作業と生活環境の両面から障害者の定着率向上を図る
～障害特性に応じた職場配置と寮の設置～
1. 事業所の沿革
昭和41年に「中本製函所」として創業した当社は、製材工場新築による木箱の仕組み板製造や化粧箱部門を開設してきた。昭和58年に株式会社化し現在の名称となった以降も、不動産部門の開設や、酒用木箱がレンタルP箱に急激に転換されたため、洗瓶事業を開始、またラーメン店を開設と、事業の拡大を図り、他の同業者とも合併した。
平成18年には別の同業者から営業権譲渡を受け、門司に九州営業所を開設した。
2. 障害者雇用の経緯
当社の障害者雇用は、昭和43年の知的障害者雇用に始まり、その後、知的障害者支援施設「西志和農園」から3人を送迎通勤の形で雇用、昭和47年に寮を新築し、知的障害者が4人入寮した。
平成5年に、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の活用により、洗瓶工場を新築するとともに、最新鋭の洗瓶、洗函ラインを設置し、日産3万本の洗浄が可能となった。
なお、平成17年に他の同業者と合併の際、新たに障害者4人を雇用した。
3. 取り組みの内容
（1）作業内容の設定
知的障害者が安心し、安定して働ける作業現場として、作業内容を以下のとおり分類し、指導員を兼ねた社員が、個々人の能力に応じた職場配置に加えて、職務内容の習熟を図るため、随時ローテーションの中で各種作業を学べる環境づくりに取り組んでいる。
1）単純作業
①回収瓶の仕分け
②積み込み、荷造り
③P箱ラベル剥がし
④ラインへの瓶降ろし
⑤箱入れ作業
⑥木箱製造（仕組板入れ）等
2）半熟練作業：得意先により、パレットの大きさ、積み上げ数が異なるため、多少の熟練が必要
①単純除去品抜き取り（第一次検査）
②洗浄後の要再処理品の除去
③ビン、箱を洗った商品の荷造り
3）熟練作業（検ビン作業）
①目視検査(本検査は主として障害のない社員が担当）
②最終検査（障害のない社員が担当）
（2）職場配置
単純作業及び半熟練作業に関しては、全て知的障害者を配置し、工場長の指示のもと作業を進めているが、彼らの中には、本検査においても障害のない社員にも劣らない能力を発揮する社員もおり熟練作業を任せている。なお、適宜必要な場面では工場長が作業を行う。
（3）福利厚生
40年にわたる障害者雇用の歴史の中、当社が一貫して取り組んできたことは、彼らに対する福利厚生として、社員が彼らと家族同様に生活し、また自宅通勤の社員を含め心の交流を深めてきた。
また地域との関わりとして、秋祭りには御興しを担ぎ近隣を回り、太鼓を叩き神社に参拝し、餅撒きに参加した後で酒を酌み交わし語り合うほか、町民運動会では社員専用のテントを用意して職域対抗戦の種目に参加することで地域交流の一端を担ってきた。
数年前までは毎年慰安旅行を行っていたが、引率などが困難な状況もあり、現在は、花火大会の際にはホテルの一室を借り切ったり、新年会を恒例行事として行っている。その他、ソフトボール大会、プロ野球観戦など、障害者の希望を聞きながら行っている。
（4）寮の設置
緑豊な田園地帯の中に設置されている当社の敷地内には、本社事務所、洗瓶工場、製箱工場、製品置場と併せて障害者寮を設けており、自宅からの通勤が困難な障害者でも勤務できる環境を創っている。
昭和47年に設置した寮については、昭和62年に障害者特別雇用管理助成金の活用により、二階建て鉄筋コンクリートの寮を建設した。現在は8人が利用している。
なお障害者については、まかない付きとしており、寮の隣に大型プラズマテレビ、カラオケ設備がある会食部屋を設けている。
4. 今後の課題（目標）
家庭的な環境での雇用に取り組む当社の定着率については、37～40年勤続する社員もいるが、退職後の生活環境が整備されていないのが現状である。
老人ホームは彼らの利用に慎重であることに加え、順番待ちの状況。一方、彼らと共に生活する意向の親類縁者は非常に少なく、障害者の終身福祉について行政に対し一層の配慮を望んでいる。
彼らが一つの家族のような形で過ごしてきた環境において、仲間と余生を過ごすことができることが障害者雇用の終着駅と考えている。障害者専用の老人ホームを建設することが、当社の今後の大きな課題であり目標である。
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