2006年度作成

事業所名 :

千代（せんだい）三洋工業株式会社（鳥取三洋電機株式会社の特例子会社）

所在地 :

鳥取県鳥取市

事業内容 :

LED（発光ダイオード）応用商品製造、電器製品の光検知センサーの生産

従業員数 :

110名

うち障害者数:

27名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	11	マシンオペレータ、電子部品外観検査、電子部品再生、部品準備
肢体不自由	11	データ入力、電子部品特性検査、間接的補助作業、準備作業、梱包
内部障害	2	マシンオペレータ、電子部品特性検査
知的障害	1	構内清掃、植栽（植木鉢）給水、予備的補助作業
精神障害	2	電子部品点灯検査、電子部品ロット印刷

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯と現況
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果、今後の展望

1. 事業所の概要

（1）設立経緯・事業内容

　働くことを希望する重度の障害者に、安定した雇用の場を提供することを目的に、鳥取県、鳥取市、鳥取三洋電機株式会社が共同出資する第三セクター方式の重度障害者多数雇用事業所として、1992年（平成4年）に設立、93年（平成5年）から操業を開始した。
　社名は、近くを流れる千代（せんだい）川にちなみ、千代（ちよ）に八千代（やちよ）に繁栄することを願って千代（せんだい）三洋工業と命名された。
　「ノーマライゼーションの理念の実践を通じ、地域社会に貢献したい」を経営理念に掲げて、コア技術力（ミクロン単位の微細加工）で、鳥取三洋電機株式会社の特例子会社として存在感のある事業所となっている。
　平成9年に親会社と同時にISO9001、14001を取得し、平成15年には海外工場を含めた三洋電機グループの大会で、電子部品の品質部門最優秀賞を受賞。レーザ部門は、DVDの価格下落に伴って加速度的に海外にシフトする中、今年2月、中国に生産拠点を移管することとなった。
　現在は、電子部品・デバイス製造業として、アミューズメント、携帯電話、車載用ランプ類、メッセージボード等に使用されるLED（発光ダイオード）応用商品を生産の柱に据え、光検知センサーの量産も軌道に乗せている。

（2）地域から必要とされる事業所に

　当社が対外的に行っている内容は以下のとおり。
①外部講演
②ゲストティーチャーの派遣
　要請を受けた学校等に出向き、自分の考え方や体験談等を話すことにより大きな自信となっている
③各種見学、訓練等の受け入れ（工場見学、障害者委託訓練、若年者対象委託訓練、職場体験学習、企業実習）
④アイドリングストップ運動への参画
⑤緑化運動の推進
　どんぐり活動：チャレンジド（障害のある従業員）が工場で植栽したどんぐりの一部を県緑化推進委員会へ寄贈し、緑化推進に役立てている
⑥各種委員会への参加（平成18年8月現委嘱中の公的委員会等：鳥取県立鳥取養護学校「評議員」、「鳥取県職業能力開発審議会」委員、「鳥取県障害福祉計画策定検討委員会」委員、鳥取県立倉吉高等技術専門校「総合実務科運営推進協議会」委員）
⑦独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構（当時）「雇用管理サポート事業」協力専門家

（3）親会社から必要とされる会社に

　当社の取り組みは以下のとおり。
①信頼される品質保持
②納期の厳守（生産計画の完遂）
③安全な職場
　14年間、休業災害はゼロである。
④コンプライアンスの遵守

2. 障害者雇用の経緯と現況

（1）経緯

　操業当初は、当社で「チャレンジド」と呼んでいる障害者15名を含む従業員40名が、初めての経験である発光ダイオード素子の生産に奔走、チャレンジドと健常者が一体となって協力し、スタート商品の立ち上げに成功したことにより、今日の社風を形成する土壌ができあがった。
　第三セクターとして全国で18番目に設立した当社は、平成6年5月に天皇・皇后両陛下行幸の折、ご視察の機会を得て一躍全国に社名を知られ、以降毎年1千人を超える各界各層からの見学を受け入れている。
　その後、半導体レーザの生産事業を当社の主力事業として導入するにあたって、設備増強により増産を図るとともに、社員も増加し、平成12年には従業員数100人を超える県内有数の中小企業の一つに数えられるようになった。
　これと並行してチャレンジドの採用も増え、当社設立時の目標25名を雇用し、名実ともに全国に誇れる重度障害者多数雇用事業所へと成長していった。
　平成15年に三洋電機グループの大会における電子部品の品質部門最優秀賞を受賞したことで、ものづくりの世界で障害は関係ないとの評価を対外的に受けることができ、大きな自信となった。

（2）現在の状況

　平成18年8月現在、全従業員110名のうち27名（うち重度18名）のチャレンジドを雇用、国際競争の激化の中雇用の維持に努め、障害者雇用率は常に40%台を保っている。彼らの職場定着率については、74%が8年以上勤務している。
　障害者のメンバーをチャレンジドと呼んでいることについて、「人間は生まれながらに自分の課題に向き合う力が、必ず備わっている」個々の力を最大限引き出し、社会にとって企業にとって必要とされる存在に成長させたい そのために 挑戦＝チャレンジしていこうとの考え方にもとづいている。
　優秀勤労障害者については、厚生労働大臣表彰受賞者1名、鳥取県知事表彰受賞者1名、鳥取県高齢・障害者雇用促進協会会長表彰受賞者4名であり、また平成18年は前年に続いてアビリンピック鳥取県代表者を輩出、さらには障害者雇用優良事業所として鳥取県知事表彰を受賞した。

3. 取り組みの内容

（1）チャレンジドに配慮した環境

①駐車場
　車いす使用者6名について、駐車場から障害物なしで工場内へ出入できるよう専用駐車場を設けた。
②ユニバーサルデザインの自動販売機

③トイレ及び洗面
　手すりを設けスペースを拡張したトイレを4ヶ所、また手すりや自動水洗、鏡の傾斜といった配慮の洗面を設置した。

④天井・工場敷地
　圧迫感を感じさせないよう天井を高く設計した。
⑤工場敷地
　緑を多く配置した。

⑥手話通訳が可能な従業員の配置
⑦聴覚障害に対する避難誘導用パトライトの設置

⑧挨拶運動、5S活動の推進
　ものづくりの基本は5S（整理、整頓、清潔、清掃、躾）と挨拶との考えで、毎朝二人が玄関に立ち。従業員同士元気よく挨拶を交わしている

（2）能力開発

①社内メール活用による情報の一元化
　全員パソコンを使用できるよう指導

②職業訓練リハビリセンターへの宿泊研修
　チャレンジドもメーカーの宿泊研修に派遣し、スキル向上を図る。

③多能工への取り組み
　個々の職域を広げるため、他工程の習得により、より多くの工程のマスターを図る

④自己啓発
⑤資格取得の推進
⑥アビリンピック（障害者技能競技大会）への参加

（3）職場定着の取り組み

①障害者職業生活相談員
　同相談員認定講習を6名が受講し資格を取得した。
②職業コンサルタント
　2名を配置している。
③第2号職場適応援助者（ジョブコーチ）
　同援助者養成研修を2名が受講し資格を取得した。
④手話通訳が可能な従業員の更なる育成
　朝礼、夕礼、学習会等の機会に活躍する、手話通訳が可能な従業員9名に加えて、現在4名の従業員が公共機関主催の講習会に参加し、6ヶ月間受講している。

⑥交換ノートの活用
　チャレンジドとのコミュニケーション手段として実施するほか、生活指導のためのツールとして活用している。
⑦健康相談医師の配置

4. 取り組みの効果、今後の展望

（1）効果

　以上の取り組みにより、次のような効果が現れた。
①職場定着率の向上
②職場内での自立心の増長
　チャレンジドと健常者が同じ職場環境のもと自然体で作業を行う気風が増した
③チャレンジドの有資格者の増加
　ビジネス実務検定あるいは秘書検定に延べ11名が合格している。
④向上心の増大

（2）展望

　経済環境の変動に素早く対応できる事業所を構築するためには、障害の有無にかかわらず、自己啓発をベースに多能工として仕事の枠をさらに広げ、個人個人が存在感の示せる強固なものづくり集団を築いていく意向である。
　コストや品質面での厳しい国際競争に打ち勝ち、同業他社に負けず、真心のこもった良い仕事ができるよう全員が協力し合い、助け合い、相手を思いやれる人間性豊かなマザー工場として、生き残りを目指していく。

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