2006年度作成

事業所名 :

医療法人豊医会

所在地 :

岡山県美作市

事業内容 :

診療所、介護老人保健施設、通所介護施設、居宅介護支援事業所の運営

従業員数 :

98名

うち障害者数:

13名

障害	人数	従事業務
視覚障害	13	あんま・マッサージ・指圧師
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の方針と勤務状況
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果等
5. さいごに

1. 事業所の概要

　当法人は、原医院（診療所・平成5年開院）、美作リハビリテーションホーム（介護老人保健施設・平成10年開設）、居宅介護支援事業所さら（平成10年開所）、通所介護こまち（デイサービス・平成16年開所）を運営しており、地元・周辺地域において、それぞれの事情や要望に適した形の医療・介護・福祉の組み合わせを提供し、よりスムーズな連携に努めながら利用者の立場に立った心ある、地域密着型の施設を目指している。

事業内容
　原　医院（診療所19床）
　　診療科目：外科・内科・整形外科・リハビリテーション科
　美作リハビリテーションホーム（介護老人保健施設）
　施設入所サービス：定員56名
　短期入所療養介護
　通所リハビリテーション
　居宅介護支援事業所　さら（居宅介護支援）
　通所介護　こまち（デイサービスセンター）

2. 障害者雇用の方針と勤務状況

（1）方針

　IT技術の進展などに伴い、職場におけるストレスや身体的な疲労を訴える人が増加している。その反面、当地域にはこれらに対応する施設が少なく、視覚障害者が持っている資格を活かすことによって、地域のニーズに応えようとする当法人の原太久茂理事長の方針は、「ハード面の改善すべき所は改善するが、障害者だからといって特別扱いは一切しないし、待遇面等についても他の職員と同等に扱う」ことである。また、障害のあるスタッフに対し、「健常者と同じように他から接することを望むのであれば、自分たちも障害者だからと主張しすぎてはいけない」「何も悪いことではないのだから引け目を感じることもない」と話している。

（2）勤務状況

　障害のあるスタッフ全員が、あんまマッサージ指圧師の免許を持っており、機能訓練室で勤務する。はり師、きゅう師の免許を持ったスタッフもいる。
　ずらりと並んだベッドで次々に訪れる患者のマッサージを行う。先ず、患者が持参する治療指示書を確認する。文字はマジックインキで大きく書かれており、ルーペで読む。全盲のスタッフには口頭で伝える。
　20分間のマッサージが始まるが、かなりの重労働。休憩もなく次々と入室する患者一人一人に対してこまめに話しかけ対応する。患者はマッサージの技術と併せて会話の細やかさも求めてくる。医院には早朝から多くの患者が押し掛けるが、ほとんどの患者が「看板事業」であるマッサージ治療を受ける。

3. 取り組みの内容

①センサーライトの設置
　障害のあるスタッフの大半は暗い場所では見えにくいため、日が暮れてからの帰宅に配慮し、職員用通路にセンサーライトを設置している。

②盲導犬“ビクトリー”の居場所の工夫
　スタッフの小澤恵美子さんは、盲導犬“ビクトリー”と出勤する。彼女が勤務する際の“ビクトリー”居場所として、室内を、との小澤さんから希望も受け、当初は宿直室を提供したが、室内が抜け毛だらけとなるほか、知らないスタッフが部屋を空けると飛び出すといったことが発生した。アニマルセラピーも兼ねてスタッフの託児所を次の候補としたが、子供たちが従順な“ビクトリー”に慣れる反面、同じように他の犬に接することを危惧し、最終的には“ビクトリー”を訓練した日本ライトハウスの訓練士から実地検分を受け、倉庫を住居とし現在に至る。今後補助犬を伴っての就労形態の増加が予想され、障害者雇用助成金の活用についても検討する必要がある。

③院内移動への配慮
　障害のあるスタッフのほとんどは「見えている」と思うほどスムースに院内を移動しているが、移動の妨げや混乱を防ぐため、通路には物を置かず、また連絡なしに物を移動することはできるだけ行わないよう気を配っている。

④日常生活の支援
　機能訓練室で勤務する50代の女性職員が、障害のあるスタッフに対する教育係的な存在で、職場内のみならず日常生活面の支援も行っている。

⑤住居、通勤への支援
　障害のあるスタッフ全員が、当法人と距離のある岡山盲学校の卒業生とあって、雇用の際には住居の確保が必要となった。事故が生じた場合に、即座に対応してもらえることを考慮し、医院の近くの知人に協力依頼するなどにより確保した。
　また、通勤の開始にあたっては、スタッフが同伴し周囲の状況を説明しながら通勤訓練を行った。

4. 取り組みの効果等

（1）職員関係の改善

　小山事務主任は、「彼女たちを雇用した当初は、他科のスタッフとの溝が感じられたが、最近はまったく感じなくなった」と話す。今年度当初に行ったバーベキュー大会でも「彼女たちは以前は完全に「お客さん」の様子だったが、今回は各人が自分のできることをして」おり、彼女たちと周囲のスタッフが努力しあった結果、お互いの距離がなくなってきたと考えている。

（2）地域のはたらきかけ

　医院前の歩道には部分的に点字タイルが、また横断歩道には音声信号も設置されている。スタッフで障害のある石井裕美さんが参加している地域のボランティアグループ「みちしるべの会」が関係当局と交渉し実現した。地域が、障害のあるスタッフに対する配慮としてバリアフリー化を促している。

5. さいごに

（1）障害のあるスタッフの夢

　障害のない人からは、先ずあいさつや声かけをしてほしいと言われるが、目の前に人がいることはわかっても、誰かはわからないことが多く対応に困る、また、マッサージの時「これでいいですか」と聞くとうなずくだけの返答にも困ると言う。聴覚による情報を出してもらうことが一番の希望である。
　なお、多くの若いスタッフが、将来独立して開業したいという夢を持っている。実際に夢を現実とした先輩も多い。開業しても患者が固定するまで経営が大変と言う現実はあるが、彼女たちは次のステップとして、開業を目指し頑張っている。

（2）課題　～盲導犬の確保～

　医院で勤務する視覚障害のあるスタッフの勤務ぶりに、彼女たちスタッフ一人一人が三療という長い歴史に裏付けられた専門家としての自覚がうかがわれる。
　なお、盲導犬は現在、岡山県では年間2頭の割り当てとなっている。原医院でも盲導犬の利用を希望するスタッフはいるが、直ちに利用することは難しい。盲導犬の養成は日本はまだ遅れている。盲導犬を伴っての通勤については、今後は就労支援からのアプローチも必要とされている。

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