員から注意を受けると疑心暗鬼に陥ってしまう傾向のある者もいるため、数名の社員が注意役を買って出ることにより、彼らの心理的負担の軽減を図った。
3)指示は個別に一つひとつ行う
知的障害のある社員は、朝礼等の集団に対する指示に対して内容の把握に時間がかかることがわかったため、個別に目と目を合わせながらゆっくりとわかるよう指示や注意を行った。また、一度に多くのことを指示すると、パニックになる傾向があることもわかったため、一つの作業が終わってから次の作業指示を行うようにした。
このような指示や注意の仕方により、彼らの業務の正確さや能率が目に見えて向上した。
(5)障害者の持つ能力を適切に評価すること
社員のAさんは記憶力が良く責任感が強いことから、作業をある程度一人で任せたところ、Aさんに積極的な業務意識が芽生えた。他の社員がミスをした時など「こんなミスをすると会社が潰れる」と言って、必死に他の社員のフォローに廻ることもある。


(6)新入社員からの教育
社員全員が平等に参画できるような活性化した職場を形成するため、新入社員研修から精力的に教育を行っている。新入社員研修では、先ず社長自らが新入社員の前に立ち、当社の理念について説明するとともに障害者差別・男女差別といった差別を無くすよう、国際障害者年の資料等を活用して説明を行っている。
4. さいごに~当社の方針~
(1)障害者雇用についての啓発活動
障害のある社員が業務に満足し、生き甲斐をもって働けるよう、特に知的障害のある社員に対し、職場環境に加え通勤環境においても、職場の仲間の一人として配慮を続けてきた結果、障害者の定着率が向上した。
地道ではあるが、障害の有無にかかわらず雇用する当社の取り組みに対し、各機関や業界団体から注目を受けている。
佐々木社長はハローワーク等からの依頼を受け、障害者雇用について「企業はどのように注意を払うことが必要か」といった内容を講演し、障害者雇用の啓発を積極的に行っている。
平成17年には厚生労働大臣表彰を受賞した。
(2)今後の方針
障害のある社員が働きやすい環境作りに常に取り組むことが、社員全員がより働きやすい企業になるという信念の下、今後も障害のある人を継続して雇用することこそ企業の責務であると考えている。
「私たちや、その子どもが何らかの状況により、いつ障害者になってしまうかも知れない。私たちが日頃から地道に障害に対する理解と、障害者を一人の人間として受け入れる姿勢を持つことが必要」と、当社の方針について佐々木社長は語る。
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